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展覧会 ギュスターヴ・モロー展

自分にとってモローは大昔に高階秀爾の本でその凄さを知り、パリに行くと必ず彼の美術館に立ち寄るお気に入りの画家。その展覧会ということで期待して足を運んだが、今ひとつピンとこなかった。やはりそれは今回の展示の内容に問題があったということではなく、モロー美術館で見た壁全面を覆いつくすような作品の数々、一枚一枚自分の手でめくるようにしてみることができる膨大なデッサン、階段を上り詰めた時に眼前に見えてくる疾走する馬の絵など、美術館での強烈な体験と比べてしまい、どうしても質量展示方法などで見劣りしてしまうからだろう。モローの絵はあのやや薄暗い部屋一面に飾られた状況で見るのが一番良いということだ。

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現代落語の基礎知識 広瀬和生

最近落語を聴く機会が何度かあり、落語家が出てくる時の音楽が落語家によって違っていてそれを「出囃子」ということを初めて知った。聞いた落語が結構面白かったので、この夏は色々な落語家の話を聞いてみることにした。ついては、少しでもその辺りの常識を得ておこうと思って本書を読んだ。本寸法という言葉の意味、オチとサゲの違いなど、いくつか基本知識が得られたし、近年の落語事情にも少し明るくなった気がする。これから落語を聞きに行った時、今までと違う聞き方ができるかどうかが楽しみだ。(「現代落語の基礎知識」 広瀬和生、集英社)

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ホケツ! 小野寺史宜

著者の本はこれで2冊目だがいずれも本当に心に残る作品だった。本書は、弱小高校サッカー部に在籍、まだ一度も公式試合に出たことがないという補欠選手だが、それでいて落ちこぼれとかやる気がないとかでもない高校3年生が主人公。主人公の部員や家族への眼差しが暖かく、輝くような魅力を放つ。まだ著者の本は2冊しか読んでいないが、その語り口と登場人物の魅力は心を引きつけて話さない。掛け値なくこれから何冊も何冊も読んでいきたいと思った。(「ホケツ!」 小野寺史宜、祥伝社文庫)

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展覧会 クリムト展

クリムトの修行時代から晩年までを網羅した充実した内容の展覧会。修行時代から抜きん出た画力と色彩センスを併せ持っていたことが良く分かった。装飾性における日本美術の影響、晩年の印象派への接近など、画家が多様な側面を持っていたことも分かった。

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音楽会 ZAZ

エディット・ピアフの再来とも言われる彼女のストリートやパブで鍛えた歌声、前かがみになり足を前に投げ出す独特のパフォーマンスを満喫した2時間。結局席に座っていたのはスローバラードを歌っていた10分くらいだけだった気がする。自分の知っている彼女の曲は3曲くらいだが全部聞けたし、良い運動になったので大満足だった。

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大哺乳類展2

老若男女誰もが楽しめる企画展。鹿と牛の角の違いとか、トナカイはオスメスともツノがあるとか、とにかく色々な動物関連の知識が楽しく学べる。瀬戸康史の音声ガイドもクイズがあったりで秀逸。

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怒る技術 中島義道

自分の怒りを内に閉じ込め、もっぱら世間に同調した社会的義憤のみを表明し、怒りの本質を冷静に考えようとしない現代の風潮の不毛さを説く本書。その対極にあるのが著者の怒りに関する数々のエピソードだが、不愉快に思われることを恐れない態度には、ひたすら良い子を演じる息苦しさから解放されたものの清々しさを感じざるを得ない。著者のような生き方を選択することは困難を伴うが、怒りを素直に表現して相手と対峙することの効用があることは理解できる。(「怒る技術」 中島義道、角川文庫)

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死者の輪舞 泡坂妻夫

著者のこれまでに読んだことのないシリーズ作品が2冊復刻されたので早速そのうちの一冊を読むことにした。推理力はすごいが怠け者のベテラン刑事と熱血漢の新米刑事というベタなコンビが奇妙な連続殺人に挑む。ベテラン刑事の名推理は悉く当たり、すぐに容疑者が特定されるのだがその容疑者が確保される前に殺されてしまう。更に第2の殺人の犯人を特定するとまたその犯人が死体で発見される。容疑者が次から次へと殺されてしまうという迷宮のような事件だが、最後には著者らしいアクロバティックな真相で納得の結末。このシリーズは第2作まで書かれたということなので、もう一冊読めるのが嬉しい。(「死者の輪舞」 泡坂妻夫、河出書房文庫)

