のんびりぽつぽつ

日常のこと、本のこと、大好きなこと・・・
いろいろ、と。
のんびりと。

恩田陸!

2010年08月29日 17時07分24秒 | ★★恩田陸
時間が、足りない。
恩田作品を読んでいると、たまに、猛烈に焦燥感が押し寄せてくる。

それは、苦しいことでもあり、楽しいことでもあり。

ああ。
時間が足りない。
焦る。

三月は深き紅の淵を

物語の交差点。

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理瀬&ヨハンシリーズ

2010年08月27日 08時21分04秒 | ★★恩田陸
居心地が、、いい。

ほの暗いこのシリーズの世界観がピタッとくるってのも、
ある意味問題ある?

だけど。

「水晶~」から、「麦の海に沈む果実」に進み、現在「黄昏の百合の骨」


できれば一日中読んでいたい気分にどっぷり浸かってる。

やっぱり、「三月~」も読むかなあ。
「黒と茶の幻想」も憂理の世界としてまた読みたくなるなあ。
(そすると舞台関係でチョコレートコスモスに・・・・)

恩田さんならではの、行間から感じるこの雰囲気が、ほんと、心地よい。。。
どこかにありそうで、でもあったらとても怖くてでも覗いてみたい・・・


身体を小さく小さくまるめて、じぃっと静かに静かにしていたい。

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朝日のようにさわやかに

2010年08月23日 20時38分23秒 | ★★恩田陸
恩田 陸 新潮文庫


短編集。
シリーズ物の番外編的な位置のお話が、とても楽しい。
一番の目的は
「水晶の夜、翡翠の朝」
ヨハン&理瀬のシリーズの、ヨハン側での番外編のこのお話は、
以前、友人に借りて読んだけれど、初出の本はとても古くて手に入らず。。
こうして短編集が出るのを心待ちにしていたのでした。

理瀬が学園を去った後の、ヨハンの立場がはっきりと描かれるこの作品。
憂理がいて聖がいて、、懐かしい~~~~!!!
思わず、「麦の海に沈む果実」を今、手にしています。

他の短編は。
「冷凍みかん」
このみかんを手にした人は、絶対に溶かしてはいけない。
溶かしたら地球が・・・・というSFチックなお話。こういうのかなり好み。
ラストがきっぱりしないのも、よし!
「あなたと夜と音楽と」
多分・・・そうだろうな、と予想はできる展開なれど。
閉鎖した空間に殺人者と一緒にいるって怖くないか?とは思っちゃう。
でも。ラジオパーソナリティーだから、声が外に通じてるってことか。。
心理状態を追えないのは短編だから仕方ないかな。
面白かっただけに、もう少し書き込んで欲しい物語だったかもしれない。
「赤い毬」
あったことのないおばあちゃんに、会ったと主張する孫娘。
その子どもの頃の記憶は、どこか常野に通じる熊笹の海・・・・。
いつか向こう側に行ったら、おばあちゃんから引き継ぐのかな。毬つきを。
(と、思うとちと怖いけど。。)
「おはなしのつづき」
読んでいって、ラストでガツンっとやられる。
童謡形式とはいえ、シビアな描き方なのが恩田さんならではか。。。
病床の子どもにせがまれて物語を語り聞かせる・・・・親にはちょっと辛い物語でした。

と、まあ、印象に残ったお話の大雑把な感想・・・。
だけど。
やっぱりこの方は長編の人。どれもとても上手いけれどどこか物足りなく感じるのは、
長編で思いっきり読み込まされる、その醍醐味を知ってるからかもしれないな。

そうそう。
「卒業」というホラーがまた怖かった!!
背景のわからないホラーは、心底怖いんです。活字であっても。
黒乙一さんを思いだし・・・・ううう・・・・夜読まなくてよかったです。

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「クレオパトラの夢」

2009年10月26日 16時49分55秒 | ★★恩田陸
恩田 陸 著 双葉文庫。

わが家の本棚。
素子さん以外は極力文庫にしよう・・・・と思ってから何年?
この本はハードカバーで持っていたんだけれど、
この度ついに、文庫に変更されました。。
(つまり、結局2冊買ったってことになるのよね。。。手放したくはない作品なんだもん。再読何度も。。だし。。。/爆)


北国はH市を訪れた神原恵弥(かんばらめぐみ)。
女子言葉を巧みに操り、見目麗しく、特殊な環境で育ったがために(?)、かなり特殊な性格に落ち着いた彼はれっきとした男性。
(何となく、素子さんの『扉を開けて』の斉木杳氏を思い出す・・・環境設定が似てるんだよね。反応は正反対に育つけど。)
某製薬会社の研究員で、その実、ま、いろいろ肉体活動を伴った特殊なお仕事をしているのだけど。
寒さのダイッキライな彼が、何故クリスマス直前のH市に震えながら来たかと言うと、婚約破棄をしてまで貫いた大恋愛で不倫の彼を追いかけて飛び出した双子の妹、和見を家に連れ戻すため。
そしてもう1つ。
ずっとささやかれる「クレオパトラ」というものの正体を掴み、できれば手に入れるため。

