落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

バカで凶暴で優しくて

2010年05月28日 | movie
『ドロップ』

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不良になりたくて私立中学から公立校に転校したヒロシ(成宮寛貴)は、転校初日に同じ学校の不良のリーダー・達也(水嶋ヒロ)に呼び出され殴られるが、意気投合してあっという間に仲間に溶け込んでしまう。
以後毎日のようにケンカに明け暮れる生活が続くも、やがて中学卒業。ヒロシは進学した高校をケンカで退学させられ、姉(中越典子)の恋人(上地雄輔)の薦めで鳶職を目指すことになるのだが・・・。

おもしろかったー。笑えたー。
もう完全にマンガですなこりゃ。ハイ。なんか懐かしーなー。ぐりが中学のころは『ビー・バップ・ハイスクール』とゆー似たよーなマンガがありまして。マンガは読んでなかったけど映画は観たなあ。しかも家族で。そんで観たあと口調がヤンキー調に染まっちゃって親が閉口してた(笑)。
あれから四半世紀経ったけど、ヤンキーは少年の永遠の憧れなんだろーなー。映画も毎年なんかしらつくられて、ちゃんとヒットしてるもんね。
この作品の舞台は現代なのかなあ?まあ中学生を演じる出演者が全員20代以上だから、背景とかリアリティなんかどーでもいーのかもしんないけど、全体に雰囲気がちょっとノスタルジックなのが気になったので。

内容は全然ない。観終わってストーリーを思い出そうとしてもマジでどんな話だったかさっぱり思い出せないくらい、ない。全尺の半分くらいが乱闘シーンで、乱闘と乱闘の間に「ぷぷっ」と笑えるシーンが挟まってて、全部がその繰り返しでそれ以外なんにもない。
でもちゃんとおもしろい。観てて楽しい。
たぶん登場人物がみんな優しいからだと思う。バカだし凶暴だけど、彼らなりに優しい。彼らのルールは社会一般のルールとは相当かけ離れてるけど、それでも一応のスジは通ってる。キャラクター設定もいい。アイドル顔なのに極悪非道なカリスマヤンキー達也と、理由もなく不良になりたくて達也とつるんでいてもどこかでモラルを捨てきれない常識人のヒロシとゆー、デコボコなふたりの対比がおもしろい。贅沢をいえば達也にもっとカリスマ性をバリバリにキメてほしかったってとこはあるけどね。カリスマっちゅー設定のわりにはイマイチ影薄かったかも。たぶんカメラワークとか編集のせいかと思いますが。
だって水嶋ヒロのヴィジュアルには問題ないでしょ(爆)。ホントにマンガみたいなんだもん。こんなプロポーションの人が現実にいるんだあ、ってくらいどっからどう撮られてもシルエットが美しい。
成宮くんはすごいおもしろかった。彼のパブリックイメージってぐりの中では「チャラい」「微エロ」「中性的」みたいな印象だったんだけど、この映画のヒロシくんはまったくの別人でした。ちゃんとお笑い系だった。
あとは達也の父親(遠藤憲一)と刑事(哀川翔)のかけあいが超おもろかった。

ところでロケ場所が前に仕事で行ったとこばっかしで、それも超懐かしかった。時間、止まってんだなあ。

こことか(ぐり撮影)。


こことか(ぐり撮影)。
両方とも乱闘シーンで出て来ます。

Nobody's fool

2010年05月23日 | TV
『誰も守れない』

昨年の映画『誰も守ってくれない』の公開日に放送されたドラマバージョン。
映画版の主人公たちが4ヶ月前に遭遇した事件を背景に、映画版のテーマである「加害者家族の保護」とは対極にある「被害者家族の保護」を描く。
池袋を管轄とする東豊島署暴力犯係の刑事・勝浦(佐藤浩市)と三島(松田龍平)は、チンピラ風の男に襲われた企業重役(山本圭)の事件を担当する。被害者の勤務先の黒い噂が動機と疑われるが、やがて被害者の娘で精神科医の令子(木村佳乃)にも根も葉もないデマが取り沙汰されるようになり・・・。

