落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

無理解の器に盛られた偏見に支えられた不自然な社会

2014年05月13日 | movie
『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』

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札幌の探偵(大泉洋)が懇意にしていたゲイバーのマサコ(ゴリ)が特技のマジックでコンテストに出場、優勝した矢先に何者かに殺害される。
警察の捜査も進展しない中、マサコが地元の政治家・橡脇(渡部篤郎)のかつての恋人であったことがわかり、事件の真相を明らかにしようとする探偵たちを脅す勢力が現われる。

前にたまたまテレビで観た一作めがまあまあおもしろかったので、二作めもテレビで鑑賞。
続編は一作めより落ちるというセオリー通り、まったくもってさっぱり見どころも何もない見事な駄作だったけど、ただそれだけなら単に時間の無駄だったというだけで終わる。観たこと自体忘れればそれでいい。
けど、この映画にはそこで済ませてはいけない部分があった。
今日のレビューはオールネタバレですので、今後この映画を見るご予定の方はスルーでお願いいたします。

物語の軸は社会の注目と支持を集める有名政治家(=権力)と名もない一介の探偵である主人公(=個人)との戦いという構図になっている。
殺されたマサコが新宿で働いていた20代のころ橡脇と交際していたことが公然の秘密となっていたことから、関係者をとりまく有象無象が事件を探る探偵の行く先々に首を突っ込んでくる。ススキノを仕切るヤクザや右翼、橡脇を支持する脱原発派の市民グループまでが、マサコの死の真実を闇から闇に葬り去ろうとあらゆる手段で探偵を襲う。だが彼らはその暴力の根拠をいっさい持っていない。事実はどうあれとにかく探偵が邪魔だから、目障りだから脅すだけ。全員動機がみんないっしょ。そんな主体性のカケラもない格闘シーンの繰返しで映画がおもしろくなるわけがない。観客をバカにしている。
挙げ句に事件の真相は政治も過去のしがらみも何も関係のないレイシストの仕業だったというから背中が寒くなる。しかもそのレイシストがススキノで風俗店の呼び込みをしているフリーターという設定で、彼はその罪を認めた直後に交通事故で死んでしまう。探偵に事件の調査を依頼したヴァイオリニスト(尾野真千子)はなぜかクライマックスになるまでマサコとの関係を偽っている。お涙頂戴にもならない時代遅れの告白をそこまでひっぱる意味がまったくわからない。まあ他にも意味不明な箇所が多すぎるんだけど。
映画はただのエンターテインメントだが、コメディ映画にしてもあまりにもリアリティがなさすぎる。でもこのリアリティのなさにこそ、われわれは目を向けなくてはならないのではないかとふと思った。

世の中で起きていることの責任をなにひとつ感じることなく、大メディアとお上のいうことを無批判に鵜呑みにして、都合の悪いことは全部誰か知らない人のせい、問題はどこかの誰かがいつか自動的に解決してくれるものと思いこんで暮らしている多くのおめでたい人たちにとって、揃ってマスクをかけ集団でバットを振り回す暴力的な過激派(いまどきそんなのどこにいるのか知らないけど)と、安全な社会と人権を守るために平和的に戦っている市民グループの区別などどうでもいいのかもしれない。感情のままにマイノリティを貶め傷つけるのは低学歴で低所得の生活困窮者であって、自分たちとはまったく別の人種だと決めつけておくのが彼らにとっての安心なのかもしれない。
そういう人々のひとりが何の臆面もなくこういう出鱈目小説を書いて、大企業が何も考えずに無反省に大金つぎ込んで映画にして日本全国の映画館で上映して、多くの観衆が何の違和感もなく観ておもしろがっているのが現実社会だとしたらどうだろう。たかが娯楽作品かもしれない。けど、真実は虚構に宿るともいう。こういう駄作にも真実があるとしたら、その愚かさこそ真実かもしれないと思うのはうがち過ぎだろうか。

まずは人権や環境保護のために働いている人間も、自分たちが現実社会からどう見えているのかはクールに受け止めておくべきだろうとは思う。
そういう意味では、いいかんじに頭が冷える映画ではありました。うん。
絵に描いたような駄作だけどね。『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』も衝撃的な駄作だったけどいい勝負だと思う。あと原作者の知性はちょっと残念すぎるね(原作読んでないけど)。大泉洋にも相当がっかりだね。もとから好きではなかったけど、しょーじきキライになっちゃいました。はははははー。松田龍平は今回アクションシーンしか活躍どころがなかったのが残念。あ、だからつまんなかったのかもー。

