落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

恋とお酒と料理と二枚目

2007年11月26日 | movie
『ぼくの最後の恋人』 
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すごく香港映画らしいロマンチック・コメディ。
恋に恋する酒豪の香港人女(楊千燁ミリアム・ヨン)、現実が怖くて理想ばかり追い求める帰国子女の男(呉彦祖ダニエル・ウー)、札びらで香港人の横っつらをはたいて回る大陸女(胡静フー・ジン/ちなみに大陸映画では香港人が大陸人の横っつらを札びらではたいている。お互い様)。舞台は蘭桂坊、メインアイテムは酒と食べ物、香港ラブコメのお約束が全部そろっている。ロイヤルストレートフラッシュである。
テーマは夢と恋愛。ヒロイン(楊千燁)はビールのキャンペーンガール・・・を続けていくには少々キツイお年頃。貯めたお金でカフェを持ちたいのだが、香港は近年不動産の高騰が続いていてなかなか現実には叶わない(ふつうのマンションやアパートも年々ものすごい勢いで家賃が上がっているそうである)。そこへ現れたのが、店は持ってるけど借金で閉店寸前に追い込まれたイケメンフレンチシェフ・ひこくん。ふたりの利害が一致して店を共同経営していくことになるのだが、ひこくんは男の子のプライドやら放浪欲やらいろいろややこしいものを抱えていて、そうすんなりとは彼女のモノにはなってくれない。わかるねそれ。そういう内面の葛藤が、さりげなく、まったく説明的にならずに、でもしっかりわかりやすく描かれている。うまい。さっすが爾冬陞(イー・トンシン)。
観た後に何かが残るというほどの映画でもないし、徹頭徹尾、馬鹿馬鹿しくて罪のない娯楽映画でしかないけど、それでも観ていて十分楽しかったです。ただ、ひこくんが部屋に若いキャンギャル×3人を連れ込んだときに楊千燁が吹くホラ話がちょっとキワドくて、これは笑っていいのかなー?と一瞬考えてしまいましたが。考えすぎかなあ?

母は勝つ

2007年11月26日 | movie
『誘拐ゲーム』

これは傑作・・・5秒前!惜しい!という秀作。
ストーリーは非常にいい。香港映画には珍しい、女性主演のクライムサスペンスアクション。どこで誰がどうなるかまったくわからない、どんでん返しに次ぐどんでん返し。金や名誉のためではなく、愛する家族の命のためにどこまでも暴走していく女と女。新鮮です。やったね。
とくに劉若英(レネ・リウ)はホントにいい。ちょっと見には色気もないしなんとなくどことなく貧乏くささもあって(失礼千万)あんまり“女優”って感じがしないのが物足りなく感じるんだけど、こういう役がここまでハマる人だったとはねえ。驚きです。まさに鬼気迫る迫真の演技。スゴイ。
だから彼女に対する林嘉欣(カリーナ・ラム)のミョーな勘違いぶりがもんのすごく気になる。演技がどうこういう以前に、役の解釈自体が浅すぎる。なんなのあのヘンなヘアスタイル?大体彼女、人妻にも舞台演出家にもまったく見えません。もっと自分を知って役をこなすべきなんじゃないですかねえ。ダサ。つーかそこはおそらく彼女個人の責任じゃないんだろうと思うけど、彼女の人物造形全体がチープなのは相当にイタイ。
おそらくこの映画、彼女の役にガツンとクセのある女優をキャスティングして、思いっきり濃い悪女としてギトギトに描けば、さらに一級の娯楽映画にできたんじゃないかと思う。内容の割りに見た目地味にまとまってしまってるのが惜しい。
キャスティングでいえばカリーナだけじゃなくて全体に地味は地味。ヴィジュアル的にはとっても散漫。花がない。いったいどこ見りゃいーんですかっちゅー話で。まーこれは最近の香港映画全般がそうなんだけどね・・・。

残念なふたり

2007年11月26日 | movie
『恋するふたり』

もーーーーーーーーみるからに。失敗。残念。とゆー、ひじょーにもったいない映画。
たぶんこれ原作(王安憶ワン・アンイー)はすごくいいんだろうと思う。シナリオももともとはよく書けてたんだろうなと思う。けど仕上げですべてが台無しになってしまっている。本来そうでなかった現代的なラブストーリーを無理矢理お涙頂戴のメロドラマに仕立てようとしてダメにしてしまったのがありありとみてとれるのが別の意味で悲しい。
これには各方面で報道されてるとおり(うちでも一度触れましたが)、当初は陳苗(チェン・ミャオ)が監督として脚本も執筆し撮影もしていたのだが製作側ともめて途中降板させられ、なんだかんだと撮影終了から公開まで2年もかかってしまったという経緯がある。交替した監督は金琛(ジン・チェン)。現在日本でも公開中の中井貴一・苗圃(ミャオ・プー)主演の感動作『鳳凰 わが愛』の監督である。
雰囲気的にはそれなりに小奇麗にまとまっていて一見それほどひどい映画ではないのだが、かといって新鮮味もない。中国の恋愛映画でヒロインは雑技団の空中ダンサー、恋人は犯罪者っちゅーたらオチ決まってますしねえ。シナリオにはそこをどーにかしよーとゆー相応の工夫のあとはかなりの部分に見受けられるのだが、後付けの古くさい小細工でいちいち観客を泣かせよう泣かせようとしているのがみえみえであざとすぎる。はっきりいってしらけた。
劉燁(リウ・イエ)と李心潔(アンジェリカ・リー)の熱演は好感もてましたけど、熱演だけじゃどーにもならない。はああ。
海賊盤DVD屋のBGMに河口恭吾の「桜」(よりによってそれかよ)が流れてたり、岩井俊二(の「新作」って何年前よ?)なんて名前が出てきたり、日本文化とのつながりが妙に強調されてるけど、劇中重要なモチーフとして登場する架空のアニメ映画がやたら安っぽいのも興醒め。富士山の山頂で身投げって・・・そんなことできんの?


