落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

花の都

2008年06月30日 | diary
今度は高校野球監督の落書き発覚 イタリアの世界遺産

サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂ってなんやっけ?と一瞬考えちゃいましたがー。なんのこたーない、ドゥオーモのことでんな。
ぐりはこのフィレンツェに一時期すんごく憧れてて、真剣に住みたいと思ってたこともあるくらい、大好きな街です。今までは旅行では2度遊びに行ったかな。ルネサンス発祥の地ともいわれ、街中がそっくり美術館・博物館といっていいくらい綺麗なところです。実際、美術館・博物館も歴史のある教会もたっくさんあって、毎日駆けずり回ってもなかなか見尽くせない。ごはんはおいしいし、金細工や革製品などの特産物の素敵なお店もいっぱいあって、何日いても飽きることがない。

サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂はそのフィレンツェの中心部にあり、文字通り街の象徴ともいえる建造物。聖堂と鐘楼と洗礼堂のみっつの建物で構成されていて、工事は13世紀に始まり現在の形になったのは19世紀になってから。「花の聖母マリア」というロマンチックな名前は、外壁を白と緑とピンクの大理石で覆った華やかな外観からといわれる。
問題の落書きがされたクーポラは巨匠ブルネレスキの初期代表作。高さは107メートルでフィレンツェ市内にはこの建物よりも高い建物は存在しない(条例で規制されている)。このクーポラも鐘楼も一般に公開されていて、誰でも入場料さえ払えば拝観できる。ぐりも2度登ってますが、まーホントに落書き、多いです。ぐりはこういう「落書きしたい欲」ってまーったくわからないので、フツーにアホか、としか思わないけどね。なんでこんなとこまで来て落書きなんかせにゃいかんのか、さーっぱり理解できない。観るだけでなにがイカンのかねえ?こんなに綺麗で素晴しい場所なのに。ナゾ。

けどそれをまた犯人探しまでするってのもどーなのー?たかが落書きじゃん。はあ〜。
イヤ、落書きはよくないよ。ダメですよ。でもそれをわざわざ新聞沙汰にまでするのはねえ〜?とりあえず、監督に去られた野球部員たちは可哀想です。
しかしホント、なんで落書きしたいの?それもわざわざ、世界遺産。わっからん・・・・。


薔薇空間展にて。

My Only Shining Sun

2008年06月29日 | movie
『シークレット・サンシャイン』

幼い息子(ソン・ジョンヨプ)を連れて亡夫の故郷・密陽に引越して来たシネ(全度妍チョン・ドヨン)。自動車修理工場を営むキム(宋康昊ソン・ガンホ)が何かと親切にしてくれる以外なかなか環境に馴染めないソウル育ちの彼女だが、ある日息子が何者かに誘拐され・・・。
ぐりはこの映画どういうプロモーションやってたかまったく覚えがないのだが(爆)、途中からいきなりキリスト教一色の話になって来てビックリしましたです。ハイ。そんな話って聞いてないわー。みたいな。

アジア映画とハリウッド映画とのハイブリッドといわれる韓国映画だけど、他のどの地域の映画にもない特色がひとつある。
とりあえずとにかく、しつこい。クドい。観客さえちょくちょくほったらかしになってしまうくらい、クドい。
この特色は良い方向に働くこともあれば、悪い方向に働くこともある。この映画に関しては、すごく良い。なにしろモチーフがウルトラ・へヴィー級ですから。ちょっとやそっとのしつこさでは話まとめられません。これくらいクドくやってもらわないと却って困ります。
まずヒロインの不幸ぶりがしょっぱなからハンパない。夫を亡くしただけでも気の毒なのに、そこまでの過去さえ幸せとはいいがたいものだったらしいことがちょこちょこほのめかされる。そのうえ愛する息子も全財産も失ってしまう。誰だって、前後不覚に陥って当り前の状況である。そこで彼女は宗教にすがるようになる。ズタズタに引き裂かれた心をかきあつめるために、祈りがうってつけの触媒の役目を果たす。
ハイ、ここでぐり、置いてかれました。クリスチャンじゃないから。全然ついてけない。えー、マジでー、待ってー。みたいな。
ところがさすがクドさ全開の韓国映画、観客置いてきぼりにしただけじゃ終わりません。最終的にはキッチリ回収するぶん回収してくれる。すばらしー。ブラボー。
これだけの悲劇と信仰を描くからには、わかりやすくこざっぱりとまとめるワケにはなかなかいかない。クドさにも必然性がある。よっしゃ。