謎解きの物語として捉えると、少々物足りないような気もするのだけれど、
結果、なんにもなかったよ、で終わるこのお話は、
「実は結構世界的に有名になってしまった」神原恵見という人物の休暇、
と見ると、すごく「らしい」と今回感じてしまった。
結局、彼が動いたという事実が、業界を騒がせてクレオパトラ関連を混濁の渦に飲み込んだのだもの。

「クリスマス休暇よ!」といいながら、何だかんだと和見に振り回される彼は、
前作「MAZE」よりも何となくずっこけていて、楽しい。
双子の会話は掛け合い漫才状態だし、
なんていうか、キャラ設定が本当にこの作家は上手いよな、と思う。

これは、恵弥のシリーズなの、ね?
続きはあるのかなあ?
文庫はまだこの2冊のみ?

常国シリーズに続いて好みな世界かも、なこの作品。
続きを書いてほしいですよ。
恩田作品は、私にとってちょっと賭けのようなところがある。
ぴたっとハマってすごく面白いときと、
どうしてもだめで、(だけど文章は上手いからひきつけられて読み終わり)、その後影響強すぎて苦しむときと・・・・(^^;)

でもだから、好きな作家さんの1人なのです。
元気でこれからも書いてください!恩田先生!!
(ちょっと。。ナーバス?栗本先生に加えて、氷室先生も逝かれてしまってることを先日知って・・・・合掌)

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「中庭の出来事」

2009年10月09日 21時22分30秒 | ★★恩田陸
恩田 陸 著 新潮文庫
山本周五郎賞受賞作


繰り返される、少しずつ違う劇。
繰り返される、どこかが違う事件(事故?)。
語る人によって、同じことが全く変わる情景と立場。
全く違う場所で話されること。

それぞれが、関係ないことのように見えて、
最後にすべてが一気に纏め上げられる。

これは、確かに恩田作品だなあ。。

と、読み終えた今は思うのだけれど。


正直。
辛かった。

特に劇中劇に織り込まれる「ロミオとジュリエット」とか「真夏の夜の夢」。
戯曲(?)を読み慣れないせいもあるんだろうけれど。
誰が誰やら訳がわからなくなっちゃうし・・・(^^;)

辛い・・・・と思いつつ、何とか乗り切ったというのが正直な感想。

加えて。
たぶん、ちょっと疲れてた。
繰り返される同じ文章に。

 この前読んだ「四畳半神話大系」で、ね。ちょっと疲れたんだ。
 組み違っているけれど、必ずどこかに入ってくる同じ文章に・・・・・。
 あー、またこの文章だぁ。。。と。

タイミングの問題、もあったかな。
間違いなく、すごく作りは巧妙で、
ラスト、読み終わったときに感じる、
騙されたような負に落ちないような、
でもどこか心地よい感覚は、恩田陸作品そのもので。

再読すると、とても楽しめそうな雰囲気がある。

結論がわかってから最初から読む。
それがすごく判りやすいことって・・・・・ある、よね?
(一応ミステリーなんだけど・・・・)

芝居表現は、すごくおもしろい。
目の前にその舞台の情景が浮かぶ。これはもう秀逸で最高。
ふと、「チョコレートコスモス」を読み返したくなった。

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『ライオンハート』

2006年09月03日 22時28分39秒 | ★★恩田陸
恩田 陸 著 新潮文庫。

普遍の魂が時の空間を渡るラブストーリー。
エリザベスとエドワード。
ランダムに短編のようにエピソードが織り合わさって、描かれる広大な心の織物。
決して結ばれることの無い二人が、ある時代に気づかないまましっかりと添い遂げられた。
そのエピソードにぐっときてしまいました。(やられた・・って感じ・・・?)

実はかなり前に手にしていたんだけれど、どうしても「ラブストーリー」に抵抗を感じ・・・開けなかったんだよなあ。
うーむ。でも、恩田陸で表現すると、恋愛も時空を超えるのね~(笑)
恋がメインにくると途端に読む気が飛び去る(でも、端っこに位置していると気になって仕方ないへそ曲がり、な)私が、ぐっと引き込まれてしまいました。

で、いきなり何故だかどうしても「常野」を読みたくなっちゃって。
そのまま「光の帝国-常野物語」の何回目かの再読に突入しております。。。
「光の帝国」第一話「大きな引き出し」にまた泣かされている私です。
(やっぱり、これが大好きなんだなあ・・・)

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『夏の名残りの薔薇』

2006年06月24日 14時59分34秒 | ★★恩田陸
恩田 陸 著 文芸春秋。

ここしばらく、本屋さんに行っては新しい本を買い、ネットで検索してはまた、購入し、、、ってことをしていたら、かなりな量を溜め込んでます。
積読本。。。
ってなワケで、ちょっといい加減、たまった本を読まなくちゃな~~と思って手をつけた、まずは一冊目。