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プロ野球死亡遊戯 中溝康隆

モンスターブロガーと呼ばれる著者による野球愛満載のエッセイ集。読んでいて、野球に対する情熱とか思い入れよりも文章の面白さに惹かれる。これは、野球ファンには色々な人がいるということを前提に熱量をあえて控えめにしていることもあるだろうし、こういうのをネット時代の新しい文体と言うんだろうなぁと思わせるからでもあるだろう。内容は巨人軍の選手のことが中心だが、野球をほとんど観戦せず巨人軍の現役選手の名前を菅野というピッチャーが活躍しているらしいくらいしか知らない自分にとっては、やはりそれ以外の昔のスーパーヒーローに想いを馳せた文章が心に響く。思い起こせば、とにかく巨人が好きだった大学生まで、当時は経営学のゼミの合宿で勉強そっちのけでTVで巨人戦を見て王選手のホームランに熱狂した。社会人になってTVを見なくなっても家族に「巨人が負けると機嫌が悪い」と言われたことも。その後アメリカに仕事で赴任して野球よりも大リーグやアイスホッケーが好きになり、帰国後は巨人が負けても何とも思わなくなっていた。そう言えばプロ野球のTV中継がずいぶん減った気がする。本書を読んで、昔の熱中時代が妙に懐かしくなった。(「プロ野球死亡遊戯」 中溝康隆、文春文庫)

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にゃんくるないさー 北尾トロ

著者自身のこれまでの30年近い猫との交流を綴ったエッセイ集。独立するまで猫と縁が全くなかった著者がふとしたきっかけで一匹の猫と出会い、それから不思議な縁で様々な猫との出会いと別れを経験する。猫に導かれてというとやや大げさだが、著者の人生、猫との出会いがなければ全く違ったものになっていただろうと思わせる内容。気まぐれにしか見えない猫の行動から何を読み取るか、猫の飼い主としてこの本はとても参考になる。(「にゃんくるないさー」 北尾トロ、文春文庫)

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展覧会 ウイリアム・モリスと英国の壁紙展

18世紀から20世紀にかけての英国を中心とした装飾用壁紙の歴史を辿る展覧会。展示会場で並べられた順番に観ていったが、特に時代時代毎の特徴だとか大きな流行の移り変わりのようなものは感じられず、もしかしたら初期の頃のものは当時の流行の最先端だったものが時代を経ても懐古趣味として綿々と受け継がれていったということなのだろうと感じた。なお、何気なく作品を見ていたら途中で展示された作品の制作過程が分かるような版木が展示されていて、それらが版画だったことを知りちょっとビックリした。絵画的には、当時の欧米の東洋趣味・日本趣味を示す作品や生物デザインと幾何学模様の融合の基盤になったような作品がいくつもあり、印象派やアールヌーボーへの繋がりを確認できた気がする。

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ジグソーパズル48 乾くるみ

女子高生の日常の謎という触れ込みだが、実はトリッキーな作品で知られる著者による奇作快作オンパレードの一冊。特に最初と最後の短編には度肝を抜かれた。最初の一編は死体ゴロゴロの頭脳ゲームで、まるで「ロジックに流れについて来られるか」という読者への挑戦状。必死でついていくが、途中で著者にもて遊ばれている気がしてきた。最後の一編はキラキラネームが次から次へと登場し、戸惑っているうちに読者として最も基本的かつ肝心なことを確認するのを怠ってしまった。自分だけかも知れないが、この作品、キラキラネームの特性を使った史上初のトリックかも。久しぶりに読者に2度読みさせる著者の技にまんまとはまってしまった。(「ジグソーパズル48」 乾くるみ、双葉社)

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ほじくりストリートビュー 能町みね子

行き止まり、坂道、クネクネ道が好きという著者が地図で気になったところに実際に出かけて行ってみてレポートするという内容のエッセイ。どんな目的で作られたのか、なぜそのような形になっているのか理解しがたい道、どう見ても不要な道などに行って、そこにある景色、人通りの様子、案内板や看板の有無など。資料をあたって作られた歴史を調べたり近所でヒヤリングをしたりではなく、あくまで著者が見たままのレポート。これまでの著者の本の感想でも述べてきたことだが、本書でも際立つのは著者の感性と文章の独特さで、とにかく著者の本ならば絶対に面白いだろうという気にさせる一冊。(「ほじくりストリートビュー」 能町みね子、交通新聞社)

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やっぱりいらない東京オリンピック 小笠原博毅

判で押したような「オリンピックまであと◯日」「オリンピックまでに◯◯したい」という報道や表現、どんどん膨れ上がる開催費用、ブラックなボランティア募集などにうんざりしていたら、挙げ句の果ての賄賂疑惑によるJOC会長の辞任、やっぱりなぁという感じだ。本書で、オリンピックに少し懐疑的な発言をした元アスリートが受けている仕打ち、昨今のスポーツ界での暴力的指導やいじめといった諸問題の根源が1964年の東京オリンピックにあったという説明を読むと、インタビューで「オリンピックを目標に頑張る」と答えるスポーツ選手が可哀想になる。この機会に「鬼の大松」が賛美されたことに象徴されるスポーツ界の諸問題が良い方向に向かえばと思うが、それも「オリンピックありき」の意見に過ぎないと気付かされる。(「やっぱりいらない東京オリンピック」 小笠原博毅、岩波書店)

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映画 きばいやんせ! 私

とても良い映画だった。アルハンブラの思い出にのせて流れる祭りの映像が圧巻。主演の2人の演技も良かったし、カメラワークも良かった。心に残る作品だった。

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