太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

38年前のワンピース

2022-07-16 13:28:08 | 日記
夫と二人で、とりつかれたように断捨離して、家中の空気がガラリと変わった。
使うものだけで暮らすというシンプルなことが、こんなに気持ちがいいことだとは。

洋服のクロゼットは、2回に分けて見直した。
断捨離も段階を組んでやると、さらに物のシェイプアップになるみたい。
もう何回もの過去の断捨離の網をくぐりぬけてきた服も、いよいよ今回で手放すことにしたものが多い。

母からもらった服。
思い入れはあるけど、どう考えても着ないと思う。かといって処分もできず10年以上も箪笥の肥やし。
このたび、思い切って、2着だけ残して寄付した。
母が亡くなったあとで、姉妹が形見分けの一部で送ってくれたブラウス類は、残した。
独身の頃に、母が得意の洋裁で作ってくれたスカートは、たまに穿くし、手作りだからこれは手放さない。

寒がりのシュートメがクリスマスなどにくれた、薄手のダウン風のベストや、いかにもクリスマスというにぎやかな長袖セーターは、1度も着る機会がないけど手放すのは悪い気がしていたが、これらも寄付。

冬に日本に行った時用にとっておいたセーター類の中の、タートルネックのものや厚手のものは手放した。
日本に行くと、外は寒いが電車の中などは暖かいので、タートルネックのセーターだと汗ばむほど。
暖かいジャケットがあれば、薄いセーターのほうが過ごしやすいのだ。


そして、これも何度も断捨離の網をくぐりぬけてきたワンピース。

前身ごろに飾りボタンがある、ストンとしたワンピース。
これは姉のもので、美大時代に東京で私が姉と一緒に暮らしていた時代のもの。
姉が私にくれたのか、私が勝手にもらってきたのかは忘れた。
ハワイでは1度も着ていないが、夏の絽の着物みたいな薄い、しゃりっとした生地とデザインが好きで、残してきた。
今回迷った末、洗って、1度着て、それから考えようと思った。
これを着て、ギャラリーの作品補充などに出かけてみたら、着心地も悪くないし、意外と涼しいので、ほぼ普段着として着ることにした。

姉に写真を送って、このワンピース覚えてる?と聞いてみた。

「え。これ、私の?ほんと?覚えてないナア。好きなタイプではあるけど・・」

そんなものか。
38年の歳月を経て、まだ現役で着ることができる。不要なものをどんどん処分するのも大事だけど、こういうのも、いい。
姉は姉で、母が亡くなったあとの両親の居住場所(二世帯住宅の1階部分)の断捨離を、もう何か月もかけてやっている。
特に母は捨てられない人であり、姉の苦労が偲ばれる。
父のアトリエに残された、何百枚もの油絵のキャンバス。
着道楽だった母の、大量の洋服。
2人暮らしには多すぎる食器。

「何を撮りたかったのかわからない、まったく同じように見える風景写真が何百枚ってあるんだよ・・・・目的がかろうじてわかるものだけ残した」

父は油絵にするために、いろんな風景を写真に撮っていたのだろう。
姉とひとしきり、断捨離の話をしていたとき、姉が言った。


「お母さんは使えるものを捨てられない人だったけど、さばさば系の私にだってそういう呵責はある。
でも、そうやって残したらまた誰かが大変な思いをしなくちゃならないから、頑張って捨てるのよ。
ただ、思い入れのあるものは、とりあえず時を待ったほうがいいね。なんとなく残してある、じゃなくて、残す理由がちゃんとあればいい


手放す理由。
残す理由。
私が10年かけて、母からもらった服のいくつかを手放す準備ができたように、手放すにもタイミングがある。

「おかあさんにもらったこの服、好きだけど着ないから、誰か欲しい人にあげるね。ありがとうね」

そう心で言いながら、寄付用のコンテナに服を入れた。
母はさっぱりした性格だったから、怒りはしないだろう。

38年ぶりに復活した黒いワンピースを、この夏はたくさん着ようと思う。