去年のカンヌで主演女優賞を獲った全度妍の壊れっぷりが凄い。すさまじい。ぐりは彼女の出演作は『スキャンダル』しか観てないんだけど、こんなに凄い女優だとは知りませんでしたです。ずびばぜん。
宋康昊はねえー・・・実をいうとこの人、ぐりのタイプなんだよね(笑)。キャラといい見た目といい、思いっきりストライクど真ん中なんだわ。頭頂部結構ヤヴァいけど無問題よ。だから彼が画面に映ってるだけで嬉しい(爆)。演技とか観てない(爆)。ずびばぜん。
このふたりは映画が始まってすぐに出会い、何の理屈もなく男は女に惚れる。女には次から次へと不幸が押し寄せるから男はつけこみ放題のハズなのに、男が不器用すぎるのかなぜか女はオチない。でも結局、信じるから救われるという神の愛よりも、何の理由も必要ない人の愛の方がむしろ人の役に立つときもある。
けどそーゆーことも、描けるだけのものを描ききってあるからこそ、説得力がでてくる。クドさ、万歳。

Summer Time

2008年06月29日 | movie
『ハブと拳骨』

1960年代後半、ベトナム戦争下の返還前の沖縄を舞台に、ヤクザ者の兄弟と家族の絆を描く。
撮って3年も経っちゃって、宮崎あおいが大河に出てビッグネームになったおかげでやっと公開出来たとしか思えない作品だし(爆)、まあ全然期待もなんにもしてなかったです。
しょーじき、映画始まって15分くらいは、あ〜やっちゃった・・・的なサブイボで相当カユい映画ではある。もーーー演出が無理!この監督はどーもこれが長篇初監督らしーんだけど、まったく!さっぱり!芝居が撮れてない。役者はすっごい頑張ってるし、題材もシナリオも悪くない。ところがそれを客観的に、文字通り観客へ橋渡しするべき監督の作業がいっさい用を為してない。無理。

ところがそれでもこの映画、おもしろい。映画はよくできてさえいればおもしろくなるわけじゃなくて、うまくできてなくてもどーかしておもしろくなっちゃうことも多々あるわけだけど、その典型みたいな映画です。
国民の支持を得られないベトナム戦争に疲弊するアメリカ軍兵士たち。故郷を遠く離れた沖縄でも孤立している彼らと、そんなアメリカ軍と日本との間で揺れ動く沖縄の人々の、えもいわれぬ焦燥と孤独。戦争の記憶はまだ生々しく、人々の心と身体は未だに傷ついている。
そんな独特の感情の空気が、ほんとうに60年代に撮影したような古びた映像いっぱいにあふれている。タイで撮影したという60年代のコザの風景なんかリアル過ぎて圧巻の一言である。

キャスティングがとにかくよくて、三線弾きのチンピラ・良を演じた尚玄のキャラがすばらしい。エキゾチックな甘さたっぷりな風貌と、沖縄の太陽のように明るい愛嬌いっぱいの笑顔に惹きつけられる。その義兄・銀役の虎牙光揮も役そのものにしか見えないハマりっぷりで、この作品のおもしろさの半分以上はこの兄弟役の魅力によるといっても過言ではない。逆に、妹・杏役の宮崎あおいや母親役の石田えりは役の人物造形が薄っぺらなせいもあってかなりもったいなかったです。ホモ臭むんむんな日本人ヤクザ役の辰巳蒼生も健闘はしてたけど、やっぱり頑張ったわりには報われてない感があって可哀想だったかも。
まず他の邦画では観られない個性たっぷりな作品であることは間違いないし、そういう意味では観てよかったとは思います。
でもやっぱり、いろいろともったいないなと感じる部分も大量にあったことも確か。

夏がまた来て

2008年06月28日 | movie
『歩いても 歩いても』

水難事故で亡くなった長男の命日に集まる一家の一日を描いた、ちょっとほろ苦いハートウォーミングドラマ。
是枝裕和作品はどれも好きだけど、正直にいわせてもらえば、『誰も知らない』以降、若干、パンチ不足気味・・・ですかね?ぐりがいちばん好きなのは『ディスタンス』ですけども。
いや、いい映画だと思いますよ。よくできてるし。前作『花よりもなほ』ほど明確なメッセージ性はないけど、いいたいことはすごくよくわかる。笑えるシーンもいっぱいあるし、どのエピソードもめちゃくちゃ生々しいし、観ててなかなか楽しい作品ではある。
けどねえ・・・だから何?って感じもちょっとする。特にあのー、ラストの付け足しパートが完全に蛇足とゆーかねー・・・アレですべてが台無しになっちゃっててねえ・・・なんでアレ付けたんやろー?全然いらんかったでしょ?アレ?

