著者 石原慎太郎
出版 幻冬舎文庫
頁数 222頁
初版 2016年1月
2016年発売のベスト・ワン。年間90万部が売れた。なぜ石原慎太郎が田中角栄を書いたのかに興味があって、文庫になるのを待って読んでみた。
慎太郎が、角栄の立場で自分史を書いているのだが、読む方にとっては不思議な感覚。あくまで小説(フィクション)でありながら、事実に沿って進行する。圧巻はロッキード裁判と創誠会発足の下りか。
著者自身による、”長い後書き”と氏に一人称書き小説化を進めた森元孝(早大教授)による ”解説”で、上梓の意図がよく判る。
角栄は、アメリカに頼らない資源外交に突き進んだためにメジャーの虎の尾を踏み、姦計に嵌められた。アメリカの国策によって葬りさられた。未曾有の天才、紛れもない愛国者の存在の歴史的事実を改竄してならない、と言うのが慎太郎の意図のようだ。「アメリカにNO!と言え」と我が国民に檄を飛ばしてきた主義主張と軌を一にする作品であろう。