落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

シン・レッド・ライン

2003年08月24日 | movie
『シン・レッド・ライン』
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実は私は戦争映画があんまり好きではありません。
この作品も公開当時アカデミー賞最有力候補と云われ大変な評判ではあったけど、観る気がしませんでした。
と云ってももともとはそうでもなくて、若かりし頃は好んで何本か観たことはあります。年齢のせいかだんだん「暴力描写」が苦手になり、だから戦争映画に限らず暴力を題材にした映画全部を敬遠するようになってしまいました。
やっぱりせっかく映画を観るんなら楽しみたい。時間も勿体ないし。

ただこの映画はいつか観ないとなと思わないでもなくて、先日知り合いに強く薦められたことだし、じゃあこの際だからとレンタルしてみました。
結論から云えばこれはある意味では戦争映画ではないです。どっちかと云えば反戦映画の部類に入るかと思われます。
雰囲気としては『地獄の黙示録』の再編集版に似ている。まぁアレはベトナム戦争だけど(『シン…』は第二次世界大戦)。
映像が綺麗で、モノローグが多くて、叙情的。戦場で叙情もクソもなかろーがと云うツッコミは置いといたとして、『地獄…』と違うのは全然スペクタクルじゃないってところでしょうか。

この映画にはヒーローが全然出て来ません。大体主人公もいない。登場人物=兵士それぞれに正義があり、恐怖があり、人生があり、夢がある、と云う至ってマトモと云うかニュートラルかつパーソナルなアプローチで、戦争と云う大量殺戮が淡々と描かれます。
だから全くドラマチックじゃない。ひたすら任務の遂行に徹する兵士。任務が成功しても誰ひとり嬉しそうじゃない。休暇ではしゃいだり、家族からの手紙を受取る時は楽しそうなのに、彼らの中で既に戦争の「大義名分」が決定的に失われてしまっている、そんなどこか冷めたような戦場。
でもドラマチックでないゆえに、戦争の無意味さがしんしんと迫って来る、そう云う作品です。

同じ第二次大戦中の、ホロコーストを描いた『戦場のピアニスト』で主演男優賞を射止めたエイドリアン・ブロディがこの映画にも出ていて、観てて彼にばっかり目がいくのがちょっと困った(笑)。
ロケ地の自然の美しさが妙に印象に残りました。

八月のかりゆし

2003年08月23日 | movie
『八月のかりゆし』
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もーね、ダメっすわ。日本映画こんなことやってたらマジいかんッスよ。うん。
出だしコピぺしました。ダルイので。
この高橋巖と云う監督さんは以前お仕事でご一緒したことがあります。けっこー微妙な監督です。「なんでこんな仕事ぶりで監督続けられんのかな・・・」なんと云う根本的な疑問を抱かずにはおれない、そんな監督です。ボロカスやなアタシ・・・。

とは云っても前半3分の1くらいはなかなか面白いです。
コレも松田龍平主演なんですが、龍平氏なかなかハジケてます。非常にリラックスしてます。彼のこれまでの印象と云えば、雰囲気は悪くないのにいつもどことなく居心地が悪そうな堅苦しく強張った演技をする人、と云う感じだったんだけど、『八月…』では沖縄ロケで開放的な気分だったのか、珍しく年齢相応にキャピキャピしてて可愛いです。
沖縄のどこまでも美しい大自然、可愛い龍平クン、素敵ですね。あははははー。

しかし途中で第二次世界大戦末期の沖縄戦が絡んで来たあたりから雲行きが怪しくなって来ます。話はバラバラ、演出ゆるゆる、編集も破綻してます。もう全然意味分からん。
松田龍平のプロモビデオとしても、沖縄観光イメージビデオとしてさえ、上手く機能してるとは云いきれないです。ハッキリ云えば大失敗ですな。
とりあえずもっと脚本ちゃんと練ろうよ。そんで意味不明な実景やたら挿入するのも止めようよ。あと下手にトリッキーな編集もヤメましょう。貧乏臭いからさ。いなくて良いキャラクターは最初から入れるな。勿体ないから。
沖縄映画と云えば昔『ウンタマギルー』と云うすっごく素敵な不思議映画があったんだけどね。
やっぱどれだけ可愛い子出してようが、どれだけ綺麗なところでロケしてようが、しっかりしたつくり方をしない限りは結局出演者のキャラに甘えた映画、風景美に甘えた映画以上のものが出来るワケが無い。当り前の話です。

しかし松田龍平はこんなんばっか出てて良いんですかね。いかんのじゃないですかね。事務所が近所だからってワケでもないですが(道挟んで向かいのマンションだったりする)なんか心配です。逸材なだけに、ちょっと期待してるんだけどなぁ・・・。

ナイン・ソウルズ

2003年08月22日 | movie
『ナイン・ソウルズ』
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もーね、ダメっすわ。日本映画こんなことやってたらマジいかんッスよ。いきなりでナニですけども。
この豊田監督の前作『青い春』もワタクシ全然ダメでしたが、あにはからんや(?)『ナイン…』もダメでした。じゃあ観るなっつーの。
でもねでもね、何がダメなのかは分かったよ。2本観てさ。
ただ「長いプロモビデオ」状態の映画がダメなんだとばっかり思ってましたが。