原田芳雄と樹木希林の演技力はまったく申しぶんないのだが、まだまだ現役なふたりに70代の老人役をやらせたかった意図が最後までよくわからなかった。観てて痛々しかったです。有り体にいって必然性は感じなかった。それ以外のキャストが物凄いハマりようだっただけに気になる。
ゴンチチの音楽も狙い過ぎな気がする。音楽そのものはいいんだけど、映画音楽に使うようなタイプの音楽じゃないんだよね。
こういう映画もあってもいいとは思うし、ぐりも決してキライではないんだけど、何かがひっかかる。何だろな・・・。

或る兵士の死まで

2008年06月28日 | movie
『告発のとき』
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2003年7月、イラクから帰還してわずか2日後に行方不明になった19歳のアメリカ兵リチャード・デイヴィスの父親ラニーは、軍隊を愛した息子が自ら脱走などするはずがないと信じ独力で捜索を始めた。元憲兵だった彼は軍の協力を得て、4ヶ月後、ようやく息子の居場所に辿り着いた。リチャードはメッタ刺しに切り刻まれ、焼かれて森に埋められ、白骨化していた。だが事件はそれで終わりではなかった。
雑誌PLAYBOY2004年5月号に掲載されたルポ『Death and Dishonor』を元に映画化した物語。

実をいうとこの映画、あんまり期待はしてなかったです。ポール・ハギスの作品てどーもね、ヒロイック過ぎてクサみがキツイんだよね。ぐりにはさ。『クラッシュ』然り、『父親たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』然り。『ミリオンダラー・ベイビー』は好きだけどー。
いやでもコレはよかった。コレ好きです。いい映画です。邦題は最悪だけど。終わってるわぁ〜このセンス。責任者出せー。
それはさておき。とりあえず、全然ドラマチックじゃない。ものすごーく、淡々としてる。台詞はメチャクチャ少ないし、ストーリー展開もストレートでシンプル。登場人物もみんな静かなキャラクターばっかり。もしかすると、事実の方がむしろもっとドラマチックだったんじゃないかってくらい、地味な映画です。
でも、地味だからこそ、いいたいことが非常にスッキリと伝わってくる。語り手と観客の間に、それを邪魔するものは何もない。そういう映画、ぐりはすごく好きだ。

主人公ハンク(トミー・リー・ジョーンズ)はある意味でアメリカのある一方を如実に象徴する人物だ。信心深く愛国心にあふれ、無骨で寡黙で、人種差別主義の保守派。いわゆるブルー・ステイツのアメリカ人を象徴するのがトム・ハンクスだとすれば、レッド・ステイツを象徴するのはトミー・リー・ジョーンズなのかもしれない。その彼が、アメリカという国がしている誤りを告発するという。もしかするとそれだけで充分に強烈なメッセージといえるのかもしれない。
戦争に大義名分はつきもので、本国にいる国民にとってそれを無批判に受け入れることはさほど困難な作業ではない。だが現実に大義名分の欺瞞を目のあたりにさせられる兵士たちにとってはどうだろう。まだあどけないといってもいいくらい若い、未発達なもろい心を抱えた兵士たちに、そんなものを強制する権利などほんとうは誰にもない。
戦争をする国の国民ならどこの人間でも、まずそれをいちばんに自覚するべきなのだろう。いずれにせよ戦争なんて所詮殺しあいでしかないし、国民はひとり残らず、それに加担する罪を負うものなのだと。

全編青みがかって寒々しい色彩の画面と、編集や音楽など極力控えめな演出に徹したポストプロダクションがとても効果的。
地元の女性刑事エミリーを演じたシャーリーズ・セロンの変身ぶりにも驚き。最初誰やらわかりませんでしたよー。署長役でジョシュ・ブローリンが出て来たのにはちょっと笑ってしまった。この人『ノーカントリー』でもトミー・リー・ジョーンズと共演してます。今回はいっしょのシーンはないけど。当のトミー・リー・ジョーンズは『ノーカントリー』やら『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』とキャラめっちゃカブってる。もう完璧にタイプキャスト化してます。
ハンクの息子マイク(ジョナサン・タッカー)の同僚兵士を演じたジェイク・マクラフリン、ショーン・ヒューズ、ヴェス・チャサムは実際に軍隊経験者で、マクラフリンとヒューズはイラクに派遣された経験も持つ。彼らの醸し出す独特の緊迫感が、何ともいえない重みを映画に加えている。

もしかしたら、『クラッシュ』や硫黄島二部作が好きなハギスファンにとってはやや物足りない映画かもしれない。
静かすぎるし、穏やかすぎるかもしれない。
けどぐりは、こんなことは、わざわざ大声で派手に叫ぶようなメッセージじゃないと思う。死者を悼むように、厳粛に受けとめ、受けとめたからには、最後まで心にとどめ続けるべきなんじゃないかと思う。