のんびりぽつぽつ

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蜩ノ記

2012年11月26日 08時40分30秒 | ☆本☆
葉室 麟 著
祥伝社


図書館で随分前に予約をして、漸く手にした一冊。
直木賞受賞作品。

日頃、「受賞作品」という選択肢は私の中には全くなかったりいたします。
実はこの本も直木賞とは無関係。
本屋さんでの紹介文とこの表紙とタイトルに惹かれて心に留め、その後直木賞受賞になって図書館予約待ちがえらいことに…(笑)
気長~~~に待って読み始めた作品は、期待を裏切らないものだった。
直木賞、納得です。


戸田秋谷の武士としての覚悟。
檀野庄三郎の武士としての覚悟。
戸田の家族のそれぞれの夫、父親に対する覚悟。

そして住まいする村での農民たちの覚悟。

様々な人々のそれぞれの立場での覚悟が描かれて
それがまた、淡々と静かに進む物語の中に力強く息づく。


秋谷の覚悟の生き方を感じながら、
武士って「武士らしく生きる」ということはつまり、誰のために命をかけて誰のために死ぬのか、でもあるのだなと、思う。


武士ってなんて不器用だろう。
まっすぐに生きることはなんて生きづらいことなのだろう。
「道」を貫こうとしたとき、それは周りの人々も巻き込んで。
時にそれは生の方向だけでなく負の方向にも働きながら
それでも曲げることのできない「決めた道」を歩み続ける。


戸田秋谷という人物の10年という与えられた「生きる時間」のなかの、最後3年ほどが静かに描かれながら
それぞれの階層の人々の様々な覚悟と生き様が伝わってくる。

文庫になったら手元に置きたい。図書館に返す前にもう一回読んでおきたい。
心に染み入る物語。



そして。
この世界は本当に時代も立場も内容も全く違うのだけれど「武士の本分」を貫いて生きるという一点において「薄桜記」と重なる。
あるいはひとりの女性のために命を捨てる。。。そんな生き方までが重なって勝手に更に切なくなっていた。

ああ、武士らしいって不器用の塊だ!
(そしてどうしようもなくこの生き方を愛おしいとも思う)
コメント (2)
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