ちょっとご無沙汰していた恩田陸です。

「嵐の山荘」的設定のミステリーだけれど、その殺人は本当なのかそれとも想像なのか、、それがわからなくなる物語。前章で確かに血だまりに倒れていた人物が、次の章では普通に生きている。ほんの少しずつ時間を重ねて先に進む人々の物語。

時間が交差して、どれが「本当」なのかがわからなくなる。
人の記憶。人の体験。過去。未来。
どこが本当で、どこが想像で、どこが現実で、どこが虚像で・・・・

久々の恩田陸は、あの理解しがたい世界の中にすっかり引き込まれて、やめられない止まらないの状態になってしまいました。
で、ね。

この本は巻末に恩田陸のインタヴューが載っていて、、
それを読んだがために、、私は積読本をまた置き去りにして、一冊再読をしてしまったのでした。
土曜日仕事無かったし、、ラッキイ~~~!!だわ。
コメント (2)
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「殺人鬼の放課後 ミステリ・アンソロジーⅡ」

2006年05月22日 21時50分38秒 | ★★恩田陸
角川スニーカー文庫

恩田陸、小林泰三、新津きよみ、乙一の4人の作家さんが短編を共通のテーマで競作している1冊です。
タイトル通り、テーマは殺人?
乙一さんにのめりこんで、大人買いしまくっている友人に、「恩田陸があるよ」と教えてもらって借りました。
借りたのよ。買ったんじゃないのよ。めずらしいでしょ~~~

「水晶の夜、翡翠の朝」 恩田 陸。
ヨハンのお話。時系列でいくと、「麦の海に沈む果実」の後。理瀬が学園を去った後の物語になるんでしょうね。
『笑いカワセミ』という悪意のゲームの謎解きをするヨハン。
「わらいカワセミにはなすなよ。ケケラケラケラケケラケラとうるさいぞ」
3番まであるこの歌の通りに事件が起こり、最後の標的がヨハン。
一見弱くて守られる立場のように見える少年が、結局ヨハンに向けられた刺客だったのだが。。
一歳下の彼を、普通に別れを言う形で「処理」してしまうヨハン。
そこには、あからさまでも、秘めたものでも、とにかく「殺意」ってものが感じられず、ヨハンのその住む世界の異常さを映し出す。
ただ、非常にヨハンらしいっていうかヨハン健在っていうか・・・いいんだな。そこが。(不謹慎ですかね、、)
やっぱり、こういう昏い世界を描かせたら、恩田陸は天下一品!思わず、もう一回この一連のシリーズを読み直そうか、、と思っている私がいたりする。

「攫われて」「還って来た少女」の、二作は。
さらっと、、、読みました・・・
前後2作があまりに印象深く、ごめんなさい。
感想書きません。。すみません、、、

で。
「SEVEN ROOMS」 乙一。
母親の買い物をふたりで待っていた高校生の姉と小学生の弟。突然殴られて意識が無くなり、気が付いたときは3m四方の箱のような部屋に入れられている。
そこにあるものは、にごった水の流れる溝と、鉄の扉のみ。扉の下に5cmほどの隙間があって、一日に朝1回だけ食パンと水が差し入れられる。
本来ならば何も訳がわからないままになるはずだったのだけれど、弟が小柄であったことから、流水の中をたどって、流れの上流に3部屋、下流にも3部屋、合計7部屋の同じような部屋があり、一部屋を除いたそれぞれに一人ずつ女性が閉じ込められていることを知る。そして・・・

いや。
怖かった。ほんとに震えがくる怖さ。とてつもない恐怖。
スプラッタなお話もある程度読んだことはあるけれど、これはそういう物ではないんですね。狂気の理由がわからない。狂気の正体の見えない恐怖。何故こんなシステム、ルールなのかに一切触れない。殺される側が必死に解読したルールとその後の対応。そちらに感情は溢れかえっているんだけれど、殺す側の心が全く見えない。たとえ「悪霊付」でも何でも、そういうものが見えていたほうが怖くない、そう真剣に思ってしまいました。
怖かったー。夢に見るくらい怖かった。正直思い出すと今でもキモチワルイよ・・

乙一さんは、以前「白」と「黒」のジャンル訳?がされているのをチラッと目にしたことがあるんですが、これが、「黒」なんでしょうか。
友人がのめりこんだのは両方ともだそうで、うーん・・・・正直、「黒」はもういいかなあ~~。あまりの怖さに手元にこの本を置きたくない~~って状態です。
でも、非常におもしろくて魅力ある作品であることは確かです。
今度は「白」の方の作品を借りてみようかな、、と思ってみたりしています。


こういう、複数の作家さんによる一冊の本って初めて読んだんですが、おもしろいですね。
自分の好みがはっきりわかる。
もう1冊、「七つの黒い夢」っていうのも借りまして、乙一さんと恩田陸のほかに5人で書いているものですが、そちらの方は、このふたり以外では桜坂洋さんの物がおもしろかった。
魚肉ソーセージ、我が家の好物ですよ~~~(って内容説明大幅カット!!)