ワタクシぐりがなぜ『青い春』や『ナイン・ソウルズ』が好きになれないのかと申しますとですね、監督の云わんとしてることが物理的に理解不能なのではなくて、理解したくない領域にあるからなんですね。もう感覚的に好きじゃないんですよ。
分からんことはないけど分かりたくない。
要するに納豆と一緒です。
私は納豆が食べられません。納豆が好きな人と云うのが世の中にはいっぱいいることは分かっている。体に良いことも分かっている。でも食べられない。キライ。
低次元で申し訳ないけど、まぁ大体そんなかんじです。

そういう好みは置いといたとしても、単純に9人の囚人の脱走劇としても完成度はイマイチだと思います。
まず9人の人物描写が甘い。時間の関係上かもしれないけど明らかに消化不良です。
ロードムービーとしてもテンポがゆるい。隠し金探しなんか真剣味無さ過ぎです。
展開が安易。いきなり逃走にうってつけのトラックをつかまえちゃったり、白鳥が腎臓を提供したお嬢さんが出ているのぞき部屋が唐突に出て来たり、疎遠になってるはずの娘の結婚式を虎吉が知ってたり。ほとんどファンタジーでんがな。

この作品は知り合い・友人が何人も制作にかんでたんで、半ば義理・半ば好奇心で観に行きましたが・・・まービデオでも良かったかなー、と思っちゃいました・・・。
しかし松田龍平は脚長いッスね。めちゃめちゃ長いよ。そして女装似合い過ぎ。全く違和感無い。ははは。あと原田芳雄はやっぱかっこよかったです。

名もなきアフリカの地で

2003年08月21日 | movie
『名もなきアフリカの地で』
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『ビヨンド・サイレンス』で聴覚障害者を両親に持つ音楽家志望の少女の成長を描いたカロリーヌ・リンクの作品。日本ではめったに公開されないドイツ映画ですが、リンク作品はデビューの『ビヨンド…』、『点子ちゃんとアントン』、そしてこの『…アフリカ…』の3作品が公開されていずれもヒットしてます。ラインナップを見れば分かる通り、子どもの描写において定評のある監督です。

私はあまのじゃくなので、可愛い子どもが出て来てやたらこれみよがしににその可愛さを振りかざす映画が大嫌いで(同じ意味で綺麗な女優さんの綺麗さを必要以上に強調した映画や、かっこいい男優さんのプロモみたいな男気映画もキライっす)、普段は子ども主役の映画はあんまり見ない方です。だって子どもが可愛いのなんて当り前のことなんだから、そんなことにわざわざお金なんか払って観に行くのなんてバカバカしいし、そういう個人的な思い入れは観てて肩が凝るだけ、退屈なだけです。
でもリンク作品なら信用して観ます。なぜか。

リンク氏が妙齢の女性だからかもしれませんが、主役の子どもに対する視線が非常にクールと云うか、フラットなんですよね。変な思い入れの押し付けが全然無くて、とっても自然。不必要なクローズアップも長回しも涙の安売りも無し。ちゃんとストーリーに集中して映画が見れる。そんでストーリーがまたちゃんとしてる。要は子どもの可愛いさに甘えたつくり方をしてないんだよね。

この映画は実話が元になってるそうですが、観てて途中で実話だと云うことを忘れそうになるくらいリアルでシンプルな映画です。故意に劇的な演出をせず、全体には非常に抑制の効いた映画なんですが、出演者の魅力やクルーの努力が不思議と効果的なほど印象に残ります。
そして内容盛り沢山で結構長い話にも関わらずとてもまとまりが良い。ある意味ではドイツらしい映画とも云えます。
父親役のメラープ・ニニッゼも可愛いくてかっこよかったけど、私はオウア(現地人の料理人)役のシデーデ・オンユーロがすごく気に入りました。男前だったよ。うん。

トーク・トゥー・ハー

2003年08月20日 | movie
『トーク・トゥー・ハー』
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スペインが誇る巨匠ぺドロ・アルモドバルの作品。
例のおすぎのCMのせいなのか、観たのがレディースデーだったからか平日の昼間と云うのにえらい混雑でした。立ち見もいた。スゴイですね。立ち見までして観るべき作品なんだろうか?

アルモドバルと云えば傑作なのが『オール・アバウト・マイ・マザー』ですが、『トーク…』も良い映画です。
アルモドバルの作品は上記2本の他に『欲望の法則』と『キカ』を観てますが、毎度印象的なのがキャスティングの妙ですね。どの作品にも必ず、一目見ると忘れられないようなキョーレツな顔つきの役者さんが出て来ます。アントニア・サン・フアン、マリサ・パレデス、ロッシ・デ・パルマ・・・今回はベニグノ役のハビエル・カマラ。顔がね、平らなんですわ。あのー、ビザンティン様式のイコンの人物像に似てるんだよね。
そのせいなのかベニグノがやたら良い人、純粋な人に見えちゃう。云ってることはちょっとアブナイんだけど、「でもきっとこのヒト悪いヒトじゃないハズ・・・なんて思っちゃう。

この作品に登場する人たちはそれぞれに孤独な愛を抱えて葛藤するんだけど、考えてみりゃ究極のところ愛なんてみんな孤独なんだよね。
じゃあなんで人は誰かを愛さずにはおれないのだろう。そんな謎の残る作品でした。