処遊楽

人生は泣き笑い。山あり谷あり海もある。愛して憎んで会って別れて我が人生。
力一杯生きよう。
衆生所遊楽。

ルーズベルトの開戦責任

2019-12-04 11:46:31 | 

著者 ハミルトン・フィッシュ

訳者 渡辺 惣樹

出版 草思社文庫

 

 

        

フランクリン・ルーズベルトと言えば、ニューディール政策。これによって、アメリカを強大な国へと導いた偉大な大統領と教わったし、そのイメージは今までずっと変わらないで来た。それは間違いだというルーズベルト告発の本である。

ニューディールは失敗だった。その挽回をすべくルーズベルトが打った手が、アメリカのヨーロッパ戦線への参戦であり、日本を開戦に追い込むことだった。そしてそれは見事成功した。

著者は同時代の共和党所属下院議員のハミルトン・フィッシュ。彼は元来、外国での戦争にアメリカが参戦することに反対の非干渉主義者だったが、日本の真珠湾攻撃を機に対日戦争容認派に転じ、ルーズベルトを擁護し対日戦線布告を支持する演説をしたのだった。名演説と言われた。これによりヨーロッパの戦争はアメリカとアジアを巻き込んだ世界大戦になったのである。

大戦勝利の直前1944年4月ルーズベルトは脳卒中で死去する。終戦後、ハル・ノートなどにより、彼の対日外交の詳細が判明し、フィッシュは、対日戦の本質が、窮鼠(日本)に猫をかませた(=真珠湾攻撃)のはルーズベルトだったことを知る。

        

     フランクリン・ルーズベルト       ハミルトン・フィッシュ

 

戦後の研究でルーズベルト外交の陰惨さが明らかになるにつけ、彼の怒りは日に日に増した。その怒りを公表したのがこの著作である。上梓は1976年。真珠湾から35年、ルーズベルトの死から31年、フィッシュ87歳であった。このタイムラグは、大戦後の国際情勢、すなわち母国アメリカが世界の各地で共産主義と対峙している事実と自国大統領の失敗を糾弾できないというフィッシュの見識の上に立った辛抱だったのだろう。

終章では、ドイツ降伏の報を受けたローマ法王ピウス12世のラジオ演説を引用し、続けてこう記す。「我が国憲法は人類最高の英知の結晶である。自由の理念が保証され、自由であることを謳歌出来る国である。宗教や民族で差別を受けない。それがアメリカである。その精神を微塵たりとも毀損してはならない」と。なんと格調高く誇り高いことか。

実に読み応えのある本だった。その因の一つは渡辺惣樹の訳にある。上手い。ウィキペディアは彼を《日本の歴史評論家》と分類しているが、一級のアメリカ近現代史家とも言えるだろう。山本七平賞奨励賞を受賞している。

本書の原題は『FDRThe Other Side of the Coin』。コインの表側『正史』に対するコインの裏側『外史』の意である。一方この草思社文庫版のタイトルは『ルーズベルトの開戦責任』。ちょっと直截過ぎないか。日本の読者に真実を知らせたいとの思いがそうさせたものだろうが。私なら、正題『ルーズベルトの犯罪』副題『アメリカを戦争に巻き込んだ男』としたいところ。

最後に、本書を教えて戴いたのはラスベガス在住の日本人ミュージシャンのノブヤス・ウルシヤマさん!!素晴らしい良書でした。トランプ・ニュースにうんざりの毎日。本来のアメリカの精神に触れて希望が蘇って来ました。勇気と力が湧きました。有難うございました。

 

 

 


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