書評、その他
Future Watch 書評、その他
オンライン講義 宇宙の元素合成②
宇宙にある元素の起源についてのオンライン講義の2回目。周期表や核図表から読み解ける元素合成のプロセスを色々詳しく教わることができた。中性子星合体によって起こるとされているrプロセスと呼ばれる元素合成(金やプラチナなど重元素の合成)がある条件(強磁場)を満たす超新星爆発でも起こるという仮説があり、講師の先生は超新星爆発からの可視光を分析してrプロセスの痕跡がないかを調べているとのこと。また、宇宙にはたまたま昔の状態を残したままの星があり、それを対象とした「銀河考古学」という研究分野があるそう。宇宙が誕生してから色々なイベントによって元素合成が進んでいくが、インフレーションに始まる宇宙の進化の過程と今わかっている元素合成の流れとの整合性を検証することによって、両者の理論の補強が可能なのだろう。トリビアとして、一回の中性子星合体で組成される「金」の質量はちょうど地球一個分と同じだそうだ。
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アインシュタイン方程式を読んだら宇宙が見えた 深川峻太郎
宇宙論のオンライン講義を聞いていると頻繁に登場する「アインシュタイン方程式」の解説書。アインシュタインが質量とエネルギーが同値(E=mc*2)であるという特殊相対性理論を提唱した後、重力と加速度が同値であるという直感からそれを一般化し、その後そこから導かれるブラックホールや重力波が実際に観測されたという方程式だ。アインシュタイン方程式について一般人のために極力数式を使わずに解説する本は色々あるが、本書は敢えて数式を使ってアインシュタインの思考の流れを読み解いていくという内容。文系人間としてはベクトル、行列といった高校でさわりだげを習った知識を思い出しながら、延々と数式ばかりのページを読み進めることになる。一応読み終えたが、やはり数式を使っても何とか理解できるのはローレンツ変換を基礎とした特殊相対性理論までで、そこから先の展開は残念ながら全く歯が立たなかったし、その方程式からブラックホールや重力波の存在が導かれるという流れもよく分からなかった。そうは言っても、数式の展開を追っていく中で登場する概念とその用語だけは記憶に留めることができたので、著者の期待には添えないものの、また別の本を読んでいくことで何となく理解が少しは進むのではないかと期待したい。(「アインシュタイン方程式を読んだら宇宙が見えた」 深川峻太郎、ブルーバックス)
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オンライン 動物園講演
動物園に関するオンライン講義はこれで2回目。今回は、動物園の飼育員を目指す学生を対象に動物の展示方法の要点を説明しながら飼育員として必要な心構えを説く講演会を、学生に混じって一般視聴者として視聴した。内容は、①動物園水族館の役割 ②動物を展示するということ ③飼育展示環境に求められることの3つで、それぞれとても面白く為になる話が聞けた。生きた動物を展示することの意義については、図鑑、剥製展示との違い、メリットデメリットを表で分かりやすく説明してもらい、なるほどなぁと感じた。講師は、動物行動学の研究者から動物園水族館の企画展示を行う会社に転職した方とのことで、何気なく見ている動物園の構造物に動物や来園者への様々な配慮や意図があることがわかった。今度動物園や水族館に行った時は、確実に見方が変わるように思う。
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兇人邸の殺人 今村昌弘
ホラーと本格ミステリの融合という新境地を切り開いた人気シリーズの3作目。クローズドサークルの中で次々と起こる凄惨な事件という本格ミステリお決まりの設定を生み出す巧妙なホラー要素、論理思考を頼りに真相に近づいていく探偵役の主人公の活躍などは前2作と同じだが、シリーズを読み進める中でホラーやミステリーともう一つ、主人公たちの物語がかなり濃密に書かれるようになってきているというのが本作の特徴だろう。さらにその主人公たちの物語の濃厚さに負けないようにということだろうか、謎解き部分の複雑さも前作、前々作以上に増しているように思われる。現場の見取り図とかも色々示されるがとても自力では答えを出せそうにない複雑さで、物語を読み進めながら、これはこれでいいかなと納得しながらも、もう少し謎解き部分を単純にして欲しいと思いつつ読み終えた。(「兇人邸の殺人」 今村昌弘、東京創元社)
