『MR.LONG/ミスター・ロン』
台湾から東京・六本木に派遣されたナイフの名手で殺し屋のロン(張震チャン・チェン)だが、ミッションに失敗し逃亡。
流れ着いた田舎町で出会った少年(白潤音バイ・ルンイン)に助けられ、世話好きな近隣住民に料理の腕を買われて牛肉麺の屋台を出すことになるのだが・・・。
張震がもう四十路って信じられないですね。あいかわらずめっちゃかっこいいです。
若いころ(『カップルズ』のころ)から好きだけど、どういう役やっててもものすごく自然なんだよね。不良少年だろうとヤクザだろうと棋士だろうと皇帝だろうと、完全にばっちりキャラクターそのものに見えて常にまったく隙がない。
なんだけどいつもなんかこう、「これでいいのかな?」「もうちょいいけるんちゃうかな?」という、微妙な消化不良を感じさせる変な役者さんです。その絶妙な隙間感が、人間誰もがどこかで感じるであろう“己のアイデンティティに対する居心地の悪さ”に通じるのがあって却って生々しかったりもします。
この作品でいえば、ロンの設定は“ナイフの名手で殺し屋”でありつつ、同時に“料理の達人”でもある。その設定の背景には何も説明がない。母親が薬物中毒だったことを示唆する回想シーンが登場するものの、それ以外に彼をアイデンティファイする要素がないから、殺し屋と料理人のどちらが本来の彼の顔なのかが、観客にはよくわからないまま物語が進行していく。
一方でロン本人の態度には、どちらも彼自身が受け容れたアイデンティティというわけではなさそうな、はっきりとした距離感がある。殺し屋であれ料理人であれ、それはたまたまその瞬間瞬間で彼に求められた役割をただ精一杯に演じているだけ、という風に見える。いささか精一杯すぎて、その振りきりっぷりに観てる方はひいてしまうぐらいである。
あまりにも一生懸命だから、ラストシーンで彼が彼自身の手でその「役割の仮面」を脱ぎ捨てる場面では不覚にも感動してしまいました。感動していいのかどうかわかんないんだけど、思わず「よかったねえ」と思ってしまった。
作品そのものは若干冗長だったかなあ。
全体に時間を贅沢に余裕をもって描写したかった気持ちはわからないではないけど、この内容だったら129分は長すぎるよね。少年の母親リリー(姚以緹イレブン・ヤオ)のパートに頑張りすぎたんではないでしょうか。彼女のシチュエーション─日本の地方都市で売春しながらひとりで子育てをする薬物中毒の台湾人女性─がシリアスすぎて作品中でのバランスに苦労したんだろうなとは思うし、そういう誠実さには好感はもてたけど、果たしてそれだけの作り手側の誠意が観客にどれくらい伝わったかは不明です。
姚以緹の演技が終始一本調子だったのも敗因のひとつでは。超綺麗なんだけど、芝居はまあアウトでんな。
あとちょっと困ったのが、ロンのキャラクター設定や物語の展開はファンタジーなのにリリーのパートがやたらにリアルだったところ。見ててどっちをどう受け止めればいいのかよくわかんなくて、なかなかストーリーにはいりこめませんでした。
ひさびさに張震をおなかいっぱい観れたのはよかったけど、ファン以外の人には観る意味のある作品かどうかは謎です。
牛肉麺はむちゃくちゃおいしそうだったけどね。
台湾から東京・六本木に派遣されたナイフの名手で殺し屋のロン(張震チャン・チェン)だが、ミッションに失敗し逃亡。
流れ着いた田舎町で出会った少年(白潤音バイ・ルンイン)に助けられ、世話好きな近隣住民に料理の腕を買われて牛肉麺の屋台を出すことになるのだが・・・。
張震がもう四十路って信じられないですね。あいかわらずめっちゃかっこいいです。
若いころ(『カップルズ』のころ)から好きだけど、どういう役やっててもものすごく自然なんだよね。不良少年だろうとヤクザだろうと棋士だろうと皇帝だろうと、完全にばっちりキャラクターそのものに見えて常にまったく隙がない。
なんだけどいつもなんかこう、「これでいいのかな?」「もうちょいいけるんちゃうかな?」という、微妙な消化不良を感じさせる変な役者さんです。その絶妙な隙間感が、人間誰もがどこかで感じるであろう“己のアイデンティティに対する居心地の悪さ”に通じるのがあって却って生々しかったりもします。
この作品でいえば、ロンの設定は“ナイフの名手で殺し屋”でありつつ、同時に“料理の達人”でもある。その設定の背景には何も説明がない。母親が薬物中毒だったことを示唆する回想シーンが登場するものの、それ以外に彼をアイデンティファイする要素がないから、殺し屋と料理人のどちらが本来の彼の顔なのかが、観客にはよくわからないまま物語が進行していく。
一方でロン本人の態度には、どちらも彼自身が受け容れたアイデンティティというわけではなさそうな、はっきりとした距離感がある。殺し屋であれ料理人であれ、それはたまたまその瞬間瞬間で彼に求められた役割をただ精一杯に演じているだけ、という風に見える。いささか精一杯すぎて、その振りきりっぷりに観てる方はひいてしまうぐらいである。
あまりにも一生懸命だから、ラストシーンで彼が彼自身の手でその「役割の仮面」を脱ぎ捨てる場面では不覚にも感動してしまいました。感動していいのかどうかわかんないんだけど、思わず「よかったねえ」と思ってしまった。
作品そのものは若干冗長だったかなあ。
全体に時間を贅沢に余裕をもって描写したかった気持ちはわからないではないけど、この内容だったら129分は長すぎるよね。少年の母親リリー(姚以緹イレブン・ヤオ)のパートに頑張りすぎたんではないでしょうか。彼女のシチュエーション─日本の地方都市で売春しながらひとりで子育てをする薬物中毒の台湾人女性─がシリアスすぎて作品中でのバランスに苦労したんだろうなとは思うし、そういう誠実さには好感はもてたけど、果たしてそれだけの作り手側の誠意が観客にどれくらい伝わったかは不明です。
姚以緹の演技が終始一本調子だったのも敗因のひとつでは。超綺麗なんだけど、芝居はまあアウトでんな。
あとちょっと困ったのが、ロンのキャラクター設定や物語の展開はファンタジーなのにリリーのパートがやたらにリアルだったところ。見ててどっちをどう受け止めればいいのかよくわかんなくて、なかなかストーリーにはいりこめませんでした。
ひさびさに張震をおなかいっぱい観れたのはよかったけど、ファン以外の人には観る意味のある作品かどうかは謎です。
牛肉麺はむちゃくちゃおいしそうだったけどね。