宇宙論の最先端のトピックである「マルチバース」について初心者用に書かれた啓蒙書。初心者向けと言っても、分かりやすいとかシンプルとかいうことではなく、「理論を理解できなくてもそれなりに楽しみ方はあるよ」といった感じで書かれている。自分の理解としては、量子力学と一般相対性理論の矛盾を解消する超弦理論と、宇宙の始まりを研究していてたどり着いたインフレーション理論の2つがマルチバースの考え方を予言。インフレーション理論については、宇宙論が素粒子の質量や種類が人間にとって都合が良すぎる謎、真空のエネルギーが小さすぎる謎、初期宇宙が均一すぎる謎などの解明が課題だった時に、宇宙の加速膨張という現象が観測結果から導かれ、それが今の永久インフレーション理論に繋がり、マルチバースという考え方に行き着いたとのこと。要は、これらの謎は宇宙が1つと考えるから謎に見えるだけで、無数にある宇宙で我々の宇宙がたまたまそうだったと考えれば謎ではなくなる、そう考えた方が自然ということだ。この理論によれば、インフレーション時に小さな泡のような宇宙が10の500乗のスケールで誕生、その中の一つが我々の宇宙で、「宇宙とは、宇宙の中から見ると無限、外から見ると有限」と言うことらしい。どこで分からなくなったのかも分からないほど難しかったが、何となく宇宙科学の楽しさは感じられた。(「多元宇宙論集中講義」 野村泰紀、扶桑社新書)