おもしろかったー。
映画公開時も一部で「これは映画よりドラマ版の方がおもしろいんじゃないか」とゆー評判も小耳に挟みましたが(harryさんその節はどーも)。まさに。ぐりは映画よりこっちのが全然好きですねえ。
いや、地味っちゃ地味なんですよ。一応刑事ドラマだから事件はあるんだけど、そんなに大きな、派手な事件じゃない。けどそこはさすがドラマの『踊る大捜査線』チームです。派手じゃなくても、地味でも、ちゃんとテンポよくドラマを転がしていく。
このドラマには『踊る』みたいに賑やかに多様なキャラは登場しないけど、そのぶん主人公ふたりのかけあいが素晴しく楽しい。とくにいつも意味不明にヘラヘラ笑ってるわりに、画面には二度しか登場しない恋人の影に翻弄され続ける三島の人物造形は秀逸でした。松田龍平ってこんな芝居うまかったっけ(失礼過ぎ)。終盤の××なシーンの演技にも圧倒されちゃいました。デビュー以来ずっと“優作の息子”といわれ続けた彼だけど、正直、今作で初めて、誇張でも何でもなく「血は争えない」と思ってしまった。

このドラマ、刑事ドラマなのに刑事がろくに活躍しない。そういう意味ではまっとうな刑事ドラマやサスペンスが好きな視聴者には物足りないかもしれない。
でも、小さな事件を地道に、それこそ地面に這いつくばるように細かく捜査し、いつ終わるとも知れない警護にひたすら堪え、会えない家族や恋人を思い、自らの無力さや愚かさや不運を嘆きながらも、日々追われるように取り憑かれたように淡々と働く主人公たちの姿は、人として痛々しいほどリアルで生々しくて、自然と「頑張れ」と応援したくなる。
ただ逆に、健康オタクのヤクザ(大杉漣)がうそぶくように、組織に属さない犯罪者予備軍やネットやケータイという顔のみえない新興メディアに、警察があまりに乗り遅れ過ぎているような描写はやはりいただけない。これはどう考えても制作者側の不勉強としかいいようがないのではないだろうか。いまどきの警察はそこまでボンクラじゃないと思うよ。

岩松了や森田芳光がチョイ役で一瞬出て来るシーンがめちゃめちゃよかったです。演技はうまくないんだけど、なんでしょーね?あのリアル感。むしろ演技してないから?藤本美貴のキャバ嬢役は似合い過ぎててシャレになんなかった。そして成宮寛貴は何やっても成宮寛貴。観ててちょっと困っちゃうんだよね彼は・・・毎回何をどうしたいのかよくわからない。ヘタではないと思うんだけど、このドラマで重要な「お手軽な悪意の恐怖」を象徴する人物としてはどうしようもなく弱い。
池袋とゆー、東京でも一種独特の文化圏をもつ町の情景が活かされた映像表現や、幅広いジャンルを網羅した音楽もよかったです。
この映画に描かれる「警察の被害者保護」については、何年か前に神戸連続児童殺傷事件の被害者遺族の手記で読んだことがある。実際の任務では、ドラマよりもはるかに緻密にしかも長期的に、肉親や友人でもそこまでやれないだろうというほどの手厚い保護措置がとられる(事件や所轄によっても差異はあるものと思われる)。おそらくそうした保護なしには、犯罪の被害に遭って深く傷ついた家族は平常心や最低限の日常を到底取り戻すことなどできはしないだろう。
映画版の方はあんまし好きになれなかったぐりですが、このドラマはすごくよかったので、いずれシリーズにしてもう一度同じテーマをもっとキチンとやってほしいかなと思いました。

