書評、その他
Future Watch 書評、その他
くすぶれ!モテない系 能町みね子
世の中の女子を「モテ系」「モテない系」「圏外ちゃん」に3分類し、その中で圧倒的に多いとする「モテない系」について考察するという内容。独断と主観による記述に終始しているものの、良し悪しとか価値観という意味では公平さを貫いているように思えるし、記述の本意がカテゴライズできないものをカテゴライズしたいという情熱だということが伝わってくるので、嫌味に感じられないのが面白い。自分がその3つのカテゴリーのどこに所属するかは本人の選択による部分が多いという根本的なところもそう感じる理由の1つかもしれない。1つの言葉で大きな社会の特徴を言い表す新語が次々に生まれるような風潮があるが、混沌としたものを混沌としたまま描写する著者の文章に今回も圧倒された。(「くすぶれ!モテない系」 能町みね子、文春文庫)
都合により、記事の更新を1週間ほどお休みします。
都合により、記事の更新を1週間ほどお休みします。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
横浜1963 伊東潤
敗戦から20年弱後の横浜を舞台に日本人警察官と日系アメリカ人SPの2人が猟奇的な殺人事件の真相を追うミステリー小説。当時の横浜の独特の雰囲気、街並み、人々の生活、日米関係などが細かく描写されていて、自分が小学生だった時に記憶している社会の雰囲気が何となく思い出された。アメリカに遠慮してアメリカ人の容疑者を取り調べしようとしない日本の警察上層部、仲間を守ろうとして非協力的な在日米軍の幹部という2つの大きな障害を乗り越えて正義を貫こうとする主人公たちの活躍が心に響いた。(「横浜1963」 伊東潤、文春文庫)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
そして誰もいなくなる 今邑彩
アガサクリスティの名作のオマージュ作品。見立て殺人の更に見立て殺人というとにかく複雑な設定だが、物語の後半の幾重にも折り重なったような複雑さはこれまでに読んだミステリーの中でもピカイチだ。次から次へとひっくり返される犯人像に翻弄されるが、それでいて納得できる着地点が次から次へと提示されるのが、ミステリーファンにはたまらない。誰が何の罪で裁かれなければいけないのか、そもそもその誰かはどのような形で裁かれるべきなのか、更にその裁きは正当なのかといった具合に、色々な疑問が提示されていて、しかもそれが話の意外性の根本を形成しているという驚きの構成。犯人の意外性とか手口の意外性といったもの以外にもミステリーにはこうした意外性というのがあるんだと気付かされた。(「そして誰もいなくなる」 今邑彩、中公文庫)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
禁煙小説 垣谷美雨
ヘビースモーカーの会社勤めの女性が長年の課題だった禁煙に挑む物語。困難を増す喫煙者の日常、禁煙外来での挫折、自分なりの禁煙方法の模索などが順番に描かれていて、まさに「喫煙者あるある」「禁煙あるある」のオンパレード、作者の実体験としか思えないほどの臨場感だ。自分にも似たような経験があるので身につまされる思いで読み終えた。(「禁煙小説」 垣谷美雨、双葉文庫)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
アルファベットパズラー 大山誠一郎
アルファベットのつく題名のミステリー4編が収納された中短編集。著者の本はこれで3冊目だが、いずれも期待を裏切らない面白さ。かなりご都合主義的な部分もあるが、それが欠点になっていないところがすごい。最後の中編はまさに驚きの連続だが、この作品を読んでしまうと、この作品が名作であり続けるためには続編を期待してはいけないような気分になってしまう。それでもやはり続編を期待したいという複雑な心境だ。(「アルファベットパズラー」 大山誠一郎、創元推理文庫)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
講談 神田松鯉一門会
神田松鯉一門の講談。会場はいつもに比べて女性の客が多く、多分半分以上が女性客だった。開口一番を含むと6席、たっぷりと講談を満喫した。これだけ講談をまとまって聞いたのは初めてだが、それぞれ持ち味が違っていて飽きることはなかった。