うーん・・
恩田陸の「水晶の夜、翡翠の朝」この文庫本にしか入ってないのかしら。入ってないのなら、、ここだけ切り取ってほしいよお~~。
だって、この本を購入するともれなく乙一さんも付いてくるわけで・・・怖い・・・・
と、訳のわからない悩み方をしている私です

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「エンド・ゲーム」-常野物語-

2006年03月04日 00時01分20秒 | ★★恩田陸
恩田 陸 著 集英社。

久しぶりの恩田陸です。
実は一冊読んでとことん凹んでしばらく離れました。彼女の作品から。
「ロミオとロミオは永遠に」という作品に納得できなくて・・・・。ま、良くあることです。東野さんでも先日自爆(?)したし、、それは、多分大量の作品を描かれる人たちの、どこに惚れるかというだけのことだから、気にはしない。けれども、しばらくはどうしても気持ちを引きずられるので、次の作品に手が出ない。
納得できないといっても、つまらなかった訳ではなく、なまじ上手い人の作品だから、底に感じる不満もきっと、よりリアルに自分に跳ね返るんだろうな・・

ま、宮部みゆきにのめり込み、江戸時代に飛び去っていた~というのもありますが~

でも、これは読まない訳にはいきません!
待ちに待った、「常野物語」最新長編
第一作目の短編集「光の帝国」の中の「オセロ・ゲーム」その後のお話。「裏返す」人たちのお話です。
手に入れてから、数日、私はばかな葛藤をしておりました。
「読もう。読みたい!!!・・・・でも読み始めると終わっちゃう」
っていう。
待ち望んでいたから、ものすごく読みたいけれど、読み始めるとお話が終わってしまって、また「次」を待たなくちゃならないのが、辛い・・
あほです。笑っていいです。
でも、こんな感覚持つこと、、ないです?
私は、ほんとうに待ってることには慣れてますし、気も長いですが(ええ、あなたのおかげっす!素子姫!!)いざ、最新作を手にすると怖気ずく。
結局、おたおたしつつ、「鬼平犯科帳」第4巻を読み終えて(おまさがようやく出てきた~)遂に手にしました。もう、我慢できないから~
(だから、別に我慢しないで読めばいいんです。はい。。。莫迦です・・・)

余談が長くなりました。
が。
一言で言って。
これ、常野?っていう印象を持ちます。どちらかというと、根底に流れるものが「月の裏側」に似ている気がする。
主人公の母子。その回りに見え隠れする常野の人々(?)そして、失踪した夫と、娘に近づく黒い男。
読み進んでいくと、その違和感の答えがわかるのだけれど、、それにしても、かなり前2作とは雰囲気が違う。
その「違い」をあえて顕しつつ、一筋縄ではいかない物語となって、ラストに描かれる、なにかとてもおかしな景色(と、私には印象があります)
猜疑心と闘争心と強さと抵抗。。そして、弱さ。
なんだか、「穏やかで、人との融和を好み、静かに在野に散っている人々」という「常野」から一歩離れている作品でした。

だからって、じゃあがっかりか、というとそうじゃない。
私、夕べ「エンド・ゲーム」を読み終えてから、「光の帝国」をまた再読してしまいました。
そこで気がついたけれど、そうだ。この短編の中でも、「オセロ・ゲーム」はちょっと違う話だった。何かわからないけれど相手と『戦う』話。戦っている家族の、人のお話だったんだ。

これが、ひとつのきっかけになるのかな。常野という人々の先を見る、きっかけ。
新しいゲームのプレーヤー。時子と火浦。暎子と高橋。
そして去っていった拝島肇というの暎子の元夫。「裏返す」力、「洗濯屋」の力は、新いゲームの中で、どんな役割を持つことになるのかな。

イメージだけがどんどん膨らむ。
ああ、そうか。だからこの話もまさしく「常野」の世界の一部なんだ。と、妙なタイムラグを置いて納得して・・・
そして、、、、さあ、4作目!と、また私は待ち続けることになる。
(出来れば、今度は春田の一家のお話を長編で読んでみたいなあ・・・なんてことを考えてもみる)
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「ドミノ」

2005年11月17日 21時53分04秒 | ★★恩田陸
恩田 陸 著 角川文庫。

1億円の契約書を待つ、締め切り直前のオフィス。オーディション中、下剤を盛られて苦しむ子役の少女。推理力で次期幹事長の座を競い合う大学生。待ち合わせ場所にたどり着けない上京してきた地方の老人。その句会仲間の警察OBたち。B級ホラーの映画監督とそのペット、恋人に捨てられそうな女性・・・

主人公が27人と1匹。共通するのは「真夏の東京駅」

パニックコメディの大傑作って、裏表紙にはありますねぇ。
へえ~。27人じゃあ私は登場人物の把握ができないんじゃないかな~~と思いつつページをめくったら、、いきなり「登場人物からの一言」なんてものが出てきて、一瞬ぎょっとしました。
続いて東京駅の地図。

読み始めたときは、妙に「ドミノ」というタイトルが気になっていて、保険業務からオーディション、句会仲間とのオフ会のため上京する老人ってコロコロ変わる場面に、どうも読みにくいなあ・・と感じました。契約どうなるのかな?って気になりだしたところでいきなり場面は子どもたちのオーディション。じゃ、そのオーディションは一体どうなるの?と思うと、また全く別の風景・・・感情移入をしつつ読むことの多い私には、正直合わない作品かも・・と。
ところが・・・

「どらや」の紙袋。

これが出てきてからがもう!先が気になって気になって、まさしく「ドミノ倒し」のように一息でラストへ・・・

やってくれます。恩田陸。
しかもラストは彼女らしい、「すっきりしたようで、実はとんでもない切り方じゃないの?」という物。

文字通り、おもしろい。笑いながら読める作品です。
それにしても、これだけの登場人物を、すべてキチンと書き分けるその文章能力。表現力には脱帽。私のように記憶力が怪しい人間でも最後まで混乱しないで読めるんだから、それだけでも手に取る価値ありってことのような。
一点集中の感情移入が出来ないので、ちょっと印象はあっさりしますけれど、それでも見つけましたよー。気になる人。それからハッタオシタイ奴とか、かわいいなあ~って子(?)とか。
その中でも、一番「そうそうそう!!!!」と思ったのは。。
句会のオフ会のために、初めて上京してきた俊策おじいちゃん。無事に仲間たちに会えるのかなあ~~と、私の実体験も重なってドキドキしてしまいました。あの東京駅で待ち合わせなんて、「無謀」だよおお~~って。
(私、この前、迷ってるんです。東京駅。八重洲口の「八重洲ブックセンター」が見つからなくて~~(爆)結局地下街の総合案内で聞きましたけどね。「地上」のブックセンターの場所・・・)

最後まで読んでから、改めて始めの「登場人物から一言」を読むと。その、短いコメントにそれぞれの性格やひととなりが見事に表されていて、もう一回ちょっと楽しめます。
ハードカバー版にはイラストも載っていたとか。そっちも見てみたいな~と気になっています。(図書館かなーやっぱり。)
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「夜のピクニック」

2005年10月21日 21時38分11秒 | ★★恩田陸
恩田 陸 著 新潮社。第26回吉川英治文学新人賞受賞作。


青春小説なんて帯がついてます。そういう分類で分けられると、多分私にとって最大に苦手なカテゴリーのお話。
恩田さんの作品でなければ、この帯を見ただけで私は避けてしまっただろうなあ、、と思ったりします。

が。
こういうのが「青春小説」なんですか?それとも、恩田さんが書くとこうなった、ってことなのかなあ。
気がついたら夢中になってページをめくっておりました。

ストーリーはとても単純。
ある高校の年中最大の行事。「歩行祭」
全行程80キロを、夜を徹して歩き通すという、その行事を淡々と描いた作品です。
まるで、テレビでマラソンを観ているような、そんな感覚がありました。
ひたすら、歩く。歩く。歩く・・・、お話。

中心人物は高校三年生の同級生、西脇融と甲田貴子。
この二人の少々複雑な関係と、歩いている間の移り変わる気持ち。そこに、周りの親友や、クラスメイトや、ハタマタ勘違い娘(苦笑) や、謎の男の子が関わって、登場人物たちの心理描写やまわりの風景の変化、色々な出来事を巧みに描き出す。

歩くこと。
最後は疲れ果てて、ただただゴールを目指して身体を持ち上げること。

その先に彼女ら、彼らが何を見るのか。
その、歩行祭のゴール直前でスパッとこの物語は終わっています。

読みながら、同時に昔の自分も思い出す。恩田さんはよく高校生を描くけれど、多分その描き方が自分のあの時代と重なって、余計に親しみを感じるのかもしれない。
でもそれは、今、現在にも通用する、なんだろう?んー。上手く言い表せないのだけれど、心の中にストンっと自然に入ってくる感じがするのだ。
これを、同世代であった高校時代に読んでいたら、今の私はどうなっていただろう、なんてことをちょっと想像してしまった。

作中、融の親友である戸田忍が口にするせりふ。

「『しまった、タイミング外した』だよ。なんでこの本をもっと昔、小学校の時に読んでおかなかったんだろうって、ものすごく後悔した。せめて中学生でもいい。十代の入口で読んでおくべきだった。そうすればきっと、この本は絶対に大事な本になって、今の自分を作るための何かになってたはずなんだ。」(本文より抜粋)