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見知らぬ人 エリーグリフィス
話題になっている英国のミステリー作品。中学校の女性教師とその娘、事件を追う女性刑事という3人の視点による語りの中に、女性教師の日記、ホランドという作家の短編小説が断片的に挿入されながらストーリーがスリリングに展開していく。有名な文芸作品の引用が随所に登場してゴシックホラーテイストを醸し出す一方、格差社会、受験戦争、世代間の断絶といったイギリス社会の重苦しさが克明に描かれていて、その2つが違和感なく融合している作品だ。真相については、凄惨で猟奇的な事件が続くが、何となく初めて読むこの作家はあまり悲しい結末にはしないだろうという予感がしたので、それを根拠に犯人を絞り込んだらその通りだったので少し嬉しかった。(「見知らぬ人」 エリーグリフィス、創元推理文庫)
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不完全性定理とはなにか 竹内薫
先日読んだノイマンの本で取り上げられていたので気になっていた1930年代にゲーデルとチューリングが発表した世界の論理学界を大きく揺るがせた「不完全性定理」ついての啓蒙書。本書は、著者自身が語るように、このテーマを論理学の基礎からわかりやすく説明していくというよりも、著者自身がそれを理解していった経緯を辿ることで読者にも著者の体験を追体験してもらおうという意図が強く感じられる構成になっている。実際本書を読んでみて、「あるシステムの中でそのシステム自体の整合性を証明することはできない」「数学的には正しいことでも証明できないことがある」というゲーデルの定理については、何となくだがそれに至る道筋を追うことができた気がした。一方、全く別のアプローチで同様の結論に達したとされるチューリングの思考の道筋は、最終的になぜそうなるのか全く理解できなかったが、それが今のコンピューターの基礎になっていることだけはわかった気がする。本書の内容については、理科系の人とかコンピューターを勉強してきた人にはそれなりに常識になっている部分が多いとのこと、恥ずかしながら文系人間の自分にはそのこと自体が大きな驚きだった。(「不完全性定理とはなにか」 竹内薫、ブルーバックス)
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古生物たちのふしぎな世界 土屋健
カンブリア紀からベルム紀までの古生代の生物の歴史をカラー図版とともに解説してくれる一冊。それぞれの年代の地球環境、生物相の特徴、主役級の生物の姿、我々の祖先とも言うべき脊椎動物の進化の過程などが分かりやすくまとまっていて非常にためになった。色々な生物のカラーイラストは見ているだけでワクワク、特に有名なカンブリア紀のアノマロカリスとハルキゲニアの異様さが際立っていることもよく分かった。生物の歴史で、ある時期に多くの生物が絶滅したことが5回あり、本書で扱われている期間中にそのうちの2つ、「オルドビス紀末期の大絶滅」「デボン紀中期の大絶滅」の2つがあったとのこと。あと3つが中生代以降ということになるが、そのうちの1つが「恐竜の絶滅」だとして、残りの2つがどんな事件だったのかが大変気になる。その辺のことが分かるような続編を是非期待したい。(「古生物たちのふしぎな世界」 土屋健、ブルーバックス)
(年代別の特徴)
①カンブリア紀(5.4〜4.8):眼の獲得→生存競争本格化、カンブリア大爆発
②オルドビス紀(4.8〜4.4):気候温暖、節足動物の時代、末期に大量絶滅
③シルル紀(4.4〜4.2):再び温暖化、ウミサソリ、魚類進化
④デボン紀(4.2〜3.6):引き続き温暖、陸地に緑、魚類の時代、中期に大量絶滅
⑤石炭紀(3.6〜3.0):大森林、昆虫繁栄、爬虫類進化
⑥ベルム紀(3.0〜2.5):両生類の時代、哺乳類祖先の単弓類進化
(年代別の特徴)
①カンブリア紀(5.4〜4.8):眼の獲得→生存競争本格化、カンブリア大爆発
