薬師岳へ

2013-08-09 21:42:33 |  初・縦走
一日目の晩、小屋のトタン屋根を叩く雨音が断続的に強くなり、雨樋を溢れた水がドシャドシャと落ちる音が窓外から聞こえていた。
残念ながら予報通り明日も天気は悪いようだ。

翌朝出発時、小屋の人に天気の様子を聞くと、10時くらいから回復に向かう予報なので、途中の薬師岳山荘で様子を見るのがよいとアドバイスを受けた。
小屋を出る。
雨は小降り。
ガスった太郎兵衛平、20m先は真っ白。
緑の野にコバイケイソウの白い花が風に揺れ、足元には確としてある木道が、進む方向に薄れ霧の中に消えていく。
これはこれで幻想的でいい。
雨で無ければもっといい。

薬師峠へ下ると沢音が聞こえてきた。
沢を越えねばならないようだ。
沢音がどんどん大きくなる。
どれくらい増水してるんだろう、不安。
だったけど、幸いにして恐れたほどでなく、沢水も透明。
一回渡渉するだけでなく薬師平までずっと沢沿いに登らねばいけなかったけど。

薬師岳への稜線にでると、雨も風も強くなった。
ふと顔を上げるとガスのせいで気付かなかった薬師岳山荘が目の前にあった。
風も強いしアドバイス通りここで様子をみさせてもらおう。
玄関に入らせてもらい、小屋のお兄ちゃんと今上ってきた沢の話をし、早くも腹がなるのでおにぎりを一つ食べして薬師岳登頂に備える。

外で唸る風の音も小さくなったので出発。
頂への上りは茶色く、ザレた道がジグザグと小さく折り返し続く。
左から右へと一定の強さで風は吹き抜け続ける。
強風だが吹き飛ばされるほどではなく危険は感じない。
アドバイス通り時間を置いたのが良かったよう。


雨は落ちてこなくなったが、ガスが晴れてくれるわけでは無く、半径40m外は白い闇。
ガスの中の稜線は目を楽しませるものが何もない。
変化のないジグザグの道。
息を切らせ、ただひたすら足を運ぶだけ。
ここは薬師岳。
実は知らない間に遭難して死んでいて、山頂におわします薬師如来のもとへ向かっているのではないかと想像してみたりする。

ようやく頂上に到着。
当然展望は無し。
雨で無ければカメラが出せる。
息を整えつつ少しだけ撮影し、薬師如来にお参りして先に進んだ。

<薬師岳山頂>