佐々木 丸美 著 創元推理文庫。
北の海の断崖絶壁に立つ館に住む裕福な未亡人。
その、未亡人のおばの下に長期休暇のたびに集まる従兄弟たち。
子どもの頃から繰り返された習慣が、おばの美しい養女の謎の死によって変わる。
2年後に、再びおばの下に集った従兄弟たち。そこで起こる不可解な出来事とそしてついに起こってしまう悲しい死を解き明かすミステリー小説。
でも、ちょっと推理物とは質を異にしている物語。
実はこの本。「作者の名前」に妙に惹かれて、手に取った。
本屋さんで見たときの、その惹かれ方がとても変だった。
どういう風かって言うと、
「知ってる。この作者の名前を私、知ってる。確かに、知っている気がする。でも、なんだったっけ?いつ出合った名前だったっけ??どんな作品を知っているんだっけ???」
作品名は一切記憶にない。
なのに、作家名のみ周りに何のつながりも無く記憶にある。
普通、読んだことのない作家名に惹かれるときって、贔屓の作家さんが話していたとか、作品の中に出てきたとか、とにかくなにか記憶に残るものが必ずあるはずなのに、、まったっく、無い。
荒野のなかにぽつんと「ささき まるみ」って名前だけがある感じ。
・・・・ここまで私の頭は退化してきてるのか??と、かなりショック・・・・
でも、あまりに強烈に「知っている」って訴える頭の状態に耐えられなくて、結局購入。
それから、「何で知ってるってこんなに思うんだー?」と思いつつぺらぺらとページをめくる。
知らない。私、この作品を読んだことないよ。ううううう~~む・・・・・
作品は、知らない。のに、名前は知ってる。
異常に印象深く知っている・・・・・・
で、徐々に、だんだんに、遠い昔を思い出した。
あれ?この人の名前の入った本って、表紙がパステル調の淡い絵だった気がする。
少女の、姿がなかったっけ?
吹雪のような、でも、鋭い雪ではなくて溶けるような包むような雪の絵がなかったっけ?
ああ、そうだ!
高校時代、弟が読んでいたんじゃない?表紙があまりに少女少女していたので、ちょっとびっくりしたんだ。そーだそーだ、きっとそーだ・・おそらくそーだ・・・たぶん・・・・(・・・ほんとか?本人に確認する勇気はない、ああ、記憶の莫迦
)
不思議なミステリーです。
芸術と哲学を語る高尚な従兄弟たち。
静かに進む日々のなかに潜む悪意。
恋と愛と、憎しみと妬み。信頼と裏切り。生と死。
心の機微が語られつつ、血なまぐさい犯罪が同居する、不思議な物語。
じっくりと、腰をすえて読みました。
むさぼるように読む本ではない。
ちょっと距離を置きつつ丁寧に、丁寧に読んで味わえる作品のようです。
こういう作品は久々だな。ちょっといいなって思います。
続編買います。どんな物語が続くのか、ちょっと楽しみです。