ピアノ・トリオの最高傑作、『ワルツ・フォー・デビー』(ビル・エヴァンス・トリオ)
エレガントでセンシティブ、内省的な楽想などから、エヴァンスはジャズではないと断言する人も少なくない。発祥もその後の展開もジャズの本質は黒人音楽。白人であることを根拠に、エヴァンスのはジャズはない、と決め込んでいるのかしら。
半世紀も前、渋谷の駅近く、宮益坂を下った先の突き当たりに《エヴァンス》というジャズ喫茶があった。その名の通り、マスターがエヴァンス狂で、エヴァンスのレコードしか置いていない。そんな店で、ジャズか否かを口角泡を飛ばしていたのだから、若かった。
曲名にあるデビーはエヴァンスの2歳の姪の名。イントロはワルツのテンポで可愛らしく、すぐにフォー・ビートに変わる。この演奏を歴史に残したのは、スコット・ラファロのランニング・ベース。このレコーディングの11日後、交通事故で夭折した。享年25歳。エヴァンスは半年間に渡り失意のどん底に沈んだ。
夜明け間近の高層マンションの最上階。開け放たれた窓を微風が吹き抜ける。こんなシチュエイションでエヴァンスが聴けたら最高だろうな。
【動画ワルツ・フォー・デビー】真正のビル・エヴァンス・トリオ