融にあることを説教しようという話の流れの途中で、ナルニア国物語を読んだ感想を語るその言葉。
ああ、わかるなあ。今の私、後悔てんこ盛りだもんなあ、、。今までの沢山の時間の中で、いったいどのくらい私は出会わずにいる物語があるんだろう。タイミングを外してしまった本があるんだろう、と、本筋とは違うところでも、共感しつつ読み終えた。

恩田作品の中でも、かなり上位に位置する一冊になりそう。もう一度繰り返して読みたくなっている。

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「月の裏側」

2005年09月30日 14時23分32秒 | ★★恩田陸
恩田 陸 著 幻冬舎文庫

私が鳥肌たってしまった「怖い」お話です。
最後まで読んだら、すっかり落ち着いてしまったんですけれど、途中が、ね。
なにしろありそうなお話なだけに・・・・怖い。
ところが、一気にラストに突入すると、それもありかな?と思ってしまって怖さがなくなる。
異常にも、怖さにも、人は慣れてしまう。
作品の中で、中心にいる4人が感じているそのままを、なんだか私も実体験してしまったみたいです。

隣を歩いているその人は、「人間」ですか?

中身が知らないうちに入れ替わる。それを、4人は「盗まれる」と表現しますが。
九州にある架空の水郷都市で起きる、謎の失踪事件。失踪するのは老人ばかりで、一週間ほどすると突然また帰ってくる。その間の記憶が一切ないだけで本人はいたって元気なまま。そんな事件に興味を持ち、関わった新聞記者、自分の弟夫婦が昔その「失踪」をして以来、その謎を追っている元大学教授。そして、教授に呼ばれて街にくる教え子、教授の娘の4人が見つけてしまう、「あれ」の存在。

すべてが「ひとつ」になりたがっている。
人としての種の「多様性」を捨てて、「ひとつ」になりたい時に来ている。

これを進化と呼ぶのか、侵略ととるのか。

表面は何の代わりもない人々なんだけれど、無意識の状態のとき「ひとつ」のおおきなものであることがわかる。
その判り方が。。想像したら怖いんです。怖かったんですねぇ。。。

教授の娘が体験した場面。
朝、コンビニに食料の買出しに出かけた彼女。そこで偶然オートバイと車の交通事故にぶつかる。コンビニに飛び込んできたオートバイをみた、その店内にいた彼女以外のすべての人の反応。
それが

「同時に、手を口のところに持っていってびっくりした表情をしている」

動きのすべてがまったく同じスピードで行われる反応だった。

そして、
教授が弟夫婦を「同じだけれど違う」と思ったのも。
食事仕方が、箸の上げ下げまでまったく同じであったり、窓ガラスにぶつかってきた鳥に驚おたときに、身体の動き方やスピード、表情までがまったく同じであったこと。

別々の固体であれば、いくら申し合わせてもやっぱりどこか「ずれる」のが人間だから、この反応はつまり、無意識のレベルで、たった一つの意識しかないということ。

これは、怖かった。
なにしろ「無意識」の状態を自分ではわかりませんから、もしかしたらすでに自分は「盗まれて」いるかもしれない。でも、意識レベルでは私は私で、他のものではありえず、行動も考えもすべて「私」が判断していると信じているわけで・・・ああー何を言ってるのかわからん~~~~

怖く、ないですか?

後半、一斉に一晩で「盗まれて」いく人々と、その再生される現場を見つけて定点観測を始める4人。そこまで話が進んだら、なんだかその状態に慣れてしまった私。なんでかなーと考えてみると、それはつまり、目の前にどんなにグロテスクでも「再生されるもの」が現れたから、かな。見えない状態のときが、一番恐怖を感じますよね。人は。

このお話、「光の帝国-常野物語-」のなかの、「オセロ・ゲーム」や「草取り」にちょっと似ているな、と思いました。あそこでは「侵略」と捉えているように思いますが、この「月の裏側」では、どこかあきらめて、それも人のこれから先の姿、と捉えているように思います。どっちを先に発表してるのかな?とおもったら「常野」のほうですね。

終わりの解説を読んだら・・
この本、最初ハードカバーで出たときには帯に「郷愁の傑作ホラー」ってコピーが書いてあったそうで・・・
「ホラー」・・・先に言ってよー、そういうことは・・・でも、純粋なホラーとも違うような・・・・・?
ホラーとSF・・ミステリー・・・最近こういう枠組みってなくなってきているように思うのは私だけでしょうか。

なにやら先行して似たSF小説があるそうですが・・なんだろ?
そういえば、「劫尽童女-光文社文庫刊-」は「ファイアスターター」を思い出つつ読んでいたら、あとがきに「『ファイアスターター』プラス七十年代SFを念頭に置いた、一人の少女の成長物語のつもりで書いた。」とおっしゃっているから、この作品にもなにかあるのかな?

