落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

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2005年11月23日 | movie
『世界』
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実はぐりは賈樟柯(ジャ・ジャンクー)作品を観るのは記憶にある限りこれが初めてである(爆)。ヤバいです。レンタル屋いかなきゃ。
しかしそれにしてもこりゃまた傑作である。上映時間133分の長さをまったく感じさせない。すごく淡々とした静かな物語なのに、観ていてぜんぜん飽きない。
そしてものすごく身につまされる。
物語の舞台は北京の「世界公園」。世界各国の観光名所のミニチュアが展示されたテーマパーク。ヒロイン小桃(趙濤チャオ・タオ)はここのダンサーで、彼氏の太生(成泰[焱木]チェン・タイシェン)は警備員。ふたりとも地方出身だ。というかこの物語の登場人物は全員地方の人間なのだ。なので台詞にときどき方言が交じっている。
中国の一般庶民は法的には海外旅行ができない(たぶん。違ってたらツッコんで下さい)。海外渡航は限定された都市に戸籍のある住民の?pック旅行か、国外に住む肉親の訪問か、商用、政治活動、文化交流、留学など特殊な目的が認められた人にしか許されない。パック旅行?セって高額だから庶民には高嶺の花だ。
大体、登場人物たちが当り前に使っている携帯電話だって彼らの一ヶ月の給料よりも高額なのだ。事故で死にかけた男が、いまわのきわに借金があることを友だちにいい遺す。その額が日本円で50円や500円といった小銭程度なのが悲しい。世慣れてしたたかなようにみえて、一方で恋人に「いつか北京で名をなしてお前を楽にしてやりたい」などというピュアネスを手放しかねている若い中国人たち。
そんな彼らをまきこんで急激に変化し発展していく中国経済、北京という大都会。常に仕事を求めて地方から、外国からも人がやってくる。彼らにはそこから出ていく自由はない。自由はないがミニチュアの‘世界’で働いている、というのが見事な対比になっている。

この映画のテーマは、巨大な魔物のような都会で暮す地方出身者の孤絶感だ。
自分はここにいてもいいのだろうか、明日はどうなるんだろう。明後日は?いつまでここにいられるだろう。他に居場所なんかないのに?どこへ行けばいい?どうすればいい?声にならない叫び声が、画面のなかにこだましているようだ。
若者たちは同郷の友人にすがり、恋人にすがり、浮気相手にまですがりつく。そうでもしないかぎり、自分が果てしなく遠いところまで吹き飛ばされてしまうような気がするからだ。他にすがるものがなにもないからだ。それほどまでに切迫した淋しさが、物語全体に音もなく激しく吹きすさぶ。
だからといってつらいばかりの映画ではない。それがこの作品のすぐれたところだ。おしつけがましくもないし、でもちゃんとわかりやすい。真面目な話なのに、ぜんぜんかたくるしいところがない。あざといところだってちゃんとある。それがイヤミじゃない。
どうすればこんな映画がつくれるんだろう。不思議だ。

惜しむらくはこの映画、ハイビジョン撮影なので部分的に画質がイッちゃってるシーンがある。夕方や夜の屋外、派手にライトアップされたステージのシーンなんかはとくにひどかった。他のシーンがきちんと処理されているだけにギャップが目立ってしょうがない。これは出来ればなんとかしてほしかった。
音楽がすごくよかったです。CDほしいなー。あるかなー。
ところでこれ、調べてみたら大陸公開版は108分となっている。なんと25分も短い。どこをどう変えてるんだろう。

後日付記:コメント欄でだーしゅーさんから中国人の海外旅行?ノついてご指摘がありました。
「法的に観光ビザ取得が制限されているのは、日本やアメリカ、台湾など一部で、東南アジアをはじめカナダやヨーロッパなど多くの国は中国人の観光を普通に受け入れています。
ノービザで入れる国は少ないですが、個人での観光ビザ取得を認めている国は多いです。
海外旅行が少ないのは、むしろ経済的理由によるのではないでしょうか。」
とのことです。
ぐりが以前聞いた「中国人はビザがなければ入国できない、個人旅行がなかなか許可されない」のは日本のことだったようです。失礼いたしましたー。

