落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

ひとり張國榮まつり

2004年11月30日 | movie
『ダブルタップ』
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『カルマ』の羅志良(ロー・チーリョン)監督による前作にあたります。羅志良とレスリーは『夢翔る人 色情男女』で初めて共作し(この時は爾冬陞イー・トンシンとの共同演出。爾冬陞はその後製作側へ)、連続して仕事してるところを見るとふたりには何らかの信頼関係があったんだろうな、と推察されます。『色情男女』では売れない映画監督、『ダブル…』ではサイコキラー、『カルマ』ではホラーの主人公、とレスリーの既存のイメージを裏切る役柄を提供して来る若い監督、と云うところが本人にとって新鮮だったのかもしれない。
但しこの『ダブル…』ではその挑戦が成功しているとはとても云い難い。レスリーの演技は相変わらず素晴しい。完璧だ。しかし台本の完成度は正直云ってかなり低いと云わざるを得ない。どんなに役者が頑張っていても、台本が、ストーリーがひとりよがりでは役者の努力も上手く活かされはしない。
この物語は銃と云う凶器の恐ろしさ、ひとたびその能力を知ってしまった人間がとことん凶暴になりたくなってしまう狂気を描こうとしている訳だけど、それにしてもその1点だけにストーリーが頼り過ぎてしまっている。監督や出演者の銃に対する思い入れは分かる。しかしそうした内面のドラマがしっかり観客に伝わるようなストーリー構成にはなっていないために、途中から観てる方はかなりしらける。
海外旅行先で実弾射撃をやった人は多いと思うんだけど、ぐりも何年か前にやりました。アレ面白いよね。でもさ、だからって生きてる的を撃ってみたくなったりはしないよフツー。気持ち悪いじゃん。遠慮しときます。

ひとり張國榮まつり

2004年11月30日 | movie
『恋戦。OKINAWA Rendez-vous』
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王菲(フェイ・ウォン)、梁家輝(レオン・カーファイ)、加藤雅也と共演したロマンチック・コメディー。
レスリーは加藤氏演じるヤクザと取引するために沖縄を訪れた大泥棒役で、そのヤクザから大金を持ち逃げした恋人・王菲と恋に堕ちるらしいのですが、なぜか王菲の演技がカタイ。ぐりはラストシーンまで彼女がレスリーに気があるのかないのか全然分かりませんでした。彼女はレスリーとプライベートでもかなり仲が良いそうで、それでちょっとやりづらかったのかなぁ・・・ってのは勝手な憶測ですがー。
まぁコレはそういう細かいことは置いといて、転がるようにほいほいと展開していくストーリーと登場人物のお茶目ぶりをただただノー天気に笑い飛ばすためだけの純粋なエンターテインメントムービーとしてはなかなか楽しい映画だと思います。沖縄の観光案内的な面もあって風景描写がとてもキレイ。コレを観て香港人は「沖縄行きたいなぁ」とか思うのかな。ぐりは真冬で雨が降ってる沖縄にしか行ったことがなかったので、記憶のイメージがと映画が全く違ってました。ロケに使われてたホテルにも泊った筈なんだけどな・・・。
ぐりが作中でいちばん気に入ったのは加藤雅也が演じたヤクザ・サトウ。現実には絶対にあり得ないくらい究極におちゃらけたキャラクター設定だし、もともとの加藤氏のパブリックイメージとも全然違うのに、すっごい一生懸命演じてて好感が持てました。そう云えばこのヒト、去年某映画イベントで同席しましたがホンモノはめっちゃオカマっぽいんですよね(爆)。ビックリしました。まぁだからってホントにオカマさんだったりはしないとは思うけど。

ひとり張國榮まつり

2004年11月30日 | movie
『カルマ』
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真偽のほどは定かではありませんが、レスリーはこの作品の役づくりで精神的に不安定になり結果的に自殺してしまったと云われている、劇場用長篇映画としての遺作。
ぐりはホラー映画と云うのがそれほど好きではないけど(あまり質の高い作品が多くないので。高品質なホラーは勿論好き)、この映画はまぁまぁぼちぼち好きです。香港映画お馴染みの「そんな勝手な」と呆れさせられるご都合主義な展開や、思わず失笑してしまうようなやり過ぎ演出もところどころに散見されはするものの、“人を最も恐れさせるのは自ら背負った過去の傷である”と云う主題そのものには大変納得させられました。
それとコレを観て初めて気づいたんですが林嘉欣(カリーナ・ラム)はレスリーと目鼻立ちがソックリですね。特に鼻から口元にかけての造形が親子と云って良いくらい似てます。しかし撮影当時23歳だった彼女と45歳のレスリーでは流石に恋人役はキビシかった。いくらレスリーが若く見えるったって、ねえ。
そのレスリーの芝居はやはり素晴しいもので、全く一切文句のつけようのない名演技です。心に傷を抱えつつ平静はそんな内面を決しておくびにも出さない、クールでプライドが高く理知的で有能な精神科医が徐々にその正体を暴かれていく、と云うキャラクター描写によるストーリー展開を見事に体現してました。今さらだけど、改めて拍手。