先行した作品というのが何だかわからないんですけれど、このお話は非常に怖くておもしろかったです。解説者の人のオススメ通りに先入観のない状態で読んだ私は、そう思います。
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「黄昏の百合の骨」

2005年09月21日 19時43分43秒 | ★★恩田陸
恩田 陸 著 講談社。

「自分が死んでも、水野理瀬が半年以上ここに住まない限り家は処分してはならない」
亡き祖母の奇妙な遺言に従い、「魔女の館」と噂される洋館に、理瀬はやってきた・・・・・。

こんな文言が本の帯についている、そう、これは「麦の海に沈む果実」のその後のお話。
理瀬があの青い丘の学園を去った後、どんな生活を送っているのかがちょっとだけわかる。
そして、「図書室の海」にあった「睡蓮の夢」からも繋がっている「洋館」と二人の兄(というか、本当は従兄弟)のことも。

祖母が最後まで隠していた「ジュピター」の正体をつきとめて、それを誰にも気づかれずに処分することが、多分この奇妙な遺言の正体で、理瀬と従兄弟の兄、稔はそのことを理解している。ふたりは向こう側の暗闇の世界で生きることを決められている子どもたちだから。ただ、従兄弟の下の兄、亘は光の世界を歩ける人間として、彼ら一族の暗い部分を極力伝えられずに今まで来ていて、その疎外感に苦しんでいる。
そこに、祖母の再婚相手の祖父の連れ子である梨南子と梨耶子が絡んできてほんとにもう、理瀬の家庭って大変な状態なんだなあーとしみじみ・・・
青い丘の学園で記憶を取り戻したあとの理瀬は、高校をイギリスに留学し、非常に老成したところのある少女になり、暗闇の世界に入っていく自分をはっきりと自覚しているのだけれど。

今回のお話は、この理瀬の「祖母の謎」ともう1つ、理瀬の高校での友人の謎の二本立て。それが最後にはしっかり繋がりを持つ。
転校生である理瀬(ただし遺言通り半年だけの転校で、謎が解ければすぐにイギリスに戻る予定の彼女だが)と友人になった朋子の動静が、非常に気になるものだった。
自分がかわいい少女であることを自覚し、男子生徒にもてることを当然のことと思っている脇坂朋子。その彼女を好きになり、純粋に付き合ってほしいと望む朋子の幼馴染の勝村雅雪の親友、田丸健一。ところが朋子は理瀬の兄、亘が好きで、遂には健一を理瀬の住む洋館の秘密に関わる場所に落とし、亘が理瀬を愛していると感づいて、理瀬までも自ら手にかけようとする。
けれど、普段の彼女は、病弱な弟の面倒を見ながらファッションや友達、恋人に興味をもつごく普通の高校生なのだ。そして、付きまとわれるのがいやだから健一を自分の目の前から消しただけだ、という程度にしか自分の行動の意味を考えていない。それが、一人の人間を殺してしまうことだということを、彼女は考えていないのだ。
意識していない「悪意」
これは、ある意味、しっかりと意識して暗闇をいく理瀬や稔よりもよっぽど恐ろしく残酷なものなんだ、と、この物語は現している気がする。
どこか、現実の世界にもある、恐怖を感じた。

水野理瀬。すべての自らの行為を理解し、生と死、光と闇の狭間で生きることを運命づけられ、自らもそれを受け容れた少女。
彼女の闇はどこまでひろがっていくのだろう。
「麦の海に沈む果実」の素直に続編の位置づけと考えていいこの作品。
ならば、続きを・・・と、相変わらず貪欲になっている私。かってな想像(妄想?)はどんどん膨らむばかりなのである。
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「黒と茶の幻想」

2005年09月20日 17時18分35秒 | ★★恩田陸
恩田 陸 著 講談社。

「三月は深き紅の淵を」「麦の海に沈む果実」に続くお話。
学生時代の同級生だった利枝子、彰彦、蒔生、節子の4人が、大学卒業から十数年を経てY島に旅に出る。
4日間の島での旅のなかで自分たちの『過去』の闇を見つめ、謎を解き明かす不思議な旅。
彰彦が企画した旅のなか、彼が提案した「美しい謎を考えてくること」という「宿題」が、そのまま4人それぞれの過去の謎につながって、高校時代からの長い長い邂逅になる。そこにかかわる「梶原憂理」
どんな過去が展開されるのか、どんな真実が隠されているのか。
4人がそれぞれの立場で語る過去への邂逅は、それぞれの答えが別々にあって。

それを包み込むY島の大自然。
雄大で厳しくて何もかもを包み隠してしまうような自然。
太古の時代から息づく木々。

「憂理」は「三月~」にも「麦の海~」にも出てくる演劇を目指す少女であり、この物語のなかで、影の主人公でもあるような位置づけ。
利枝子にとっては、一番の親友。
蒔生にとっては、利枝子という恋人の親友であり、気がついたら多分愛していた(んだろうな、彼なりに)女性。
彰彦にとっては、大切な蒔生という親友にとっての「謎の女」であり、節子にとっては危険な女性。

