著 者 浅田次 郎
出版社 中央公論新社
初 版 2020年3月10日 上巻371頁 下巻294頁
ロード・ムービーならぬロード・ノヴェル。
江戸から蝦夷地へ流される旗本三千石の姦通罪人青山玄蕃とその押送人に選ばれた十九歳の見習与力・石川乙次郎の奥州街道の道記中である。
旅の北上につれて、二人が行きかう人々とのやり取りを通して、当時の市井の生活や貧富、喜怒哀楽が伝わってくる。宿の女将、豪商の丁稚見習い、大泥棒、敵討ち、人情代官などだ。旗本三千石と見習い与力、二人の像も次第に明らかにされてゆく。
武士とは何か、武士道か、日本精神とはなにか、近年著者が問い続けるテーマに一直線であることに気付く。
本の最後、つまり物語の最後で玄蕃は、問わず語りに言う。
「俺はのう、乙次郎。われら武士はその存在自体が理不尽であり、罪ですらあろうと思うたのだ」
以下188頁11行目から290頁4行目までの玄蕃の述懐が、著者の言わんとするところであり、作品の肝と言えるのだろう。7月にアップした『五郎治殿御始末』に共通する。重い。
重い。重かった。久方ぶりのハードカヴァー2分冊。本の本来の手触りを味わった。
実は通販で文庫を注文した。ところが届いたのハード・カヴァー。間違えて頼んでしまったのだった。
現役勤め人を降りて以来、買う本は基本文庫と決めて来た。初版が2020年、最近はこんなに早く文庫化するのかと定価で選んで注文したのが誤りの因。上下巻とも新刊は1,870円。それが上巻320円下巻150円だったのだ。
新刊上下合本は3,740円。それを送料・手数料込みで上下1,147円で買ったという次第。これで商売が成り立っているとは・・・・。今の流通こうなってるんだ、学習しました。
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