①開口一番 神田松麻呂 寛永宮本武蔵伝 玄達と宮内
②神田鯉栄 清水次郎長伝 羽黒の勘六
③神田阿久鯉 天明白浪伝 徳次郎の生い立ち
④神田鯉風 赤穂義士伝 神崎与五郎詫び証文
⑤神田松之氶 鮫講釈
⑥神田松鯉 天保六花撰 松江候玄関先
①開口一番 神田松麻呂 寛永宮本武蔵伝 玄達と宮内
②神田鯉栄 清水次郎長伝 羽黒の勘六
③神田阿久鯉 天明白浪伝 徳次郎の生い立ち
④神田鯉風 赤穂義士伝 神崎与五郎詫び証文
⑤神田松之氶 鮫講釈
⑥神田松鯉 天保六花撰 松江候玄関先
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
殺人は女の仕事 小泉喜美子
復刻版で読めるようになった作者の短編集の1つ。前に読んだ作品同様、本作も本格ミステリーブーム前のものだがどの短編も古さを感じさせない強い魅力を持った作品だ。古さを感じさせないのは流行や時事的な話をほとんど取り入れていないのが第1の理由だろうが、前作の時にも感じたことだが、それだけではなくて自分に合った語り口とか作者のオリジナリティいう要素も大きな理由だと思う。登場人物の人生観とか結婚観とかがどことなく古くて、それを逆手に取ったどんでん返しが逆に今を感じさせることさえある。作者がそこまで意識して書いていたとすればそれはすごいことだ。(「殺人は女の仕事」 小泉喜美子、光文社文庫)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
落語 桂米団治独演会
上方落語ということで聴きに行った。前売り完売とのこと。ファンの多い噺家らしい。会場はいつものように高齢者が圧倒的に多い。最近古典落語に少し飽きてきたところだったが、今日は落語の別の面白さを見たような気がして楽しかった。特に4番目の「蛸芝居」は、こういう落語もあるんだなというほど、自分には斬新だった。
なお、今日は途中で急に咳が止まらなくなりとりあえず慌てて退席してロビーで座っていたら、座の責任者のような方が心配して声をかけてくださりとてもありがたかった。
①桂米輝 ちはやふる
②桂米団治 京の茶漬け
③桂いちば 笠碁
④桂米団治 蛸芝居
⑤桂米団治 質屋蔵
なお、今日は途中で急に咳が止まらなくなりとりあえず慌てて退席してロビーで座っていたら、座の責任者のような方が心配して声をかけてくださりとてもありがたかった。
①桂米輝 ちはやふる
②桂米団治 京の茶漬け
③桂いちば 笠碁
④桂米団治 蛸芝居
⑤桂米団治 質屋蔵
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
化学探偵Mr.キュリー8 喜多喜久
シリーズの第8作目。これまで同様、大学の事務職員の女性と理学部の教授のコンビが大学校内で起きるさまざまな事件や揉め事を探偵のような推理力とフットワーク軽い実行力で解決していくという内容。本作では、女性主人公の「どんなことでも相談に乗る」という姿勢から、「理学部の彼氏が実験が多くてかまってくれない」といった恋愛相談まで解決してしまうし、専門知識の範囲も化学だけでなく理科系全般に広がりを見せている気がする。本シリーズが8作目なのにあまりマンネリ感を感じないのは物語の範囲をどんどん広げていき、今度は何かなと思わせるからだと思う。(「化学探偵Mr.キュリー8」 喜多喜久、中公文庫)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
ことのはロジック 皆藤黒助
全く知らない作家だが、書評を読んで面白そうだったので読んでみた。書道部に入部した高校生の主人公が、日本語の知識を活用して部活動の中のちょっとした謎を解明していくという内容のいわゆるライトノベルだが、謎そのものや謎解明の結果がかなり意表を突いているものばかりで面白かった。特に2つ目の作品に出てくる「幽霊漢字」というのは初めて知った。世の中にはまだまだ自分の知らないすごい作家がいるんだなぁと思った。(「ことのはロジック」 皆藤黒助、講談社タイガ文庫)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )