落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

オペラ座の怪人

2005年01月31日 | movie
『オペラ座の怪人』
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年末年始にそこらじゅうで予告編が流れてた話題作、観て来たよ。混んでたよ。
しかし眠かった。日曜の朝イチの回ってのもあるかもしらんけど、長いんだよ。元のミュージカルをそのまま映像化したかったのは分かる。傑作だもんねー。けどさ、ブロードウェイの定番・古典だけあって以降のあらゆる戯曲・映像作品にネタが流用されまュった今となっては逆に冗長に感じてしまう。「あ、その曲知ってるよ、全コーラス歌わなくていいからさぁ」みたいな。どーにかならんかったんやろか。
名曲なんだけどね、どれも。ミュージカルを全く観ないぐりでもなんとなく歌えるくらいだから。流石巨匠なり。

ヒロインを演じたエミー・ロッサムはもうもうちょーめんこかったですぅー。若いし可愛いし綺麗だしスタイルは良いし、声は美しいし歌は上手いし、こんな子現実にいていいのか?って感じ。
それに対してファントム役のジェラルド・バトラーはイケてなかった。年齢も中途半端だし(設定よりかなり若く見える)何より歌がダメ。「どこがエンジェル・オブ・ミュージックやねん」なダミ声はなんか意図があるんだろうけど、歌まで下手ってのはどーなのさ。納得いかんよ。興醒め。
ヒロインの恋人役パトリック・ウィルソンはかっこよかったです。お約束の王子様がハマッってました。

ぐり的に面白かったのはオープニングの特撮シーンだけでしたね。あそこはとってもドラマチックでした。

トニー滝谷

2005年01月30日 | movie
『トニー滝谷』
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村上春樹著『レキシントンの幽霊』所収の短編小説の映画化。
監督は市川準、主演はイッセー尾形と宮沢りえ。観るでしょコレは。観ない訳にはいかないですね。ぐりは映画化が決まった時からずっと楽しみにしてました。大体公開初日に映画観たのなんて久しぶりです。最近ずっとレディースデー派だったから。

果たして期待は裏切られませんでした。
ぐりはこれまで知らなかったんですが、市川監督は村上氏とは同世代で作品もデビュー作から読んでこられたそうで、なるほど映画全体に原作への愛情と畏敬の念が溢れてます。
かと云って単純に忠実なだけではない、監督オリジナルのエピソードもごくごく控えめにさりげなく挿入されていて、ちゃんと“市川映画”になってます。
スタイルも独特です。主演二人がそれぞれ一人二役、台詞を極力少なくして語りを多用し、ほとんどのシーンをひとつの室内セットで撮影すると云うとなんだか舞台劇みたいだけど、実際に観た感じは小説に映像がついてる、よく情報番組で見かける“再現VTR”みたいな映画です。でも決してチープだったり説明的だったりはしない。
ただただ小説世界を真摯に誠実に映像化した結果これしか方法がなかったんだな、と感じさせる完成度です。

静かで穏やかでやさしく、そして観た人間がそれぞれにふと考えさせられる、大人な日本映画。オススメです。
坂本龍一の音楽も良かった。

悲情城市時代

2005年01月25日 | movie
『悲情城市』
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よく『非情城市』と間違って書かれてますが正しくは『悲情城市』、台湾の巨匠侯孝賢(ホウ・シャオシェン)の代表作で1989年ヴェネツィア映画祭のグランプリ作品。
ぐりが最も好きな映画のひとつです。
舞台は台湾北部の港町基隆、1945年第二次大戦の終結により半世紀以上に及んだ日本統治から台湾が開放され、49年国共内戦に敗れた国民党軍が台北を臨時首都に定めるまでの4年間を、町で居酒屋を経営する林一家の崩壊を通じて描いた“歴史的悲劇”の物語。

歴史的悲劇と云っても史実にはそれほど忠実ではないらしいです。公開当時は国民党政府による40年間の戒厳令が解かれて間もなく、厳しい言論統制の反動と作品のトーンのあまりのリアルさに現地台湾では「これはノンフィクションではないか」「いや捏造だ」と云ったような論争も巻き起こったそうですが、実際には全くのフィクションであり、監督も脚本家も製作者も政治的な意図は一切なかったようです。
確かに田村志津枝著『悲情城市の人びと』やその他の資料を読む限りでは映画『悲情城市』はあくまで虚構の物語であり、時代に翻弄される悲しくも平凡な愛すべき人々の姿を淡々と描いたホームドラマと云うべきでしょう。
ただそれはそれとして、国策映画ではなくフェアネスな国際的評価を集めたこの映画が、未だに終わらない日中戦争と内戦の燻りの中を生きる中国・台湾の人々にとって大きな意味を持っているのもまた事実だろうとは思います。

『悲情城市』のラストでは、身の危険を察知した主人公・文清(梁朝偉トニー・レオン)が妻子とともに記念写真を撮ります。ごくありふれた家族写真の中で夫妻の顔は凍りついたようにこわばっている。
『悲情城市の人びと』で著者の田村氏は映画のワンシーンと同じように処刑前に日本の歌謡曲「幌馬車の唄」を歌った政治犯がいたと訊いて遺族を訪ねていく。長い抗日戦争を戦って祖国に帰って来た愛国者が死出の旅に歌ったこの曲を、本人は死ぬまで日本の歌だとは知らなかったと云うからせつない。
いずれにせよこの時代を生きた人々には、愛国心や民族主義はさておいてもとにかく平和と故郷を愛する心と人は如何に死ぬべきかと云う心構えのようなものがあったように感じられる、そんな映画、そんな本です。
畳敷きに障子襖の日本家屋に住んで日本語交じりの台湾語と北京語・上海語・広東語・日本語を交えて会話し、祖国である筈の中国政府に必死に抵抗する彼らのドラマは、他国の侵略を受けたことのない日本人にとってなかなか理解しにくい複雑な被統治国意識を、穏やかにやさしく表現した物語でもあります。