ちなみにこのドラマはDVD化されてないらしい。なぜに。
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これは映画の方。

フェロモンカメラ

2010年05月22日 | movie
『46億年の恋』

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刑務所内で乱暴者で恐れられていた囚人・香月(安藤政信)が、有吉(松田龍平)という同房の囚人に殺害される。
別の殺人罪で偶然同じ日に収監されたという以外に、まったく何の共通点もない対照的なふたりだったが、なぜか香月は何かと有吉を庇い、やがて有吉はそんな香月に惹かれていく。
有吉の香月殺害の動機はいったい何だったのか。
2005年ベルリン国際映画祭パノラマ部門出品作。

公開当時もちょびっと観たいかも?とか思ってた記憶はあるんだけど・・・なんかいろいろ評判聞いてひよってしまいー。
だってちょーシュールなんやもん・・・予告編がさあ。ぶっちゃけドン引きでしたん。予告編、重要ですよねー。予告編でソンしてる映画ってたぶんいっぱいあると思う。逆に本編観てみたら予告編全部ウソやん!な映画もいっぱいあるけど。もしくは、予告編以外いいとこ全然ない映画とか。
マ、この映画は前者ですね。予告編がシュール過ぎかも。いや本編もシュールなんだけど、実際観てみたらちゃんと観れるの。全然さぶくない。さすが三池監督。
回想を除いて全編ほとんどワンシチュエーションだから、かなり舞台っぽいつくりではあるけど、そーゆーのが苦手な人でなければ普通に楽しめると思う。

意外だったのは主演の安藤政信と松田龍平の演技。ふたりとも、アレ?この人こんな人だっけ?みたいな、従来のパブリックイメージを見事にうまく裏切っている。
安藤政信の方は『昭和歌謡大全集』のすぐ殺されちゃうランボー少年役に微妙にカブッてなくもないけど、劇中ロクに喋りもせず登場するたび毎度とにかく暴れっぱとゆー狂ったキャラが似合い過ぎです。それにものすごく色っぽい。役づくりのためかバルクアップした肉体美を惜し気もなく披露するシーンがやたらに多いんだけど、眼福でございましたん。しかしあのタトゥーだかボディペイントだかが、シーンによってカットによってあったりなかったりするのが超気になりまくり。どっちかにしてくれい。
松田龍平はエラいヲトメな役で、これまたビックリするくらいぴったりです。彼の出演作は、どれも撮る方が本来素材であるはずの役者を持て余してるみたいな雰囲気が伝わって来て、なんとなく居心地悪い気分にさせられることが多くて、たぶん本人もそういう空気に対する抵抗感みたいなのがあったんじゃないかと思うんだけど、今回に限ってはそれがないんだよね。撮る方も撮られる方もさっぱりしてるというか堂々としてるというか潔いというか。
ふたりとも個性があまりにも強いから、これくらいアクの強い作品だとうまく中和されてちょうどよくなるってことなのかな?

安藤政信もそうだけど、松田龍平も劇中ほとんど喋らない。喋るのは全部脇役で、台詞といえば状況説明かもしくは抽象的な心象風景。
だから台詞によって直接的にストーリーを展開していくというような映画ではまったくない。確かに男性同士の恋愛がモチーフにはなってるけど、誰も言葉で愛や恋を語ったりはしない。松田龍平の「キミみたいになりたい」というのが唯一それっぽいカワイイ台詞といえなくもないけど。
逆に愛欲とゆーか肉欲を露骨に語るシーンはけっこうあって(映像には性表現はほとんどない)、男性にとっての「愛」の暴力性がすごくわかりやすく表現されてるなあと思って、なんだか感心してしまいました。魂の底から求めてやまない愛を同時に畏れるというか、恐れるとゆー微妙な心理。
言葉でいわないぶん、無言の視線の交錯やカメラワークや編集で、刑務所の中で高まっていく愛憎とふたりの主人公の間に流れる恋の電流が非常にうまく映像で表現されていて、さすが三池さんはテクニシャンだなあー、とそこも今さら感心してしまいましたん。ホント今さらですけど。

