著者 麻生 幾
出版 幻冬舎文庫
頁数 499頁
友人からこの本を薦められ著名を聞いた時は、一瞬、官公庁の出す年次報告書いわゆる白書の類と思ったのだった。「”アンダーカバー”とサブタイトルを付けるとは、近頃の役所はやるもんだわい」とも。
アマゾンで検索したところで小説であることを知る。この著者なら面白さ・迫力は請け合いだろうと俄然読む気になる。
これまで公安調査庁に抱いてきたイメージは、戦時中の特高。左翼の政党や団体・学生運動組織に対して人脈とカネと情報を巧みにしての監視・取り締まりをする隠密の国家機関。スパイ、盗聴、尾行、酒、煙草、裏切りが日常の世界。ところがこの小説の主人公は独身女性。男の世界に女を置いた。これが面白かった最大の要素かな。
冒頭は、中国系の男とどちらも尾行を撒きながら会うシーン。アウディS5、溜池交差点、アイボリーのノースリーブ・ブラウス、スタイリッシュな屋上ビアガーデン、美しい白髪の男、バラの花束etc.。さしづめ映画のプロローグのよう。
芳野綾37歳、ノンキャリア。上席調査官を経、今は本庁の分析官。組織での生き方をよく理解しており想像力が豊か。言うべきことは言う。自分自身の考えを持つ。落ち込むことはあっても諦めない。
描かれているのは、尖閣諸島周辺の領海侵入する中国公船・漁船団の出撃を巡るインテリジェンスの現在。公安調査庁の組織や仕事の実態を知ることが出来、実に興味深い。危機管理と閣議の機能や海上自衛隊との連携なども普段目にしている新聞などでは知りえないだけに納得がいく。
これは、時を待たずに映画になるのではないか。それほど面白い。結構ハードな政治アクション(そんなジャンルあったっけ)になる。
芳野綾はどの女優が相応しいか。キャスティングを試みた。柴咲コウでどうかな。
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