何日も机の上に放っておいたものを、ふと、これは失くすと困るからしまっておこう、と思う。
いざ、それが必要なときに、どこにしまったのか思い出せなくて焦る。
こんなことなら、常に見える机の上に放ったままのほうがよかった。
たまに、そういうことがある。
そそっかしくて思慮に欠けるのが私であって、今に始まったことではない。
人の名前が覚えられないのも、名前と顔が一致しないのも昔からそうだった。
でも最近、そういうことがあると、ほんの少しだけ不安がよぎる。
(これって、認知症などの初期サイン・・・?)
それを夫に言うと、
「違うよ、やめてよ!前からそうだったし、たいしたことじゃないじゃん!」
と言うが、ムキになって言うところがおかしい、などと思う。
その昔、同年代の友人らと
「私が若作りしてイタイ恰好してたら、言ってね」
「わかった、私こそ、言ってよね」
と言い合っていたものだった。
その時には本当にそう思っていたのだけれども、実際には、たとえ待ち合わせにやってきた友人がイタイ服装であっても、とても言えたものではないし、
私も、指摘されるのは御免で、見逃してほしいと思う。
そう言い合っていた時、私たちはまだ30代後半ぐらいで、ほんとうの若作りの気持ちなどわからないほど若かったのだ。
今、同年代の友人と、
「なんだか記憶にムラがあるんだよね、最近」
「わかるわかる。ちょっと不安になるけど、考えないようにしてる」
なんて話をするが、
「私がおかしな言動や行動してたら、言ってね」
「わかった、私こそ、言ってよね」
という話には絶対にならない。
指摘して治るものでなし、あまりに深刻すぎて、言えるわけがない。
若作りぐらい、なによ。
好きなだけ若作りして楽しめばいいじゃないか。
私がハワイに住んでいるから言えるのかもしれないけど、人の目なんか気にして好きな恰好ができないなんてつまらない。
世間に後ろ指をさされないようにしたとしても、その世間が私を幸せにしてくれるわけじゃなく、私を幸せにできるのは私だけ。
若作りがどうこうと言っている場合ではない場所に、私はすでに立っているのである。