HERO meets HERO

2010年05月05日 | movie
『愛の言霊』

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いわゆるBL、ボーイズラブ映画。
このテの作品てほとんど観てない・・・と思う。たぶん。記憶にある限りでは。
いやいやいやちょっと待ちなはれやこないなインデックスまでつくっといて何をゆうとりますねんな、ってツッコミもどこやらから聞こえてきよりますけどもー。まあねえ、東京国際レズビアン&ゲイ映画祭に毎年行く程度のゲイ映画好き(注:ゲイ映画に限りませんが)ってことは認めますがー。
だがしかし。
ボーイズラブ映画とゲイ映画、もしくはボーイズラブコミック・小説とゲイ文学、とゆーとやっぱ違うと思う。
どっちかっちゅーとぐりはそーゆーカテゴライズにあんまし意味はないと思ってる方だけど、それでもそこはいっしょにしたくないなあと。
じゃあどこが違うのさ?っつーと、オーディエンスを限定するかしないかってとこだよね。簡単にいえば。ボーイズラブはBLファンありきでつくられてる。だから登場人物は美男子限定で女性はあんまりでてこないとか、ルールがあれこれあったりする。客観的にみれば完成度は二の次。映画なら20〜30年前のアイドル映画と似たよーなもんですかね。

いやいやいやちょっと待ちなはれや(再)ほとんど観てへんてゆうたやんかーと。何をもって完成度をうんぬんしよるんかと。
実をいうと何年か前、ブームになりかけた最初のころに公開された某作は仕事上のつきあいというか義理でチラ見したんですけどもー。
これが!もう!!唖然!!!とするくらいの超弩級の駄作でさあ(号泣)。観るのに使ったお金と時間、全部返せ!+罰金じゃコラ!!そこへなおれ!!!成敗してくれる!!!!たわけ者めが!!!!!みたいな。怒髪天に来たね。
てか情けなかった。お金を出して映画をつくろうという出資者がいて、同性愛者を演じるというリスクを冒しても出演しようという役者がいて、それなのにつくってる本人たちはどっからどー見てもやっつけ仕事。ありえんやろソレ?BLとかジャンル以前の問題やろがー!
ぜえぜえ。
なのに劇場公開&DVDが発売されたら結構儲かっちゃったらしく、その後も似たよーな作品がホイホイつくられ〜と。嗚呼。
最近はどーなんでしょーかねー?今となってはBLも既にひとつの産業と化した感がありますけれどもー。V系とかJ系といえばそっちネタは外せないみたいだし、某球技ミュージカル人気もスゴイしね。

そんなワケで敬遠してたBL映画。『愛の言霊』。
3年前の作品だけど、観たのはつい最近。世の中狭くてですね。これもホニャララつながりで・・・えーと放置してすいません。
いやー。おもしろかった(爆)。あ、ホントに。マジで。
普通におもしろかったです。いい作品ですね。ハイ。
これも原作はコミック。あらすじとしては、高校時代からの親友だったふたりの男の子(大谷晋也:徳山秀典/立花都 :齋藤ヤスカ)が大学に入って恋人同士になって同棲を始めるんだけど、そろそろアパートの更新とゆータイミングで元クラスメートの可愛い女の子(水沢雪子:松岡璃奈子)と再会してビミョーな雰囲気に〜みたいな、三角関係のお話。
青春映画ですね。チョー甘酸っぱいっす。シチュエーションなんか思いっきりありきたりだし、展開もお約束とゆーか古典的とゆーか、手垢ベッタベタのギットギトですよ。

