宮部 みゆき 著 新潮文庫。
微妙にネタバレがあります。ので、以下読む際はお気をつけくださいませ。
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「火車」(かしゃ)・・・ 火がもえている車。生前に悪事をした亡者をのせて地獄に運ぶという。ひのくるま。(本文初めより引用)
そういう、お話。
足を負傷して休職中の刑事が、高飛車な親戚から持ち込まれた「人探し」
それが、ラストは目に見えないところで行おうと意図された「犯罪」を追うことになる。
一人の人物を探すはずが、対象が違う人物であることに気づいた時から、話はどんどん複雑になる。
そして、一人の人の半生を調べることになる刑事。
組み立てられたその人の半生は、果たして合っているのか。そこに隠された真実は果たしてどうなのか。
それをこれから確認するであろうというところで話は終わる。
世の中が便利になっていく影で、零れ落ちていく人々がいる。
見えない「お金」のために、最後は落ちるところまで落ちてしまう人がいる。
それでも「救いの手」が差し伸べられた人はいいのだが、そうでなかった人々は、家族を巻き込んでその転がり落ちるスピードを止めることができなくなる。
今は、あまりこういう「破産」は話題にならないけれど、実態はどうなのだろう。不勉強でその辺りはよくわからないけれど、こんな人生を歩まざるを得ないほどに追い詰められることが、過去は確かにあったのだ。そういう、「ほんものの社会」もこの話は描き出していて、それがとてもリアルだった。推理小説というよりも社会小説だ、という解説者の話に納得できるリアルさ。
刑事が追う人物は、こうせざるを得なかった最初の事情は本人の責任ではないのだ。家のローンの支払いができなくて追い詰められる父親に巻き込まれてしまった家族だから。。たまたま、そこに生まれたがための悲劇。
だが、途中からは。確かに途中からは本人が選び取った道。
人をひとり抹殺し、、いや、それまでの自分をも抹殺して、新しい人生を歩もうとする。そこまで追い詰められた人間というのは、その心の中はどうなっているのだろう。
追っていた刑事と一緒に、「聞きたい」と思った。
ほんとうの、この人の人生を。その気持ちを。心を・・・
一度つかみかけた「幸せ」を手放さざるを得なかった事情。それがあまりにも悲しかった。相手に「浅ましい」と感じさせてしまった言葉。それでもそれが、本心この人のその時の気持ちであったのだ、と想像できてしまったから。
少し前、東野圭吾の「白夜行」とこの「火車」の内容が似ている・・というようなレビューを読んだ。
うーん、、、私の感覚はちょっと違う。
ああ、「白夜行」は男性作家の作品で、「火車」は女性作家の作品だなあ・・・と、感じている。男性の視点と女性の視点。それはきっと、自ずから異なるものだから。
なので、気持ちの面で寄り添いやすかったのは、、やっぱり私は女だから。。こちらの作品。
人の人生を描き出すという点でこの2作品は「似ている」のかな、とも思うけれど、どこか根底が「違う」気もまたするのです。言葉に出来ないけれど、ね。
また2冊。買い足してしまった。「宮部みゆきの本」
さあ、どうしよう。。。ツボにハマッた予感・・・
っと、その前に、梨木さんを読むじゃ~~~