畏友が逝いて2ヶ月。現今の長寿国日本にあっては、実に急ぎ過ぎの生涯ではあった。
社会も人も精神も萎み続ける昨今の日本。もうしばらくはその中に身を置いて貰いたかった。そして何を見てどう動いて如何に変えたか、彼のその軌跡を目の当たりにしたかった。
七七日を終えて、夫人がお世話になった方々に認めた感謝状に添えられた歌である。
結婚後多忙ゆえ共に過ごす時間が必ずしも多くはなかった二人の、学生時代の至極の場所・紀尾井坂。青春と哀切と慕情を鮮やかに切り取っている。
呑むほどに酔うほどにカラオケより議論。その彼が初めて歌ったのは『黒の舟歌』。
「これ知っている?」 「面白いから読んでみる?」 と渡されたのが分厚い斎藤龍鳳の『なにが粋かよ』。
太宰治の情死をイメージした「武蔵野情話」が収録されたみなみらんぼうの『途上にて』も彼から知った。想い出は尽きない。
息を引きとる直前の未明に、携帯で連絡を取ろうとしたらしいと夫人。結果、果たせなかった。不実を詫びるしかない。一体、彼は何を語ろうとしたのだろうか。
「先に行くから・・・」、「やりたいことは全部やった・・・」、「ちょっと早すぎたかな・・・」?果たして。
合掌。