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2005年11月23日 | movie
『同じ月を見ている』
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泣けたよ。泣きすぎて劇場に忘れ物しちゃったよ(爆)。これも原作の力か。
陳冠希(エディソン・チャン)は評判通り。とっても頑張ってました。日本語の台詞もところどころ訛りらしきものは感じなくはないけど、大体はすごく自然で、ここまで練習するのホント大変だったろーなと思う。
窪塚くんはさすがです。ぐりは彼の『池袋ウエストゲートパーク』で売れてからの芝居がどーしても好きになれなかったのだが、この映画ではだいぶアブラが抜けてちょうどいいかんじになってました。もともと演技のセンスというか才能のようなものはしっかりしてるんだなと思う。
しかし黒木メイサ嬢はちょっとこの役は荷が重かった。てゆーか芝居がオーバーすぎる。この人舞台をやってるからなのか、いちいち声の張り方が大袈裟なのだ。心臓病なのにぃ。あとあのわざとらしいシーツ巻き巻きは思わず笑っちまったぜよ。なんじゃそりゃー。

全体として構成もシンプルだし感情表現もこまやかで、脚本もよく練れていてムダのない仕上がりになってました。子ども時代のパートがいまひとつ完成度が足りないような印象になったのは惜しかった。子役はどの子もハマり役なんだけど、なぜかこのパートだけ説明的で興醒めしてしまう。
深作監督の趣味なのか暴力シーンちょっとしつこいかも(笑)。そこまでやらなくてもー、ってくらい血のり多いです。それとせっかく月や絵画といったキーヴィジュアルにめぐまれた物語なのに、カメラワーク&ライティングがダサい。イケてない。そこはもったいなかったです。
まぁでもいい映画でした。泣けます。観よっかな?どうしよっかな?と迷ってる方、大丈夫、観て損するよーな映画じゃないですよ。
余談ですが、くずひろいをしているドンと高校生の鉄也がすれ違うガードはココです。けっこーいろんな映画に出てくんだよね。

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2005年11月23日 | movie
『春の雪』
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あまりいい評判を聞かないので、正直な話、期待はしてなかったです。その割りには楽しめました。ふつうにちゃんとした映画でした(爆)。お話もよかったし・・・ってそりゃ原作が傑作なんだから当り前か。読んでないけど(汗)。
だがしかし。不朽の名作を原作に選びこれだけ金も手間もかけ、監督含めスタッフ含めキャスト含め今現在の日本映画界の最先端にいる人々を揃えたばかりか、アジア一の大人気撮影監督・李屏賓(リー・ピンビン)まで呼びつけておいて、この内容とはちょっとイカンのではないか。
イカンと思うよ。ぐりは。
まず台本がまったくイケてない。原作が小説だからかもしれないけど、無駄な台詞、無駄なシーンが多すぎる。説明的すぎ、くどい。これじゃTVの2時間ドラマと同じです。華族社会が舞台なのに、あれだけ全員にべらべらべらべらべらべらべらべら喋らせてしまっては気品もクソもない。とくに若手俳優に大正期の貴族の会話を再現させるなんて土台ムリなのだから、思いきって台詞を削って、喋り方はまったくの現代語に改めた方がよかったのではなかろーか。んで重要な話は全部脇役にいわせる。
主役のふたりは残念ながらミスキャスト。ふたりとも演技力は悪くないし健闘していると思う。だが設定では18歳の少年と20歳の乙女なのだ。まぶしいほどにみずみずしくいたいけな子どもたちの愛の遊戯の伝説であるべきなのに、このふたりではいささか薹がたちすぎている。清顕役などは恋愛のレの字もしらないのにやたらプライドだけは高いおくてな高校生が、年上の幼馴染みの愛情に触れるうち真実の愛にめざめていくという成長過程が物語の本筋なので、実際に10代に見えておかしくない子をキャスティングすべきだったのではないだろうか。

台本もそうだが、この映画全体がうわっつらの話の流れや設定に無意味にとらわれ過ぎてる感じがしてすごく惜しい。
この話は悲恋物語でもなんでもない。ひとりの少年の自我の芽生えの物語なのだ。年上の幼馴染みと少年との悲恋といえば何度も映画化された『野菊の墓』があるが、この話も背景が違うだけでテーマはほぼ同じだ。20歳の女と18歳の男といえば実年齢よりも精神年齢に遥かな差がある。女は恋する少年と結ばれないことを運命として半ばうけいれている。だが少年は子どもだから、一旦自分のものだと思いこんだら他人の手には渡したくなくなってしまう。いや、手にはいらないからこそ取り戻したくなるのだ。それはもはや愛情とはよべないかもしれないけれど、人として一度は通らねばならない道ではある。
この映画では、そうした幼い主人公たちの心の成長がまったく描ききれていなかった。派手な情景描写や中途半端なラブシーンにばかり気を取られて、本当に描くべき部分をおざなりにしていたようにぐりは感じた。
いい原作なのにもったいないことをしたと思う。
映像も期待したほど綺麗じゃなかった。思うにポストプロダクションでいじりすぎたんではなかろーか。画面転換がせわしなくてなんかセコい画づらになっちゃってて、それももったいなかった。あんな細切れに編集したんではせっかく李屏賓に撮らせた意味がないではないか。