でもこれが意外に爽やかで、観ててすごくすがすがしい。気持ちいい。
とりあえず脚本がしっかりしてる。どこにでもいるいまどきのフツーの若者の、日常の些細な感情の起伏を自然に描写してるんだよね。だからあり得ないような大事件もなければギョッとするような偶然も起こらないし、流れに無理がない。落ち着いて観てられる。
表向きはルームシェアしてる親友なんだけどそれ以上の事実は周囲に伝えられない葛藤とか、どんなに好きでも将来を約束できない不安感とか、相手には女の子の方がふさわしいのではとつい揺れ動く恋心とか、同性愛者独特の感覚も決して重くなくさりげなく描かれてるのもある意味新鮮だったかな。
それから演出が非常に繊細。押しつけがましくなくて、それでいてディテールに神経が行き届いてる。何より、ふたりがいっしょにいる、傍にいるだけで満たされる、という恋人同士のあたたかく優しい空気が素直に伝わってくる。なのにベタベタしたところがなくて、モノローグでいうところの「親友みたいな、兄弟みたいな」さっぱりした清潔な距離感も全編でキープしている。めちゃめちゃ健全。微笑ましいとゆーのがぴったりです。
なにしろボーイズラブといっても性描写がほぼ皆無。あってもキス+軽くイチャコラ程度、親子で観るのにちょうどいいくらいです(いい過ぎか)。

俳優の演技もほどよく抑制が利いてて、かなり気合い入れて役づくりしたんだなあって感じがする。特に驚いたのは、主人公ふたりの友人・須之内祥吾を演じた加々美正史の演技。アメリカに彼氏がいる帰国子女の設定なんだけど、リアルにそう見えるんだよね。出番も少ないしクドさもないのに、絶妙にナマナマしい。うまいです。
もちろん主役ふたりの演技もいい。どっちも今回初めて観たけど、こんなに上手い人だったとはねえ(失礼過ぎ)。ホントすいません・・・だって特撮ヒーローでしょ?とか思っててさ・・・偏見だよね・・・ゴメン。
モノローグが多い徳山秀典は声がセクシー。観終わってから気づいたんだけど、彼は挿入歌と主題歌も歌ってる。歌も上手いです。齋藤ヤスカの方は発声がビミョーにヒーロー調or演劇調。それにしてもこの子はあり得ないくらいアタマ小さい&異様に華奢&超色白。徳山秀典は朴訥キャラに似合わないギャル男風盛り髪が若干気になり。
ところでこのふたりはあのーイケメン?なんですかね?近頃はこーゆーの美形ってゆーのか?ぐりはよーわからんのですが。まあ作品を観てるうちにだんだん「ひょっとしたらカワイイのかも」とか思えてこなくもないけど・・・逆に両者とも健康的に男の子らしくて、ヘンに綺麗な美少年じゃないってとこはお耽美じゃなくてむしろ作品にあってるのか。
ふたりに俄然興味が湧いてさっそくググってみたんですがー。イヤ3年も経つとね、男の子もずいぶん変わるー・・・よね?徳山秀典は美白&茶髪&カラコンですっかりホスト化してるし(最近やったホスト役のせいであろー)、齋藤ヤスカはエラい妖艶になっちゃってもうほとんどビジュアル系やがな(衝撃画像)。
や、役者って大変だ・・・ね・・・(撃沈)。

設定に斬新なところがないぶん、当り前の青春のひとこまをあくまでもストレートに丁寧に、でも気取らずにバランスよく再現したらこうなりました、とゆー佳作の見本みたいな作品。「BLだからどーの」的な気負いなんかなくて、屈託なく単純に真面目につくってる印象。
もうじき二作めが公開されるらしーけど・・・どうでしょう(戦々恐々>爆)。出演者が違うけど監督は同じなのかー。
とりあえず、この作品はなかなかいいです。美術とか照明とか音響設計とか音楽もいいし、完成度に文句なし(けっこういいシーンでマイクケーブルがバレてたのは見なかったことにします)。確かにB級には違いないけど、BLなんとゆージャンルにくくっとくのはちょっともったいないかもしれない。BLでしょ?低予算でしょ?単館レイトショーでしょ?とかそういう偏見&言い訳はやめよーゼイ♪とゆー意味では、必見かも。
でもないか。どーやねん。