東北のぐりとぐら

2014年05月07日 | 復興支援レポート
5月2日(金)~6日(火)の日程で宮城県気仙沼市唐桑半島に行って来た。

3年前、迷って悩んで、震災後初めて東北入りしたのがGWだった(当時の記事)。電気もガスも水道も泊まるべき屋根のある施設もなければ風呂もない、半径30km圏内にコンビニやスーパーやガソリンスタンドも含め営業している店は一軒もない。郵便局も銀行も電車もバスもなかった。寒くて凍えながらテントの中で眠れない夜をしのぎつつ屋外キッチンで毎日千人分の食事をつくり続けた日々の経験は、ぐりの人生観や価値観をまったく別のものに変えてしまった。
以来GWが巡ってくるたびに、あの死に物狂いの石巻のキッチンを思い出す。あって当り前のものなどこの世に何もないことを知り、すべての運命はいつ誰に降りかかっても不思議ではないことを知り、果てしない優しさこそが人の強さであることを知った、東北の日々のことを。

今回のミッションはこの冬の大雪で倒壊した空き家の解体とその廃材の処分、それとは別に大雪で倒壊した倉庫の修復、津波の後に立ち枯れた樹木を伐採したことで流出した斜面の修復。見事に全部土方である。
移動を除いて3日間、がっつり土方のつもりで作業着やら長靴やら革手袋やら揃えて気合いを入れて東北入りしたのですがー。現実には、民宿のお台所のお手伝いでした。
というのも、土方作業の依頼者のひとりが民宿を経営しており。もともと津波の被災者で漁業者でもあるそのお宅ではこれまでにもさんざっぱらお世話になっている。われわれボランティアにとっては半ば身内のような方々でもある。その方に「ぐりちゃんは台所お願い」といわれれば断る理由もない。連休で滞在者も多い。やることはいっぱいある。
そして3日間朝から晩まで、お料理と皿洗い三昧の日々を過ごして終わった。

でもまあ、これはこれで楽しい。もともと料理は嫌いではないし、つくったものを人に食べてもらうのもどちらかといえば好きな方だ。皿洗いはもっと好きだし。
今回はたまたま元寿司職人の板前さんも手伝いに来ていて、献立は彼が決めてぐりはただ手伝うだけだから気楽なものだ。とはいえ学生時代に懐石コースを出す日本料理店でしばらくアルバイトしていたので、お膳の並べ方や料理の盛り方にはうっすら覚えがある。新鮮この上ない最高級の海産物や、見たことも聞いたこともない珍しい食材が、魔法のように美味しい料理に変身するのを傍で見ているのはほんとうに楽しかった。
ここでの滞在ではしょっちゅう初めて食べるものに出くわすのだが、今回の初対面はマグロの卵にタラのお刺身とお寿司、ホタテの卵にダチョウの卵。なんでこんなところにダチョウの卵があるのかはよくわからなかったけど、電動ドリルで殻に穴をあけて中身を取り出し、40枚のホットケーキと大きな出汁巻き卵をつくった。
地域で活動する他のボランティアチームの宴会では大量の居酒屋メニューをつくった。果てしなく鶏肉を揚げ続けながら、3年前の石巻のキッチンを思い出す。ただ食べてくれる人に心から楽しんでもらうために料理をすることの喜びを知った、寒い寒いGWのことを。

あれから3年が経った。
ぐりの生活環境は激変したけど、東北の復興の道程はまだまだ遠い。確かに少しずつ進んではいる。だがその歩みのじれったさには既に多くの人が怒りも苛立ちも感じなくなっている。それが正しいことなのかどうかはぐりにはわからない。
なるようにしかならないと構える以外に正解があるのなら、本気で探したいとは思うのだけれど、当事者でないぐりに何が出来るというのだろうか。
ただ皆さんの言葉を黙って聞いて、皆さんの気持ちを受け入れる以外に、出来ることはあるのだろうか。


唐桑半島、鮪立(しびたち)の入江から早馬山を臨む。

復興ボランティアレポート

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