衣装がいつも時代劇でつかわれてる某大手和服メーカーじゃなくて、ちゃんとアンティーク布をつかったオリジナルでとっても綺麗でした。
大楠道代と若尾文子がよかったです。さすが亀の甲より年の功。

つゆだくおでん

2005年11月20日 | movie
『バッシング』
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これも予想してた内容とはかなり違ってました。
イヤまぁこれはこれでなかなか充実した作品だとは思うよ。悪くない。けどやっぱ完成度の面ではちょっと問題あると思う。少なくとも、テーマやモチーフの話題性の大きさほどの作品には仕上がっていない。
ティーチインで監督が「旧作までこだわってきた画づくりや演出といったスタイルを意識的に排除して、新しい挑戦をしてみたかった」といっていたけど、ぶっちゃけそれがうまくまとまっているようにはあまりみえない。全体にもうひとつバランスがとれてないような印象をもちました。
たとえばヒロイン(占部房子)のキャラクターがやたらに荒んでるみたいにみえるために、彼女の海外ボランティアという活動がまるで現実逃避のようにみえてしまうのだが、監督は「すばらしくすてきでもなんでもない、ごく当り前のふつうの女の子をああいう状況においてストーリーを描きたかった」といってました。あのね、ぜんぜん「ごく当り前のふつうの女の子」には見えないよ。あのヒト相当ヤバいよ。
この彼女の心理描写のひとつに、継母(大塚寧々)が用意してくれる食事は食べずに、コンビニでおでんを買って自室に閉じこもって食べるシーンが数回登場するのだが、このおでんの買い方が「具一品ずつ容器をべつにしておつゆをたくさん入れる」という変わった買い方をする。これを観てぐりはすぐ『東電OL殺人事件』(佐野眞一著)を思い出したのだが(被害者の女性も同じようにおでんを買う習慣があった)、果たして元ネタはこれだった。監督も落ちこんだりしたときにこういう買い方をするそうである。だが東電の彼女はどう考えても「ごく当り前のふつうの女の子」ではないし、あの買い方にもなるべくお金をかけずにお腹いっぱい食べられてしかも太りたくない、という彼女なりのハッキリした根拠があったといわれている。それを安易にまったく別なシチュエーションに流用するのはどうかと思う。
そういう細かいディテールのひとつひとつがイマイチ的外れになってしまっている。作品全体の雰囲気はわるくないし、ところどころ胸をうつシーンもあったし、見どころもあるのに、あえて明確なスタイルを排したつくり方は失敗だったように見えてとても惜しい。ホントあと一歩、って感じなんだけど。マこのアンバランス感も一種の作家性だといわれてしまえばそれまでだし、そう解釈するのはとくに難しくはないです。
ぐり的には今回観られてよかった。だって国内じゃあちょっと公開できないもんね(実際公開未定である)。一見の価値はある映画です。
大塚寧々がノーメークでがんばってました。ノーメークでも美人はきれいだ。もっと映画に出てほしいなぁ。

つゆだくおでん

2005年11月20日 | movie
『SPL<殺破狼>』
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甄子丹(ドニー・イェン)VS洪金寶(サモ・ハン)デスマッチ(爆)。
ぶっちゃけ想像してたほどの内容じゃなかったです。てゆーか内容をうんぬんいうような映画じゃない。
黒やブルーやバイオレットといったキーカラーをオシャレに配したプロダクションデザインや、いちいち仰々しい音楽のせいで一見シリアスなクライムサスペンス風なんだけど、観終わってみりゃなんのこたーない、ただのアクションエンターテインメントです。オチもなんかさっぱりせんし、ストーリーとかどうでもいいんですよ。きっと。
まぁでもさすがアクションはスゴイよ。たぶんスゴイんだと思う。ぐりはよくわからないんだけど。
エッセイ「燃えよ!!スタントマン」の著者・谷垣健治氏がスタントでなくちゃんとしたキャストで出演されてました。
しかし任達華(サイモン・ヤム)あいかわらずかっこええな・・・(すいませんおやぢ好きで)。ぢつはわたくし、このヒトがみょーなエロ映画に出てたときからけっこー好きです。そーいやあのビデオどーしたかなー。>おい