ちょっと苦めのコーヒーを入れて、じっくりと腰を落ち着けて読みたい本だった。
このところ、文庫本を手に取ることが多くて、ハードカバーの本でもここまで厚いものを読んではいなかった。けれど、この「厚さ」がそのまま物語の厚さでもあったので、なんというか、「読み終えたぞ!」って満足感も久々に味わった。
同時に、くたくたにもなったのだが。
「三月~」の関連本は、気楽に読めるものではなくて、私にとってはかなり全力疾走しなくてはいけない内容の作品群なんだけれど、この「黒と茶の幻想」は全力疾走しながら自分の走っている位置を同時にきっちりと確認するコーチ役もしなくちゃいけないような、なんというか、とっても大変な作品だった。
それは多分、自分自身の「過去」も振り返っているようなそんな感覚で読んでいたからなのだろう。

利害関係が一切ない純粋な友人。
学生時代の親友というのは、友達というのは、そうだ。確かに今の自分の背景にある「母親」とか「妻」とか「嫁」とか、「PTA」とか・・そんなややっこしくてめんどくさくって、でももう避けて通ることのできない絡みついてくるもののない、純粋に私自身のみにだけ関わる、かかわってくれる繋がり。そこをまた、思い出させてくれた作品でもある。

最後に。
ここに出てくる「憂理」の印象は。どっちかというと「三月は深き紅の淵に」の第四章に出てくる憂理のイメージかな、と思う。「麦の海に沈む果実」の憂理とはどこかが違うなあ、という印象を受けた。結果がとてもショッキングなものであったけれど、それもまた、「三月」の憂理であれば理解できるかもしれない、と。
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「蒲公英草紙 tanpopo sousi 常野物語」

2005年09月11日 22時24分54秒 | ★★恩田陸
恩田 陸 著 集英社。

常野物語の続編。2冊目の本で、いいんですよね?ほかには「常野」で書いていらっしゃいませんよね?恩田さん。。
最初の本、「光の帝国」の第一話「大きな引き出し」のお話を、今回は大きく膨らませ、時代を変えて描いています。

今よりも少し前の時代。まだ世界が大きな争いをしていた時代の東北の一地方の村。そこのお医者様の家に生まれた峰子が綴った日記。
大きな空襲の末、手元にたった一冊だけ残ったその「蒲公英草紙」と題名をつけた日記から一番光り輝いていた少女時代を思い出すお話。
槇村という村の名家の末娘で、生まれつき心臓が悪くほとんどを家の中ですごしている聡子様に「友達」として峰子が会いに行くようになることから回想が始まります。
非常に聡明な聡子。そして時々とても近寄りがたい雰囲気になる彼女に、「女学校には必ず桜色のおリボンをつけて一緒に参りましょうね」と約束する峰子。それを叶わないことであろうと知りながら、こころから一緒にいきたいと願う聡子。
その二人を中心に、峰子の視点からみた槇村の家の人々と、そこに寄宿している人々の姿を描いて、そしてそこにある日「春田家」の4人家族が尋ねてきます。
そのまま槇村の家に居を置いて、なにやら不思議なことをしだす春田家に、村の人々はいろいろな憶測をするのですが・・・

「大きな引き出し」で語り足りなかったものを、「常野」ではない峰子の視点で描き出す。
それは、生きた人々を『しまう』ことの辛さと覚悟であり、そうしてひっそりと生きていくことを自分の運命として受け容れている春田親子の生き方であり。
大昔、その「常野」から嫁を取り、その嫁が「遠目」(未来を見る力の持ち主)であったことから村が全滅から救われ、以降『村をしっかりと守り、もし常野の者が訪ねてきたら出来うる限りのもてなしをすること』という家訓のある槇村の家。
そこに生まれた聡子は、たぶん「遠目」の力を持ち、あるときから自分の最期を知り、槇村の家のものらしくと小さな子どもたちを台風の鉄砲水と土砂崩れから守り、自らはその鉄砲水のなかに消えていく。

静かに、しずかに。
少し昔の文体で、少し昔の日本は確かにこんな時代だったんだと思い出させてくれつつ、第二次世界大戦が終わった日でお話は終わります。
戦いで夫も娘婿も失った彼女が、疲れ果てて思うのは、「今、光比古さんに会いたい」ということ。彼は春田の下の子で、出会った当時は峰子とおなじ10歳前後の男の子。そして、聡子様を「しまった」人物でもあるのです。彼に今会いたい。そう願う彼女の切なく悲しい気持ちが伝わり、ほんとうに人の思いと心をそのままに「しまって」くれているあの人たちがいるのならば、今のこの時代をどう思うのだろう、と私も考えてしまいます・・・

なんというか、感じたことの半分も表現できていませんが、

とても、とても、大切な物語です。静かに読み進みながら、今の時代になくしてしまった沢山のものを憧れと悲しみをもって思い起こします。
「光の帝国」を読んだ人なら、是非、この作品を!
そうそう。できたらハードカバーで手にとってほしい。装丁もとても素敵ですから。

そしてそして。
切に「続編」を望みます。常野のお話。
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