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花がないのに花見かな 東海林さだお

「丸かじり」シリーズとは違うエッセイ集。「桜がまだ咲いていない時期のお花見はとバス体験」「中国人向け温泉観光バスツアー体験」「老舗旅館での自炊宿泊」「探偵社社長との対談」など、著者独特の感性で、色々な気になることを体験したり人から話を聞いたりしたという内容のエッセイが収録されている。特に探偵社社長との対談は、へぇそうなんだということばかりでものすごく面白かった。(「花がないのに花見かな」  東海林さだお、文春文庫)

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古城ゲーム ウルズラ・ボツナンスキ

日本の「本格ミステリー派」を想起させる題名で、表紙裏の解説を読むと「オーストリアの人里離れた古城を舞台に、外部との連絡を絶たれた集団に襲いかかる連続殺人事件」とのこと。まさにの外国版「本格ミステリー」だ。読んでみると、それは良い意味で裏切られた。本書のストーリーは、本格派というよりも、ロールプレイングゲームの実写版に近い。登場人物も、現実世界とファンタジー世界のどちらにいるのか迷いながら行動しているし、事件そのものもそれが現実なのかトリックなのか最後まで判然としないままだ。最後の結末はなるほどということで納得。なかなか面白い体験をさせてくれる一冊だった。(「古城ゲーム」 ウルズラ・ボツナンスキ、創元推理文庫)

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人影花 今邑彩

著者の本は4冊目。初めての短編集だ。内容は、ミステリー色の強いものからホラー色の強いもの、長めの短編からショートショートまで様々だが、どれもしっかりと最後にどんでん返しが用意されていて面白い。著者の死後、次々と昔の作品が復刻されているようで、短編集だけでもあと5〜6冊、長編も同じくらい読むことができるようだ。とりあえずは短編集から読み進めていこうかと思った。(「人影花」 今邑彩、中公文庫)

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はなしがちがう 田中啓文

上方落語の世界を扱ったお仕事ミステリー。業界の裏話、主人公の成長、軽めのミステリーをお仕事ミステリーの三大要素とすると、本書は、それに古典落語のあらすじや物語の背景を絡ませるという凝ったつくりになっている。ミステリーの要素もバラエティに富んでいて一つ一つが結構面白い。もし続編があるならば、是非主人公が二段目、真打ちと成長していく話を読んでみたい。(「はなしがちがう」 田中啓文、集英社文庫)

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歴史と戦争 半藤一利

著者の幕末から戦後までに関する多くの著作からそのエッセンスを収録した一冊。読んで驚いたのは、本書で語られている歴史観と自分の歴史観に驚くほど齟齬がないということだ。特に驚くような内容もなければ新しい発見もない。読んでいて退屈というほどではないが、何だか常識的すぎて面白みに欠けるような感じだったのだが、要は自分の歴史観とは、著者のような人々によって教え込まれたものということなのではないかと気付いた。そうは言っても、新しい発見がなかったわけではない。本書によれば、「一億総懺悔」という言葉は東久邇宮首相の談話の中の表現だったという。しかもこの談話に対して当時、特段「責任転嫁」という批判もなかったという。これには心底驚かされた。また、開戦に踏み切った為政者の目論見が「ドイツの勝利」と「そのおこぼれを頂戴する」というものだったという指摘にも、そういうことだったのかと、目から鱗だった。(「歴史と戦争」 半藤一利、幻冬舎新書)

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錆びた滑車 若竹七海

今人気沸騰の著者の葉村晶シリーズ最新刊。文庫書き下ろしという貴重な一冊だ。これまでの経験では、著者の作品は、登場人物が比較的多くて、しかも思わぬところに謎を解く鍵が潜んでいたりするので、他の作家の作品よりも注意して読まなければいけないことが多かった。本書も、まさに、そうした特色そのものの著者ならではの一冊だ。主人公「葉村晶」のニックネームは「最も不運な探偵」。初期の作品を読んでいて、そんなに不運ではないと感じたが、本書では満身創痍で、ニックネームに恥じない不運ぶりを発揮している。その辺りに著者のサービス精神を感じた。(「錆びた滑車」  若竹七海、文春文庫)

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絵はがきにされた少年 藤原章生

新聞社の特派員である著者がアフリカ滞在中の出来事を取材しながら考えたことを綴ったエッセイ集。最初の一編は「ハゲタカと少女」の写真でピューリツァー賞を受賞したカメラマンの自殺の真相をカメラマンの友人にインタビューした衝撃的な内容だ。また、題名になっている「絵はがきにされた少年」は題名から想像されるイメージとは正反対の内容で、あとがきを読んでこれが著者のある意図によるものだとわかり、考えさせられた。その他、チェ・ゲバラがコンゴに渡って革命を指導した顛末とその失敗の背景、ルワンダのフツとツチの対立に起因した大虐殺に関する考察など、一編一編が考えさせられるものばかりだった。我々がアフリカに関する文章や写真を見て勝手に抱いてしまうイメージとは違うアフリカ、アフリカの人々が語らない真実がある。しかも対象について知識がないほど「助けなくては」というメッセージは響きやすいという著者の指摘には、自分のこれまでの考えを根本から揺さぶられる気がした。(「絵はがきにされた少年」 藤原章生、集英社文庫)