おやぢオールスタードラマ

2004年11月29日 | TV
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先日読んだ小説『李歐』のドラマ版を観てみましたー。

えーと・・・コレはぐり個人から見ると・・・あからさまに“企画倒れ”に見えちゃいましたね・・・(汗)。
イヤ、面白い、傑作だと仰る方も当然おられるでしょう。純粋に好みの問題だと思うんですが・・・うーんキツイ。キビシイよ。
台本は原作に割りに忠実なんじゃないかと思います。長い話を上手く端折りつつ、重要なパートはきちんとおさえてある。忠実過ぎてやや冗長に感じる部分もあるし、説明っぽいところもかなりあるけど、それはもともと原作にもあった傾向なのでよしとしましょう。
出演者も頑張ってます。主役のRIKIYA氏の演技力についてはこの際問題外と云うことにしとこう。あれだけ大量の中国語の台詞をちゃんと云えただけでも頑張ってると思う。ぐりはこのヒト俳優向いてないと思うけどね。センスは感じない。呉彦祖(ダニエル・ウー)にしてもやはりキャラが全然違う。演技は上手いけど、やっぱりどう見てもあのノー天気な尊大さはアメリカ人そのものであって(ダニエルは米国生まれの帰国子女)文革時代をサバイブしたハングリーな中国ギャングには決して見えない。それはそれで良いのかもしれないけど。
ぐりはこの主役ふたりのやんぐまんよりも、松重豊、柄本明、塩見三省、國村隼と云った超シブおやぢ役者系の芝居に大変感動致しました。いやぁ、おやぢはいいよ。かっこいいよ。男はやっぱり40代からでしょう。ええぐりはおやぢ好きです。ファザコンです。文句あっか。

では何が問題だったか。
この物語、ドラマによって何を観客・視聴者に問いたいかと云うところがハッキリしない。と云うかたぶんつくってる当事者さえしっかり理解してないんじゃないかと思われるフシがある。
演出は単調だしカメラワークはダサいしライティングも美術も平面的で古臭い。NHKの朝ドラじゃないんだからさぁ。ハードボイルドなんだってば。編集もユルイ。緊張感がなさ過ぎる。要するに画面が退屈。どこ観れば良いのか分からない。
それにあのアンチクライマックスなラストシーンは何ですか(怒)。ワケ分からん。
2001年の作品と云うから、この規模のハイビジョンコンテンツも既にたくさんつくられてスタッフにもそれなりのスキルがあった筈(名前を存じ上げているスタッフさんも何人かいました)。それでこの体たらくとは情けないよ。

お金も時間もかかったであろう大作だけに、観ててハラがたって仕方なかったです。
もっと恵まれてなくても頑張って傑作をどんどん世に出してるクリエイターはいっぱいいるのになぁ。

全く日本人はシャイで困るぜ

2004年11月28日 | play
舞台『喪服の似合うエレクトラ』を観て来ました。

南北戦争直後のニューイングランド。地元の名家のひとり娘でファザコンのヒロイン(大竹しのぶ)、戦傷で頭の具合がおかし?ュなったマザコンの弟(堺雅人)、不倫に溺れ夫殺しを計画する母(三田和代)、母親を見殺しにした父家への復讐に燃える男(吉田鋼太郎)?B
ギリシャ悲劇『オレステイア』を下敷きにノーベル文学賞を受賞したユージン・オニールによる戯曲。

面白かったですー。4時間が全然長く感じなかった(休憩もあったので正味の上演時間は3時間余り)。
もーね、ドロドロですわ。それもハンパなくドロドロ。だって誰ひとり本当は自分がどうしたいのか、明確な目的意識を持っていない。全員が行き当たりばったりに悪意で行動するもんだから、血の繋がった家族同士でそこまでやるかフツー?ってくらい見事にドロドロになります。
大竹しのぶはやはりスゴイです。大女優だ。演技むちゃくちゃウマイです。素晴しい。堺雅人も負けてない。ふたりとも怖いような迫真の演技です。
演技があまりに真に迫ってたせいか、超シリアスなシーンで観客ウケまくり。なぜそこで笑う?と云うポイントで結構皆さん大爆笑してました。雰囲気台無しでぐりひとりで憤慨。
新国立劇場中劇場ったら1000席以上もある大箱だし観客の年齢層も高めだったから、ヘンな客はいないだろうとぐりは勝手に思ってたけど、やっぱ日本人は期待以上にリアルな演技には拒否反応があるのかもしれない。そんで見てて恥ずかしいものには反射的に笑ってしまうのも日本人の特性なのでしょー。アンタらTVの見過ぎなんだっつの(日本のTVの芝居はそんなに真に迫ってなくても許されるもんね)。

それとぐりが不満だったのは衣装や舞台装置に芸がなかったこと。ぶっちゃけダサかったです。
舞台装置はセットが回転したり次々違うセットが出て来たりしてカネと手間はかかってるらしいのは分かるんだけど、デザインにセンスはないし古臭いし、お金をかけただけなんだか空々しく感じました。あれだけ立派な舞台なのに勿体ない。
まぁ大竹しのぶと堺雅人の名演が観れただけで満足しときましょう。今後このふたりの舞台があったらまた観たいなぁ。