落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

リリイ・シュシュのすべて

2001年12月25日 | movie
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一時期の「岩井フィーバー」も去り、日本の景気が傾くと同時に映画界もしょっぱくなり、フワフワした夢物語ばっかり撮っていた美形監督がさぁ何を撮るのかなーと待っていたら「イジメ」。「イジメ」かよ(by三村)。

さて観たところ期待は裏切られませんでした。
非常によく出来ています。
完成度はばっちりです。
あれだけの人数のガキどもをよくまとめあげた、それだけでも凄いですがそれ以上のこともがっつりやってくれてます。
しかしこの作品はこれまでの「画」に頼った映画づくりとは一線を画して、非常に「物語」「言葉」が練り込まれてます。いや、画の方も凄いよ。凄いんだけども。
映画の軸、魂、その部分の熱にこれまでに岩井作品よりずっと強い、キツく厳しいものが感じられました。
同時に“今”と云う時代のつかみ方もずっと強烈な感じがしました。
まぁ題材が題材だからかもしれませんが。
私はこの作品を観た教育者の立場の方の感想が聞きたいですね。そこの、教育者に対する描写がホントめちゃめちゃ寒かったんで。寒すぎて監督が怖くなるくらい。マジっすか監督…みたいな。

物語の中で気になったのが詩織と云う少女が援助交際を強要された挙げ句自殺する、と云うエピソード。
これはイケてなかったです。とりあえず設定が乱暴だと思った。
大体この映画は全体に凡庸な安直なエピソードを緻密に繊細に積み重ねてリアルな空気を醸そうとしてるんだけど、それにしても他のエピソードと比べてこのエピソードだけヘンに作為的と云うか、飛び抜けてリアルさを欠いている気がして仕方がなかったです。なにしろ彼女が見るからに援助交際してそうな風なのが大失敗。
インタビューで監督自身が述べているように、実際に援交してる子はこんな風に悲愴じゃないし、イジメの方法として援助交際を強要する、ってのがよく分からない。イジメって遊びの延長だからねえ。
あれくらいの年齢の頃にちょうど猛烈イジメられっ子だった筆者にはどうも納得がいかないエピソードではありました。

全体通して「だから何が云いたいのよ」的な不明瞭さは否めないんだけど、それはそれとしてなにか茫漠とした絶望感、未来に対する漠然とした恐怖感のような感情はよく伝わってくるなと思いました。
そこに、“今”と云う時代をぎゅっとつかんでるなと云う感じを受けました。
それとやはりこれは贅沢なのかもしれないけど、あそこまで変貌してしまった星野の心情がもっと分かりたかったかもしれない。
そんなもの絶対に分からないんだよと云われてしまえばそれまでだけど、彼を駆り立てた恐怖感、絶望感は感じる事が出来たのに、同級生たちをひたすらに陥れいたぶり傷つけながら彼が一体何を感じていたのか、何を求めていたのかは「元イジメられっ子」としてとても知りたかった。

正直云って、音楽はあんまり・・・でした。どの曲も聴いた事あるような、何かに似てて、それがすっごい気になりましたね。
ドビュッシーの曲はいんだけど、それ以外は・・・。
あとチャット画面でパタパタ画面が暗くなったり明るくなったりするの、スゴイ目が疲れました。作品そのものも長かったし(2時間26分)。
編集はすっごく頑張ったんでしょうね。それは見てて感じました。苦労の後が如実に感じられました。
『打上げ花火、下から見るか、横から見るか』でひたすらノスタルジックな夏の一日をポエジーに描いたのと同じ監督の作品、と思うと感慨深い一作と云えましょー。