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映画 ジュラシック・ワールド

純粋娯楽作品。

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小鳥を愛した容疑者 大倉崇裕

TVドラマの原作となったシリーズものの第1作。ドラマ自体は観ていないが、その予告編などで何となくどういう内容かは想像がついていたが、前に読んだ著者の作品が面白かったので、とにかく読んでみることにした。主人公が動物に関する知識を活かして難事件を解決するという内容や設定は予想通りだったが、真相にたどり着くまでのストーリー展開や捻りの効いたどんでん返しは期待以上に本格的で面白かった。シリーズはもう4冊も続編が出ているらしいので、まだ楽しめるのが嬉しい。(「小鳥を愛した容疑者」  大倉崇裕、講談社文庫)

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メンチカツの丸かじり 東海林さだお

あくまで個人的な感想だが、本シリーズはますます面白くなっている。本書で特に目立ったのは、巷のグルメブームに全く左右されない物言いだ。「馬肉料理専門店」「豆腐料理専門店」「出し汁カフェ」などの流行りの店に関する記事は、語り口はソフトだがその批判的な眼差しが何とも痛快だ。また、「三種混合麺」とか「いなり寿司」の記事では、ビックリするようなアイデアで読者を翻弄する。本書で一番感動したのは「焦げ目」に関する文章。言われてみればその通りだなぁといたく感心してしまった。(「メンチカツの丸かじり」 東海林さだお、文春文庫)

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大家さんと僕 矢部太郎

今話題の一冊。40万部というからすごい。内容は、題名の通り、80歳を超えた大家さんと若手芸人の交流を描いたものだが、両者の素朴な性格が微笑ましい。ただそれだけの内容だが、終盤の危機を乗り越えた2人の今後が読みたくなるのは確かだ。(「大家さんと僕」 矢部太郎、新潮社)

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浜村渚の計算ノート 8と1/2 青柳碧人

ずっと読み続けているシリーズの9作目。読み始めてすぐに今までの作品とは色々な点で趣が違うことに気づいた。まず語り手がいつもと違うし、主人公たちが戦う相手もいつもと違うようだ。そもそも探偵役の主人公の一人が途中から殆ど登場しなくなってしまう。最後の著者のあとがきで、これらの変化にちゃんとした理由があることがわかる。シリーズの長期化で、読者を飽きさせない工夫とも解釈できるがそれが成功したかどうか、個人的にはやや微妙な感じがした。(「浜村渚の計算ノート 8と1/2」 青柳 碧人、講談社文庫)

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映画 カメラを止めるな

評判通りの面白さ。それにしてもよくできているなぁと思う。

これからは、読んだ本だけではなく、見た映画、行った音楽会、劇など(スポーツ観戦は除く)も記録していくことにします。

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錯覚の科学 クリストファー・チャプリス

ずっと前から機会があったら読みたいと思っていて、ネットで購入した1冊。「錯覚」という題名から、つい「視覚的な錯覚」について書かれているのかと思っていたのだが、宅配便で届いた本書をみたら、全く違う内容だった。本書では、注意力(あることに集中していると他が見えなくなる)・記憶力(記憶は塗り替えられる)・自信・知識(自信や知識はかえって見誤らせる)・原因(原因と結果を取り違える、パターンを認識しがち)・可能性(検証不能な俗説)という6つの視点から、様々な事例や研究を織り交ぜながら、錯覚という現象を解き明かしていく。冒頭の「ゴリラの実験」は、TVで紹介されているのを見たことがあるが、TVでは紹介されていなかった色々なパターンの実験を紹介して、そこから何が言えるのかを追求していくところが流石研究者という感じだ。また、「スマホ運転はなぜ危険なのか(なぜ助手席の人との会話よりも危険なのか」といった付随的な話も目からうろこの面白さだし、最後の章の「サブリミナル効果は全くの俗説」という話には驚かされた。(「錯覚の科学」 クリストファー・チャプリス、文春文庫) 

 

 

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霧のむこうに住みたい 須賀敦子

久し振りに読んだ著者の本。一貫したテーマがあるわけでもなく、ドラマチックな内容でもなく、ただ遠い昔の思い出が語られているだけなのだが、いつものように、とにかくその静謐な文章に純粋に吸い込まれてしまった。著者の本を読むたびに、著者がこうした静かな高揚感に浸ることができる唯一無二の作家だ感じるのは何故なのだろう。それこそが、言葉の持つ力であり、文章を読むことの楽しみだと今回も思い知らされた気がする。(「霧のむこうに住みたい」 須賀敦子、河出文庫)

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