『アウトレイジ』
2007年、アメリカ共和党のラリー・クレイグ上院議員が空港のトイレでおとり捜査官を誘惑して逮捕された。共和党でも保守派に属するといわれるクレイグ議員のスキャンダルに全米がショックを受けたが、保守派議員のゲイ・スキャンダルはこの前年にも起きていた。マーク・フォーリー下院議員がページボーイと呼ばれる議会で働く高校生たちと10年間もわいせつなメールをやりとりしていた疑惑が持ち上がっていたのだ。
政治家だって人間だから、中にはセクシュアル・マイノリティだっていたってかまわない。というか、いて当たり前だ。べつにそれは問題ではない。
問題なのは、クローゼット・ゲイ政治家の多くが、日々人権保護を求めて戦っているゲイたちの活動を妨害していることだ。議会に提出されるセクシュアル・マイノリティのための法案―同性婚、ゲイカップルの養子縁組、ヘイトクライムの防止などなど―に、彼らはことごとく反対票を投じる。
映画では、彼らの欺瞞を告発し、なぜ彼らがそのような矛盾した行動をとるのか、専門家や人権活動家の意見も交えて紹介する。
このスキャンダルについては前から報道で耳にはしてたし、映画としては観る機会に恵まれたのはよかったと思うんですがー。なんかもっそい眠かった。なぜか。
出てくる情報のほとんどが既に報道で知られた内容だってのもあるんだけど、単調なんだよね。展開がさ。マジメすぎるんだよ。映画として。
まあマジメにつくりたい気持ちはわからんでもないけどさあ、そんなガッチガチに深刻になられても。ぶっちゃけついてけませんて。
ただ観れば観るほど、アメリカのゲイ差別の複雑さとしんどさには心底うんざりさせられる。セクシュアリティはあくまで人のパーソナリティの一部でしかない。ベッドで誰と寝ていようと、それだけがその人の全人格を規定するわけではないのだ。政治家がゲイ/レズビアンである自分を誤摩化すことに極端に固執するのは、彼らにとってはセクシュアリティよりも政治家という職業/地位が重要だからだ。そもそも政治家は市民のために奉仕すべき聖職であるにも関わらず、現実には、政治家にとってはセクシュアル・マイノリティを含む市民の人権よりも、自らの保身の方がずっと大切なのだ。人情なんてそんなものである。
映画では、彼らクローゼット・ゲイを告発する理由として、セクシュアル・マイノリティの当事者であるはずの彼ら自身が、ヘイトクライムを助長しているからだとしている。それは確かに深刻かもしれない。
けどぐり個人としては、政治家にあまりにも多くを求めすぎているようにも見えた。それがアメリカのお国柄なのかもしれないけど、正直なところついていけなかった。
誰もがハーヴェイ・ミルクのように勇敢になれればそれは素晴らしいことだけれど、現実はそうはいかない。ミルクだって議員になっていくらもしないうちに暗殺されちゃったしね・・・。