著者 佐々木譲
出版 文春文庫
解説 川本三郎
349頁
2010年の新宿荒木町が舞台の警察物。二人の刑事と元刑事が15年前の未解決事件を追う物語。
佐々木譲を初めて読んだのは、『エトロフ発緊急電』。32年も前になる。三代にわたる警察家族のシリーズも読んだかな。
私の勤め先は、40年間がJR駅でいえば信濃町、その後の10年が四ツ谷と市ヶ谷。ともに荒木町の至近である。のみならず、まさにここの料理屋や酒場に出入りをして対外的な仕事にあたって来た。金融筋、メディア、学者、役人など。その半生を知る友人が、この本を教えて呉れたのだった。
町の区画や形状、坂の上り下り、軒下を抜けて歩く狭い路地、往時の名残を感じる店や民家の佇まい、谷底の静謐など、懐かしい情景と臭いが立ち上がって来た。コロナ禍の充実したひとときであった。薦めてくれた友人に感謝である。
最盛期、花街としての荒木町に150人からの芸者が居たというから驚きだ。この小説の時代は盛りを過ぎたあたりか。川本三郎が解説に次のように書いている。「荒木町は都心の飲食街でありながらどこか隠れ里のようなひっそりとした落ち着きが今もある。路地が多い。石畳の坂がある。崖がある。崖下には池がある。芸者はもういなくなったが、花街の残り香が漂っている。神楽坂に似ているが、あの町ほどにぎやかではない。国民的人気俳優がお忍びで来たというのも、この町が、ひそやかな隠れ里だからだろう」と。
私の時代は、それでも微かな往時の名残が感じられたが、さて今はどうだろう。コロナの直撃を受けて一変してしまったろうか。時々顔を出していた馴染の店は、ランチだけになっていたが・・。ワクチン終えたら訪ねてみよう。
例によって映画になった時の配役遊び。
しかし、この二人、この種の刑事物では珍しく呼吸が合っている。違和感とか不安定感が無い。スッキリ気持ちがいい。
刑事(警部補) 柄本 佑 元刑事(相談員)三浦 友和
シリーズの自作品『代官山コールドケース』も読んでみようか。
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