落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

ハッシュ!

2002年04月20日 | movie
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じつはこの作品、撮影前からとても楽しみにしていた映画でもあり、完成してから1年以上経ってもいるので正直多少「待ち疲れ」なカンジでもあったのですが、まぁ観れて満足しました。
出来はとってもいんじゃないでしょうか。笑えて、泣けて、前向きになれて、ちょっと考えさせられる。少し変わってるかもしれないけど、ふと考えればどこにでもいそうなフツウの人々が模索する「幸せ」にまつわるお話。日本人が得意とするハートウォーミング・コメディです。

私はこの橋口亮輔監督が好きで、デビューの時からずっと注目してます。この方は特筆すべきテクニックや個性のようなものはハッキリ云って無いです。なんでこんな凡人が映画監督なんてやってんだ、ってくらい普通の人です。
ただひとつこの人が凄いのは、自分自身に向かい合う姿勢の強さ、正直さです。
他の誰が、こんなにも真直ぐに自分に向い、鋭く問いかける物語を作れるのか、それを私は知りません。
画面を観ていて、その視線の痛々しさに胸が張り裂けるような思いをさせられる映像作家です。
この『ハッシュ!』でも、登場人物ひとりひとりに投影される自身への厳しさはやはり健在でした。ディテールに凝ったリアルな情景描写もますます洗練されて来ていると思います。前作までと違い、人物設定の年齢層が上がり、出演者もキャリアも知名度もある実力派を揃えたぶん、観ていてリラックス出来る空気が新鮮でした。

ただこれは前作までと変わってないなと思ったのは、女性の描写力が弱いこと。日本の映画監督は概して女性の人物描写が不器用と云うか、腰の引けている方が多いような気がするのですが、橋口さんも同様に、女性キャラクターの造型がもうひとつ不自然です。
特に田辺くん演じる勝裕のキャラクターへの監督の思入れが尋常ではないので(毎回だけど)、逆に相対するヒロイン・朝子の造型に感じる乱暴さが目立ってしまう。朝子に限らず、今回は女性の登場人物が結構多いんですが、彼女達に対する視線にどこか距離を感じる部分があって、観ている間も観てからも、居心地の悪さのようなものが印象に残りました。
変に分かったような傲慢なアプローチをしないだけ誠実なのかもしれないけど。

あとやはりひとつひとつのエピソードのまとまりが悪いのもこれまでと変わってないですね。作為的にまとめようとしてないのは自然で良いのかもしれないですけども、正直、世界30カ国でロードショーされるほどの完成度はやっぱ感じませんでした。イヤ、“世界30カ国でロードショー”っての自体が別に大したことじゃないのか。
そんな訳で、いつかアッと驚くような“女性映画”を撮って、この不完全燃焼感を払拭して欲しいねと強く思った『ハッシュ!』でした。