バーミヤンにて

2007年11月26日 | movie
『ブッダは恥辱のあまり崩れ落ちた』

ぐりはふだん巷で人気のイラン映画ってほとんど観ないんだけど、この映画はイランのマフマルバフ一家の作品であると同時に、アフガニスタンの映画でもある。
といってもロケ地であり舞台にもなっているバーミヤンと物語には直接関係はない。画面の後ろの方に時折、絶壁の虚ろな穴と無惨に破壊された石仏の残骸が映るだけである。登場人物の誰ひとり、事件のことには触れもしない。主要な登場人物は小学校低学年の子どもばかりだし、彼らはそもそも事件のこと自体ろくに覚えてもいないのだ。
タイトルがとても印象的だけど、この物語は、石仏がもし恥辱のあまり自ら崩れ落ちたのだと仮定して、ではなぜ、なにが「恥辱」だったのかということを描いている(「アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない 恥辱のあまり崩れ落ちたのだ」というタイトルで、監督の実父で?竄ヘり映画監督のモフセン・マフマルバフ氏の著書が日本でも刊行されている)。長い長い内戦と圧政と戦争によって、国も国民までもが極限?ワで荒廃しきってしまったアフガニスタン。文化もなければ未来も夢もない。大人はみんな今日一日を生きるだけで精一杯で、明日のことなん?ト何も考えられない。そんな国にも子どもはいる。政治的な重いモチーフを、子どもの日常を通して暗示的に語ってみたというわけだ。
たぶん、この映画観る人によってはすごくいい映画なんだろうとは思うけど、ぐりはどうしても好きになれなかった。これまでに観たイラン映画(マフマルバフファミリー以外のも含め)のほとんどが女子どもを主人公に社会の貧困や矛盾を描いているものばかりだったんだけど、どうしても妙な「上から目線」を感じてひっかかってしまう。この映画も最初から最後までそこが気になった。たとえばぐりは中国映画は好きだけど、巨匠張藝謀(チャン・イーモウ)の田舎映画などは正直にいって大して好きではない。映画なんて観たこともない人たちの社会を題材にするなら、語り手自身にもその社会と同じ目線になってほしいと心のどこかで期待してしまうのだが、一部の映像作家にはそういう意識はまったく無用らしい。その落差に、映画作家のエゴイズムを感じてしまう。極論をいえば「ビンボー人撮っときゃ間違いないっしょ」みたいな。
TIに登壇したハナ・マフマルバフがめちゃめちゃフツーのギャルでちょっとびっくり。まあまだ19だからね。子どもだもんね。客席にいた兄でプロデューサーのメイサンがまたイケメンでさあ。まいったねこりゃ(意味不明)。

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監視遊戯

2007年11月26日 | movie
『アイ・イン・ザ・スカイ(原題)』

香港警察の情報課監視班という特務部隊と、宝石店を狙う強盗団との手に汗握る攻防戦を描いたクライムアクション。
おおまかなストーリーそのものはわりとありきたりです。けど最後まで観客を飽きさせないのは設定の描写がとても丁寧だから。車のナンバーや携帯電話の通話記録やクレジットカードの使用履歴、街中いたるところに設置された監視カメラの映像、過去の逮捕者リストなどの「情報」を駆使して犯罪組織を追跡する監視班。彼らは警官だが外見は警官には見えない。尾行と監視が任務だから、警官に見えてはいけないのだ。任達華(サイモン・ヤム)のメタボルックはちょっとやりすぎ感ありましたけど(笑)。
監視班の任務は容疑者の居場所の特定なので、直接犯罪者とは対峙しない。居場所を特定したら機動部隊に任務は引き継がれる。容疑者の身柄を確保するのは彼らの役目となる。主人公たちは暴力ではなく頭脳で犯罪者に立ち向かう。なのでこの映画には直接的なアクションシーンは実はそれほどない。それでもこの映画がスリリングなのは、犯罪捜査の目的が、正義のためなのか、あるいは法を守るためなのかという非常に微妙な倫理の領域を軸にしてストーリーを展開していく、香港映画の秀作にみられる「影」の部分の奥深さが効いているのではないかと思う。あと人物が“アクション”しないぶん、カメラワークで頑張っていて画面の躍動感にはまったく不足がないという演出はすごく頭の良さを感じる。
ただ、ぐり的にはヒロイン子豚(徐子珊ケイト・チョイ)の設定にはかなり無理があると思った。べつに説明がほしいわけじゃないけど、情報戦を操る監視班なのに偶然出会った見ず知らずの少女を「警官に見えない」というだけの理由で審査もなしに採用するなんてリアリティがないにもほどがある。終わってみればあの印象的なオープニングシーンのための強引な設定としか思えないけど、何か伏線があるのかと思って最後まで気になって仕方がなかったです。
監督の游乃海(ヤウ・ナイホイ)が杜[王其]峰(ジョニー・トー)組の脚本家ということで、杜ファミリー役者がそっくりそのまま出演してるんだけど、メンバーがほぼ常に毎回いっしょなのはいい加減飽きます。他におらんのかいなー。