②オルドビス紀(4.8〜4.4):気候温暖、節足動物の時代、末期に大量絶滅
③シルル紀(4.4〜4.2):再び温暖化、ウミサソリ、魚類進化
④デボン紀(4.2〜3.6):引き続き温暖、陸地に緑、魚類の時代、中期に大量絶滅
⑤石炭紀(3.6〜3.0):大森林、昆虫繁栄、爬虫類進化
⑥ベルム紀(3.0〜2.5):両生類の時代、哺乳類祖先の単弓類進化
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すこしずるいパズル たつなみ
「漢字パズル」の雑誌を読書の合間にやったりしているが、すこし飽きてきたので次にちょっと違うパズルでもと思って買った一冊。かわいいイラスト付きパズルが50問載っている本書。一問あたり1分もかからないのですぐに読み終わってしまったが、時々ハッとさせられる面白いパズルもあって十分に楽しめた。「ちょっとずるい」というのは、論理や計算といった正攻法ではなく問題文そのものや周りのイラストにヒントがあったりということで、そのコツを掴んでしまうとそれに慣れてしまう感じだが、それでもパズルの1つのパターンとして頭に入れておけば色々なパズルをやる時に正解率アップにつながる気がした。(「すこしずるいパズル」 たつなみ、アリス館)
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X教授を殺したのはだれだ! トドリス・アンドリオプロス
物語形式で楽しく数学を学べるというふれ込みの啓蒙書。1900年のパリで数学界の重鎮X教授が殺され、その容疑者10人が全て実在の数学者という設定。その容疑者たちの供述書が全て数学の問題になっていてそれを解くことで容疑者を絞り込んでいかなければならないのだが、実際に解けた問題は最初の2つだけ。他の問題もよく考えればできるものもあったかもしれないが、根気が続かず諦めて読み飛ばしてしまった。容疑者の数学者たちだけでなく、X教授や探偵役の若者、さらに事件そのものにもモデルになった実在の数学者や数学史の重大な出来事が実在すると後から知り、その2人とも最近読んだ本で知った名前だったのでびっくりした。本書の後半は、前半のミステリー編の元になった数学者たちの業績や数学史のエピソードが簡潔に説明してあってためになった。(「X教授を殺したのはだれだ!」 トドリスアンドリオプロス、ブルーバックス)
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オンライン講義 宇宙の元素合成
毎週月曜日に聴講している天文学宇宙論の講義。今回は「宇宙の元素合成」ということで、宇宙で鉄より重い元素ができたプロセスを詳しく教わった。これまでにも断片的に聞いたことはあったが、そこに焦点を絞った内容だったので、自分の知識がかなり整理された気がする。宇宙における元素合成については、ビッグバン、惑星状星雲、白色矮星の超新星爆発、重い星の超新星爆発と続くが、今回の話はその次の「中性子星合体による貴金属の合成」が中心。中性子星というものの正体も今までぼんやりしていたが今回の話でそれもクリアになった。原子番号がかなり小さいのに周期表でポツンと「天然には存在しない」とされるテクネチウムの話もとても興味深かった。
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不要不急の男 土屋賢二
ずっと読み続けているツチヤ師のエッセイ。いつも通りのゆるいエッセイだが、今回はコロナ以降の日常も扱われていてそれが特に面白かった。また鉄板の恐妻家ネタも特に今回は冴え渡っていて面白かった。著者自身が強調するように何かの役に立ちそうもない文章を読んでいてここまで楽しいのは何故なのかよくわからないのだが、全く飽きがこないのがもっと不思議な気がする。(「不要不急の男」 土屋賢二、文春文庫)
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硝子の塔の殺人 知念実希夫