無関心の川

2010年05月01日 | movie
『フローズン・リバー』

舞台はニューヨーク州最北部、セントローレンス川を挟んでカナダに接する町。
新居の購入費用を夫に持ち逃げされたレイ(メリッサ・レオ)は、支払い期限の迫った残金のために、ふとしたきっかけで知りあった先住民モホーク族のライラ(ミスティ・アッパム)とともに密入国者の移送という仕事に手を染める。
違法と知りながら毎夜凍った川を渡る危険な稼業にはまりこんでいくレイだが、ある夜乗せたパキスタン人の荷物に不審を抱いた彼女は・・・。
2008年サンダンス映画祭グランプリ作品。

『クロッシング』の直後にこれを観たのはちょっと失敗だったかもしれない。
だってものの見事に対称的な作品だから。『クロッシング』はアジア映画で『フローズン・リバー』はアメリカ映画。『クロッシング』はビッグバジェットのスター映画、『フローズン・リバー』は新人監督のインディペンデント映画。『クロッシング』の題材は国境を越える人々、『フローズン・リバー』の題材はそれを仲介する側=搾取する側、『クロッシング』の主人公たちは男性で、『フローズン・リバー』の主人公たちは女性。エンディングも完全に対極になっている。
まあしかしある意味では、同じ題材をそれぞれ裏と表から描いているともいえるかもしれない。そう思えば、どちらも見逃しがたい作品ではある。

『クロッシング』のレビューでも家族、家庭のもろさについて書いたけど、この映画にも家庭が重要なファクターとして登場する。
ヒロインは家庭を守るために手段を選ばない。家を捨てて出ていった夫には目もくれず(ほとんど探しもしない)、これから息子ふたりと暮していく新しい家をちゃんと手に入れるにはどうすればいいか、それしかアタマにない。自分のクルマのトランクにつめこむ異邦人は、彼女にとっては人間ですらない。トランクにつめこまれる以前の彼らの暮らしも、トランクから下ろされた後の暮らしも、彼女には徹頭徹尾完璧に関心の外にある。
しかし、危険な仕事の過程で彼女は自身の残酷さと身勝手さに徐々に気づいていく。助手席に乗っているライラにも家庭と生活があるように、トランクに乗せられた密入国者にも人生がある。そんな当り前のことから、彼女は自分がわざと目を疎らしていたことを、最後の最後になって初めて認めるのだ。

賞レースでは主演のメリッサ・レオに評価が集まっていたようだが、ぐり的にはライラを演じたミスティ・アッパムの方が印象的だった。マッチョな体型であまり美人とはいえないし、全編にわたってむすっとぶすくれた表情がちょっと怖いのだが、声がかわいらしい。ラストになってやっと見せる笑顔がキュートだ。
先住民保留区とアメリカ政府との政治的関係の一端を描いた部分も非常に興味深かった。この題材でまた別な作品がつくられたら是非観たいと思う。
この映画の中で、男と女の「家」に対する向きあい方がまったく逆方向に描かれていたのが非常におもしろかった。ヒロインは夫や今の家には関心を示さず新居のことしか考えていないが、息子(チャーリー・マクダーモット)は自分たちを捨てた父親を恋しがり、父が買い与えた日用品や遊具に執着する。それらがヒロインにとって何の価値もなくむしろ苦々しい記憶を呼びおこすものであっても、男の子にとってそれは宝物に違いないのだ。それぞれに現状維持を最優先に考えているようで、その方向性が完全に食い違っている。
リアリティは別として、いっしょに暮している家族の思いのベクトルの対比としてはすごくわかりやすくてよかったです。