落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

カリフォルニアのりぼん

2006年03月31日 | movie
『恋のからさわぎ』
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シェイクスピアの『じゃじゃ馬ならし』を下敷きにした学園ラブコメディ。
キャメロン(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は転校先で人気者の美少女ビアンカ(ラリッサ・オレイニク)に一目惚れするが、彼女は同じ学校のモデル・ジョーイ(アンドリュー・キーガン)に憧れている。厳格な父親(ラリー・ミラー)が出した「偏屈者の姉キャット(ジュリア・スタイルズ)がデートすればビアンカもデートOK」という条件を知ったキャメロンは、ジョーイをまるめこんで学校一の問題児と噂されるパトリック(ヒース・レジャー)を雇いキャットを誘う計画を考えだす。
ヒース・レジャーのハリウッド初主演作とゆーことで観てみましたが、コレ実際には群像劇ですね。おもしろかったです。人物描写がモロにマンガっぽくって、気軽に楽しめるティーン向けの娯楽映画としてはよくまとまってるしいい出来だと思う。みれてよかった。アメリカで大ヒットしたってのもわかる。日本じゃビデオスルーだけど(汗)。DVDは未発売。
まあでも手放しでサイコー!とまで喜べるほどぐりは若くないんで、正直中盤ビミョーにダレましたがー。せっかくなのでもっと毒気をきかせるのか、オシャレにするのか、音楽を前面に出すのか、何かもうひとつ世界観に個性があってもよかったのでは。

しかし!しかし19歳のヒースはカワイイ。カワイイったって既に高校生にはまるで見えないけど、それでもやっぱり初々しい。ニカッと笑った顔なんかは今みると若いころのクリスチャン・スレーターになんとなく似てる。
演じる役柄は学校でもちょっと浮いてるアウトサイダー。ワイルドでミステリアスでクール(笑)、昔の少女マンガに出てきそうなぬるーい不良少年です。初めは純粋にお金と好奇心でヒロインに近づくんだけど、彼女を知るうちにだんだん本気になってきて、気をひくためにいろんなことをやり始める。行く先々をつけまわしてみたり、ブラスバンドの伴奏で歌ったり踊ったりとか(爆)。キスシーンももちろんアリ。デートでペイントボールをぶつけあうゲームをやるシーンなんかすっごく楽しそうで微笑ましい。アイドルだあ。とはいってもただただ自信満々なオレ様高校生とゆーワケでもなく、実はちょっぴり繊細だったりロマンチストだったりもして、演技の見せどころもちゃんとあるです。
こういうのみると日本だってアメリカだってアイドル映画の内容って基本的におんなじなんだなと思い。つうか日本のアイドル映画がアメリカのアイドル映画のコピーなのか。80年代のりぼんとかの世界そのまんま、背中がカユくなるようなくすぐったさもいっしょです。懐かしやー。逆にこんな映画がたった7年前につくられてたってのも驚きだ。ハリウッドって深いですー。
主役のジュリア・スタイルズはぐりは全然知らない人なんだけど、美人ではないけどコケティッシュで雰囲気ありますよね。演技もうまい。クライマックスの朗読シーンは圧巻でした。

ところでこの前からちょっと気になってたんだけど、ヒースの髪ってほんとうは何色なんだろう。
前にネットでみた15歳当時の写真とか17歳頃のムービー(またもやコスプレ)ではダークブロンドなんだけど、この『恋から』じゃ茶色だし、その後も作品ごとに色変わってるんだよね。インタビューでは「ブロンドのイメージ(王子キャラって意味か?)がイヤ」とかいってたけど。目の色も濃い茶色だと思ってたらこの映画の台詞では緑色とかいわれてたし。英語で「緑色の瞳」って「チャーミングな瞳」みたいなニュアンスで使うんでしたっけ?どーだっけ?ただの台詞?
どーでもいーっちゃいーんですが。
こないだ観た『アイス・ストーム』に出てたアリソン・ジャネイがキョーレツな下ネタ指導教官役で出てきて笑いました。あとキャメロン役のジョセフ・ゴードン=レヴィットが窪塚洋介にみえてしょうがなかったのと(似てるよね?)、ビアンカが着てたTシャツに「阪急電車 急行は速い阪急」って書いてあったのが超気になり(爆)。
エンドクレジットの最後にNGがいくつか収録されてるので、観る方はお見逃しなく〜。

