太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

魂にすりこまれた言葉

2020-10-22 09:04:36 | 日記
折に触れ、ふと思い出して勇気づけられる言葉がきっと誰にでもあると思う。
私の場合、エライ人の言葉だとか、尊敬していた恩師の言葉、では、まったくない。
それは、なんでもないような時に、身近な人から言われたことばかり。



私が父の会社で事務をしていたとき。
典型的な同族会社で、身内が働くということは気骨が折れる。
他人より多く働いて、割のあわないぐらいでちょうどいい。
と私は勝手に信じていた。

みんなそうなんだろうと思っていたけど、現在、ハワイで働いているところも同族会社なんだが、
身内の人たちは、けっこうやりたい放題。
私も変なふうに自分を縛らず、自由にやったらよかったと思う。


さて、その時は一生懸命に自分を縛って、あれもこれも背負いこんでフウフウしていた。
あまりにそれがキツくて、経理をやっていた母に愚痴をこぼした。
私の愚痴をジッと聞いていた母は、ぽそりと言った。

「無理しなさんな。アンタはアンタが思うほど良い人じゃないんだから」

ええー!!っと最初は思い、そしてプスーっと力が抜けた。
ああそうか、私それほど良い人じゃないんだよなあ、と思ったら
自分が無理して背負っていることがアホらしく思えてきた。
その後も、私は苦しくなると、その言葉を思い出して息を抜く。



離婚して、やたらと若い相手と恋愛してのろけていた私が、2年後に見事に振られ、
半年後に今の夫と再婚することになったとき、妹が溜息と共に言った。

「シロちゃんって、あっと言うようなことをいつもやるけど、何か知らないケドいつも何とかなっちゃうんだよね」

その言葉は、そのまま私の心にストライク。
最初の結婚相手とも、長年すったもんだした挙句の結婚であったし、
普通に出会って普通に結婚して普通に子供を産んだ妹には、私の生き方はめまぐるしいものに見えただろう。

その後、「ひえーッ!!!!!😱」ということは何度もあったが、
そのたびに妹に言われた言葉を思い出し、
「今はこう見えても、何とかなっちゃうんだったよな」
と、気が楽になれた。



ただし、身近な人の言葉はプラスのことばかりじゃないのも確か。
特に母に言われた、あんなこと、こんなことは、
今でも心に刺さった小さな棘のように、思い出してはチクリとすることがある。
本人は言ったことすら忘れているだろうが、きっとそれはお互いさまだろう。


近いからこそ、許せること、許せないこと。
その許せないことは、たぶん、私がそれを許せるようになるために起きたこと。
あるいは、私が許せないのを、相手が許すため。
相手が許せないのを、私が許すため。

子供の時分に母親を亡くした母が、
母親という重い役目を、母なりに一生懸命にやってきたように
私も、なぜだか世間の型からズレてしまう娘という役を、必死にやってきた。
母は家から目と鼻の先のグループホームで、とても温かい人達に囲まれて過ごしている。
家にいれば、姉との衝突は避けられず、その愚痴を聞く私の心は痛くなる。

今、ようやく母は、母親という役を降りて平和に暮らしているのだと思う。