そう、1年生の時の話である。
勉強、大っ嫌い(あっ、これは今もか)
スポーツ根性無し
楽しみは帰寮してから、朝の残りのパン(朝飯のパンが菓子パンが多かった)を食べながら、漫画本を読むこと。
うるさいことを言う親はいない。
部活をやっていた時の、消灯前の筋トレもない。
ただ、自分なりに差を感じていたのは、化粧品の話である。
現在のように男性化粧品が市民権を得た時代ではなかった。
風呂上りに部屋の連中が使っているもの。
カネボウはエロイカのヘアクリーム。
ヘアリキッドだのオーデコロン、オードトアレ・・・
チンプンカンプンである。
よーし、デビューだ。
ゆきたんくが初めて使った男性用化粧品。
それが、ヤナギヤのヘアトニックだ。
創業400年の老舗、ヤナギヤだ。
ただ若者には受けないようで
「何、この臭い」
「ヤナギヤ、おじん臭」
さんざんな言われようである。
高校生なりにお金をはたいてかったヘアトニック。
360mlの大瓶。
何を言われようと使い切らなければ・・・
1970年に「うーん、マンダム」とチャールズ・ブロンソンがやった大ヒットCMから5年が経過していた。
そうだ!
その時にひらめいたのが(恥)
「お前、何使っているの?」と聞かれたら
「ヤナギヤ!」
とヘリウムガスを吸った時のような声で答えることである。
これは大ヒットした。
聞かれるたびに「ヤナギヤ!」
みんなはそれを聞きたくて、何度も「お前、何使っているの?」である。
自分がとっくに飽きてきているのに、周囲は求めてくる。
何がそんなに面白かったのか。
今となっては検証のしようがないし、覚えておられる方も少ないのではないか。
思い出す度に、
「あれは、恥だった」
と思うゆきたんくである。