なんでやねん

2006年03月31日 | movie
『パトリオット』
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18世紀、アメリカ独立戦争を舞台に、家族のため、祖国のために大陸軍に志願したある父子の死闘を描いた歴史アクション大作。
“patriot”とは「愛国者」の意。なのに監督ドイツ人で主役親子はオーストラリア人。なんでもアリやねハリウッドよ。その割りにはイギリ?X人役はイギリス人が演じてたり、フランス人役はフランス人が演じてたり。マべつにいーですけど。
コレたぶんヒース・レジャーが出てなかったら一生観なかったたぐいの映画です。いやよく出来てるよ。けどどーしても戦争映画って好かんのよ。ぐりは。申し訳ないけど。戦争映画ってだけでココロの“感動スイッチ”にロックがかかってしまう。だからどんだけ主人公が必死に活躍してても、ぜーんぜん、まったく、英雄にはみえないし、感動もできない。すいません。なかには感動出来る戦争映画もあるんだけどね。たまに。でもこーゆー戦争プロパガンダ映画は問題外さ。
てゆーかやっぱこの話は相当強引ですわ。そもそもなにもかもが主役のヒロイズムありきなのよ。主人公自身が支払わされる犠牲も、まきこまれる周囲の人々の愛も血も涙も、全部がメル・ギブソン(≠主人公)のために差し出されてる。ムリあるよそれ。超ご都合主義。なんの説得力もない。
長い映画だし(164分)黙って観てりゃあそのうち共感がわいてくるかと思ったけど、結局最後までダメでした。世間にはこの映画観て感動される方もたくさんおられるのでしょーけども。

しかしさすがスペクタクルの達人ローランド・エメリッヒ、物語はさておきディテールでみせます。
戦争の悲惨さ、残虐さ、不条理、恐怖、狂気、そういう感覚に訴えてくる描写はホントにすごくうまい。的確!にツボついてます。まさに“一発必殺”(笑)。そこは評価できると思う。
ヒースはまたコスプレで馬乗ってます。つーかハリウッド映画でコスプレはこれが最初なのかな?アメリカのおとーさんみんなの“理想の息子像”を衒いなく健気に演じてました。
それにしても長かった。音楽があまりにもえげつなかったのもヤな感じ。観てて疲れました。

ちょびっとほっと

2006年03月29日 | book
『靖国問題』高橋哲哉著
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去年のいつだか忘れたけど、かなーり前に図書館で予約してやっと借りれた。借りといてなんですが買えばよかった。てゆーか買いますもう。
高橋氏の主張の内容とその是非についてはぐりは意見を述べない。なぜか。めんどくさいから(爆)。めんどくさいのきらいなんで。ええ。
『男たちの大和 YAMATO』とか観て泣いてる人、とくに若い人とか絶対読むべきですね。ぜんぜん難しい本ではないんで、中学生でも読めます。もうムチャクチャわかりやすいです。ナニがいいってギミックとかレトリックとかそーゆーいわゆる「議論のテクニック」にまったく頼ってないんですよ。思いっきり正攻法で攻めてます。だから説得力があるし、読みやすい。

この本はいわゆる靖国問題─首相が靖国神社に参拝することの是非─を基点に、その問題の本質を、感情論、歴史認識、宗教、政治、法律、文化の各方面に整理して論じている。
そしてなぜこれが「問題」なのか、反対派の立場と反対する根拠、賛成派の立場と賛成する根拠のそれぞれをあげて、各々の主張の正誤についても糾している。
説明のしかたが非常に親切です。ぐりはとりあえずめちゃめちゃスッキリしたよ。すかっとサワヤカ(爆)。すーごいハレバレとしたキモチですー。ある一部分ではぐりの認識が間違ってなかったっつーか同じよーに思ってる日本人もいるのねー、とややホッとしたりもし。
ところでコレすんごい売れたらしーけど、読んだ人のどのくらいが高橋氏の主張を是としてるのかが超気になりますです。どーなんだろね・・・?

内容に触れられないので短いレビューですんません・・・手抜きじゃないのよ・・・。

文学的ブラコン伝説

2006年03月28日 | movie
『ブラザーズ・グリム』
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コレ実は去年の公開時も観よっかな?とちょっと思ってたんだよね。いつの間にか終わっちゃってたんだけど(爆)。
おもしろかったよー。うん。アホで、バカで、しっちゃかめっちゃかで、罪がなくて。こーゆーの大好きです。べつにあたしゃテリー・ギリアムのファンでもなんでもないけどね。『モンティ・パイソン』すら観たことないし(おい)。
純然たるファミリー向けお気楽エンターテインメントなので、物語とかキャラ設定とかはかなりユルいけど、観てるこっちも気楽なもんです。なーんも考えなくていい。辻褄がおかしいとか展開が強引とか、そーゆー次元の映画じゃないから。細かいことにこだわりだしたらキリがない。

ただ疑問だったのは残虐な表現が意外に多いところ。動物とかムチャクチャ虐待しまくってるし、人もぐちゃぐちゃ殺しまくり。どー考えても子ども向けの映画なのに、こんなんやってええの?アメリカ映画で?と思われるとこが結構あり。テリー・ギリアムだし狙ってやってのかもしんないけど、にしてもビミョーに中途半端。
あと生きるか死ぬかとゆー大ピンチでも主人公たちがイマイチ切羽詰まってないのはどーなのさ?どーせなら派手に泣きわめいたり(笑)狂った芝居もやってみてほしかったかも~。
いちばん気になったのは全編に満載のVFXパート(職業的にどーしてもねー)。CGの出来ももうひとつだし、合成もヘンです。虫とか超浮きまくり(爆)。オオカミとか鳥とか質感もカタチも動きもイタイ。○谷プロじゃないんだから。愛が感じられないよー。これじゃあ『ヴァン・ヘルシング』の方がまだマシ。セットとかミニチュアとか小道具とかはすんごい凝ってるから、そこのギャップがなあー。750カットは確かに多いけど、1年半もあったんならもっとなんとかなったんでは?
カエルは操演だったのかな?CGなのかな?アレだけはけっこーよく出来てたけど。特撮シーンの台詞でいちーち「仕掛けに金がかかる」とか「高い」とかいってたのは笑えた。監督自身の皮肉だよね、あれ。

