のんびりぽつぽつ

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もいちど あなたに あいたいな

2010年02月03日 21時39分20秒 | ★★新井素子
新井 素子 著 新潮社。

7年ぶりの長編新刊。
待って待って・・待ち続けて。

手にした途端に怖気づいて読み始めるのに時間がかかり、
でも、読み出したら結局一気にラストまで突っ走るのは、、
良く判ってたことだけど、

ああ、新刊読み終わってしまった。。。



ネタバレです。ご注意を!!


では、いきます。


澪湖、大介、陽湖。そして和(やまと)・・・やまとばちゃん。木塚くん。
慣れ親しんだ文体で、進む物語。
最初、かなり辛かった。
幼子の死というきっかけ、和さんの生い立ち。
これでもかって負の感情を(心の中で)たたきつける陽湖・・・

それが、木塚くんが出てきてくれて、ふっと肩の荷が下りたように感じちゃったのはナゼだろう。

ずっと目の前にいる人は変わらない。
変わらないのだけれど、違う。
違うけれどその人はその人。

澪湖の感じた「違う」という感覚が、精神的な物かと思ったら、
木塚くんが出てきた途端に、一気にSFに変わってしまった。
大仰な設定ではない、日常に潜む、SFの物語。
そこがものすごく驚いて、そしてなぜかほっとして。

私も基礎教養ありますわ~なんて笑えて。

気付いたら涙が止まらなくなっていた。
泣いていることに始め気付かないくらい、物語に入り込んでいて、
ハッとしたら涙が零れだしていた。

やまとばちゃんと木塚くんの情景がとてもやさしい。
哀しくて、やさしい。


いま、目の前にいる人は、ずっと一緒の時間を過ごした人なのか?
いま、ここにいる自分は、ずっとこの時間を生きている自分なのか?


もいちど あなたに   あいたいな


切なくて悲しくて苦しくて怖くて。
そして、「今」を生きることを哀しく切なく、やさしく見つめる物語。

やまとばちゃんの恐怖を思い、辛さを感じ。
置いていかれる澪湖の哀しさを思い、
今の一瞬を愛おしく思う、物語。

残酷さ、身勝手さを容赦なく描くのだけれど、それでもその先にやさしさのある、新井素子の世界。
慣れ親しんできた世界に久しぶりに身を置いて。

しばらく、余韻に浸っていたい私がいる。
この私は、今、この時に読み終わった私、だよね?なんて思いつつ・・・・。
コメント (4)
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