著者の本はたくさん読んできたが、本書は医療関係の知識を土台としたこれまでの作品と全く趣の違う作品だ。全編に古今東西のミステリーとりわけ日本における本格ミステリーへのオマージュやミステリー論が取りばめられていて、中学生の頃からエラリークイーンとかアガサクリスティーとか本格ミステリーを読み漁ってきたものとしてはたまらない内容だ。本書に登場するミステリーの蘊蓄でよくわからなかったのは一箇所だけで、自分もかなりのマニアと言って良いんだろうなぁと少し嬉しくなった。本の帯には本格ミステリーの巨匠の賛辞が並んでいて、ここまで自分をオマージュしてくれる本を推薦するのはかなり照れ臭いだろうなと笑ってしまった。あとがきには、著者には元々本格傾倒があると書いてあって、これからこうした新境地を進んでいくのか、本書でそれを出し切ったという感じで今までの路線に戻るのか、どちらにしてもこの先も著者の新作を楽しみにしたいという気持ちが今まで以上に強くなった気がする。(「硝子の塔の殺人」 知念実希夫、実業之日本社)
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フォン・ノイマンの哲学 高橋昌一郎
20世紀の天才科学者ノイマンの伝記。題名の通り、ノイマンの生涯を時系列で記述することで彼の「哲学」を浮かび上がらせてくれる内容。ノイマンについては、現在使われているコンピューターや量子力学の基礎を確立した科学者ということは知っていたが、それ以外にも天気予報システムを作り上げたりアメリカの原爆製造に大きく関与したりと、様々な分野で革命的な業績をあげていたというのは知らなかった。特に原爆開発における彼の影響の話は結構衝撃的だった。原爆開発において実際に実験するまではその威力についてTNT爆弾の400トン級という意見から4万トンだという意見までバラバラだったという(実際には2万トン級)。ノイマンの人物像については、幼少期の天才ぶりのエピソードは少し誇張が入っている感じがするが、原爆の最初の標的として降伏の意思決定をすることさえできなくなる「東京案」に反対する一方で、日本人の恐怖を最大限にするとして「京都案」を強く主張したというエピソードを読んで、彼の「超合理主義」「虚無主義」が怖いほどに伝わってきた。(「フォン・ノイマンの哲学」 高橋昌一郎、講談社現代新書)
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爆発する宇宙 戸谷友則
「爆発」という現象をキーワードにして宇宙について解説してくれる一冊。これまでのオンライン講義や啓蒙書で超新星爆発については色々学んできたが、一口に超新星爆発といっても色々な種類があったり、超新星爆発と思われていたものが全く違うものだったりということで、まだまだ宇宙の話は奥が深いなぁというのが率直な感想だ。本書では、ガンマ線バーストや高速電波バーストなどここ数年の宇宙論の課題なども取り上げられていて、宇宙論研究が日進月歩であることを改めて考えさせられた。(「爆発する宇宙」 戸谷友則、ブルーバックス)
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黒魔術がひそむ国 春日孝之
副題「ミャンマー政治の舞台裏」。ミャンマー政治において占星術や呪術がかなりの影響を与えていることに焦点をあて、民政移行や遷都などにそれがどのように関わったかを教えてくれる一冊。ミャンマーの人と親しくなったり、ミャンマーで仏教寺院に行ったりすると自分の誕生日が何曜日だったのかを知っていないとダメという場面が時々あるし、ミャンマーでは政治的な節目を縁起をかついで占いで決めることがあるという話はよく聞くが、ここまで深く市民の生活や政治の場面で占いが重要な役割を果たしているとは知らなかった。変わった着眼点の内容で全編面白く読めたが、昨年刊行された本なので今年になってからのクーデターの話は当然書かれていないし、ロビンギャ問題についての記述も少なく、ちょっと刊行のタイミングが悪かったという感じだ。少しだけ触れられているロヒンギャ問題に対するアウンサンスーチー氏の対応についての記述は、問題の複雑さを指摘していて、これまで読んだ文章の中では最も説得力がある気がした。ちなみに自分の誕生日は水曜日。水曜日は午前と午後で違う曜日になり、何時に生まれたかが重要なのだが、今のところ知る術がない状況で困っている。(「黒魔術がひそむ国」 春日孝之、河出書房新社)
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