キャストは兄役のマット・デイモンはなんだか不完全燃焼気味に見えたけど、他はみんな思いっきりやりきってていい味出してました。とくにモニカ・ベルッチなんかサイコー。美人!ゴージャス!グラマラス!とゆー、記号的にわかりやすい女優さんだよね。ぐりはこの人以前から割りと好きです。ヒース・レジャーはまたあんたは一体誰やねん?!とゆースッとぼけたなりきりぶりでおっかしかったー。弟キャラなのでかわいく甘ったれてみたり、微妙にズレたオタクっぽさで突っ走ってみたり、演じててさぞ楽しかったろーなという感じがしました。コスプレと馬ってのはもーこのヒトにとっては十八番みたいなもんなんだろーなー。けどオスカー候補にもなったことだし今後はこーゆーおっぺけ映画(爆)もたいがいにしてマシな映画にも積極的に出てほしー。

実在のグリム兄弟とこの映画の兄弟では設定はいろいろ違うらしいんだけど、出来ればあの伝説的なまでのブラコンぶりをうまく再現してくれればもっとおもしろくなったかもです。
すんごいどーでもいーけど、コレに出てた女優さんがヒースをして「これまでに共演してきた俳優達の中でもとびきりセクシー」と評してましたが、ぜんぜんそーゆーシーンはないです。一体どーゆーシチュエーションでそんな印象を抱くに至ったのであろーか。ナゾ。

氷の宮殿

2006年03月27日 | movie
『アイス・ストーム』
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1973年、コネティカット州ニューケイナン。ニューヨーク郊外のミドルクラスの住民のモダンなコミュニティを舞台に、音もなく静かに崩壊していく家族の姿を描いた物語。1997年の李安(アン・リー)作品。
公開時に劇場で観た記憶があるので8年ぶりの再見だけど、気に入ってた割りにはあまり内容を覚えてなかった(爆)。ショック。
いやでもやっぱりすごく好きな映画です。脚本はスゴイし(カンヌ国際映画祭脚本賞受賞)、映像も美しい。音楽もすてき。美術も衣装もシックだし、なによりもキャスティングがクールだ。

70年代という時代の独特な空気感の表現も素晴しい。映画にはこの時代の社会情勢などはそれほどはっきりとは描かれてはいない。だが秋から冬へと移っていく季節のつめたい風景、隣人同士の不倫、家庭に無関心な親たちの放埒、思春期の子どもたちの性の目覚め、親子間の微妙な距離感といった、目には平穏にみえてその底にぴりぴりと漂う緊張感が、映画全体の空気を微妙なヴァイブレーションで包んでいて、その震動と時代背景のイメージがぴったりとシンクロしている。
ひとつひとつのエピソードは相当に衝撃的なのに、それらをあざとくなく上品に抑えつつ充分な淫靡さを醸し出す演出も見事。地味だけどウマイ、とゆー李安映画の真骨頂だろう。
それにしても人物描写の完璧さは奇跡的なほどだ。脳天気に独善的な父親(ケヴィン・クライン)、理由もなく不安感でいっぱいの母親(ジョーン・アレン)、暴力的なまでに早熟な娘(クリスティーナ・リッチ)、父親そっくりな息子(トビー・マグワイア)、超然と悪魔的に美しい隣人の妻(シガニー・ウィーバー)、天使のように可憐なその息子(イライジャ・ウッド)。額に入れて壁に飾っておきたいくらい芸術的。それくらいよくできてる。パーフェクト。

この映画に描かれてるのは、旧来人が求め続けた豊かに恵まれた価値観への警鐘だ。
ここに出てくる人物はいわゆる人生の勝ち組ばかり。きれいで健康で教養もあって、お金もそれなりに足りている。納得のいく相手と結婚して家族がいて、オシャレなおうちに住んで、いいクルマに乗っている。子どもたちはみんなお利口でかわいらしい。見た目には何もかもがうまくいっているようにみえる。
だが不幸なことに人間の欲には限りがない。そして欲しいものをぜんぶ手に入れたうえでなにもかも思い通りに出来るほど、世の中は甘くもないし人生は簡単じゃない。“完成された平和な生活”という幻想を目に見えない細かなヒビが徐々に覆いつくし、やがてこなごなに砕けていくさまを冬の嵐に喩えた情景描写が華麗だ。悲しいのにその完全な調和によって美しくみえるという意味では、この物語はギリシャ悲劇にも似ている。
原作小説が出ているようなので、今度読んでみます。DVDも買いですな。

原作レビュー:『アイス・ストーム』リック・ムーディ著