『悲情城市』と『悲情城市の人びと』、併せてオススメの映画と本です。泣けますぜ。

ところでこの映画に出て国際的に注目を集めた梁朝偉は当時27歳。ちょうど今の劉燁(リウ・イエ)と同世代ですね。今観るとやっぱりこのふたり似てます。容貌がと云うより俳優としての質が似てる。訴えかけるようなまなざし、純真な表情、優しいようでしなやかに強い精神性。
この映画でのトニーはいろんなとこで「他の出演者の演技に比べてオーバーアクションだ」と云うような批判を受けてますが、ぐりは個人的にはそうは思わないですね。別に気になりません。聴覚障害者と云う設定のせいかもしれませんが。
文清(トニー)の兄・文雄(陳松勇チェン・ソンユン)の部下・阿嘉を演じた張嘉年(ケニー・チャン)はこないだ観た『運転手の恋』で主人公のお父さんを演じてました。15年前と全然変わってなくてビックリしました。

クリストファー・ドイル著『ブエノスアイレス飛行記』

2005年01月15日 | book
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映画『ブエノスアイレス』の撮影監督クリストファー・ドイルの制作日記。
アルゼンチンでのロケ前のプリプロダクション段階から4ヶ月間に及んだ撮影を経てカンヌ映画祭前の編集過程までが書かれている。
日記と云ってもどの項にも日付けはなく、どちらかと云えば素の感情や感覚を主に書き留めたような散文的な文章で、ドイル自身の撮影による写真集も兼ねていて、具体的な“撮影日記”のような内容が期待出来るような本ではない。あえてそういうメイキング本のような描写を排除して作品の空気を守ろうとしたような形跡も見受けられる。
ただそれでもところどころに登場する専門用語(訳注付き)を含む映画に詳しくない人間にとってはおそらく意味不明であろうと思われる記述は、ぐり自身が映画の仕事に関わるようになった今再読してみて改めて当時の撮影状況の特異さをひしひしと伺わせる。そりゃスタッフも逃げるだろうし、張國榮(レスリー・チャン)だって怒るだろうさ。
それだけにこの作品に賭けた出演者やスタッフの思いの深さ、熱さがより強く感じられる本です。

ところでこの本に使用されている写真は全てドイルが撮影の合間に撮ったものだが、映画『ブエノスアイレス』にはれっきとしたスチールカメラマンがいた。王家衛(ウォン・カーウァイ)組常連で最近は人気のファッションフォトグラファーでありグラフィックデザイン集団Shya-la-laの代表でも知られるウィン・シャ氏である。
不思議なのはこのウィン・シャが撮ったスチール写真とドイルの写真とのトーンにほとんど差異が見られないこと。パンフレットやポストカードなどグッズの中には両者の写真が混在して使用されている場合もあるのだが、当然キャプションもついてないしハッキリ云ってどの写真がウィン・シャでどれがドイルのなのか全く見分けがつかない。
いくら同じ現場で撮ったとは云え、使用しているフィルムやカメラの機種、レンズが違えば似た撮影スタイルの人物が撮っても色調や光の具合・構図などの面でかなり異なったテイストの写真が撮れる筈である。
これはやはり「似た雰囲気の写真」を制作会社側でセレクトしかつ両者が似るように手を加えて各方面に使用したとしか思えず、だとすれば、ラフにざらついた無造作な雰囲気のあの写真たちにも、オーガナイザー側のそれなりの意図が払われていると云うことになる。

そんなところに、カジュアルなようで意外にしっかりした王家衛のブランド戦略を感じた8年ぶりの再読でした。

目を閉じて

2005年01月13日 | movie
『オールド・ボーイ』
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とっても韓国映画らしい作品でした。
作家の若々しさ、瑞々しさ、勢いをすごく感じる。古今東西のいろんな映画のおいしいとこを持って来てスッキリまとめてスタイリッシュに仕上げるってとこが如実に今の韓国映画を象徴してる。オリジナリティってほどのものはないけどさ、完成度はあるよ。チェ・ミンシクとユ・ジテの演技も凄まじかったし。特にユ・ジテは一見「フツーの大人しい男の子」風のイメージが強いので驚きました。あとナイスバディにも(笑)。カン・へジョンは若いのに頑張ってましたね。可愛かった。
ストーリーは救いがなさ過ぎて「面白かった」とはなかなか云いにくいです。分かるよ。うん。何十年経とうが決して薄れない、消えることのない深い深い心の傷。相手を殺すだけでは物足りないほど強い憎しみ、恨み。だからこういうテーマをエンターテインメント作品の題材に選んだ監督の度量と情熱は確かに凄いと思う。でも後味は悪いし、世界観の構成に独創性があまりないので芸術的な傑作とまではいかない。一見に値する映画ではあるけど、ちょっと中途半端。
痛いと云うかエグいシーンが多くてぐりは何度も目を背けたり閉じたりしちゃいました。もともと暴力シーンは苦手だけど、この映画のそれは流石にコワ過ぎて(観てないけど)直視出来なかったです。すいません根性なしで〜。