落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

格差はつらいよ

2007年04月30日 | book
『ニッケル・アンド・ダイムド アメリカ下流社会の現実』バーバラ・エーレンライク著 曽田和子訳
『超・格差社会アメリカの真実』小林由美著
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お隣中国と同クラスの超格差社会アメリカの現状を、最低賃金生活体験レポートという形でミクロに書いたのが『ニッケル・アンド・ダイムド』、アメリカ経済を建国の歴史からIT成金のライフスタイルまでマクロに解説したのが『超・格差社会アメリカの真実』。
去年TBSラジオ「ストリーム」で永江朗氏がオススメしてた2冊、やっと借りれました。半年がかり(かかりすぎ)。
最低賃金生活体験レポートといえば『モーガン・スパーロックの30デイズ』でもやってましたね。アレとこの本でやってることは基本同じです(この本が書かれたのが先)。ただしエーレンライクはフロリダ州でウェイトレス・メイン州でハウスクリーナーと老人ホームのヘルパー・ミネソタ州でウォルマート店員、とまったく環境の違う場所で別々の職業をそれぞれ体験している。しかもスパーロックは当時30代前半、エーレンライクは当時50代後半である。根性のすわり方が違います。なんちゃって電波少年とはワケが違う。

この2冊を読んでると、アメリカという国はほんとうに変わった国だなとしみじみ思う。
アメリカ国民自身も、日本も含めた外国の人間も、アメリカといえば「自由と平等の国」というイメージを強くもっている。だが実際にはその「自由」と「平等」にはいろんな条件がからんでいる。そのひとつは「移民」であり、もうひとつは「戦争(外国紛争への軍事介入)」である。
アメリカは移民が戦争をしてできた国だけど、あれから300年余が経った今も、移民と戦争なしには成り立たない国であり、移民と戦争があればこそ、お金を持ってる人間にとってのみ「自由と平等の国」であり続けられるという。
つくづくおかしな国だと思うし、逆に、他の国がアメリカのような国柄を真似しようとしてもムリなところはそこだろうなとも思う。まあ真似したいのは一部の変わった人たち(「格差が出ることが悪いとは思わない」とかのたまったあの人とか)くらいだと思うけど。

でもこのアメリカの現状の一部は日本にもあてはまるところはある。
たとえば最近日本でも在日外国人の急激な増加が目立ってるしそれを快く思わない日本人もいるけれど、彼らがしている仕事なしに今の日本経済が成り立つかといえば今さらちょっと難しいんじゃないかと思う。
福祉制度の疲弊や教育システムの破綻もちゃくちゃくと進行しつつある。実際、私立学校の高度化と公立学校の凋落のギャップは既に埋めようのないレベルにまで拡大してしまっているし、障碍者の生活保障や社会参加制度、犯罪者の更生システムの貧しさは前世紀のいつからか完全にストップしてるとしか思えない。マジメに取り組んでいるのは一部の研究者や市民活動家だけで肝心の国はどうしているのか、国民の関心自体が薄い。

お金があってもなくてもみんなに均等に機会が与えられる社会は、誰がなんといおうといい社会だとぐりは思う。
お金があるのは悪いことじゃない。けどそれだけが全てじゃない、といえる社会の方が豊かなはずだ。どこに生まれようとみんながきちんとした教育を受けられる、重い病気になってもちゃんと治療が受けられ、誰もが最低限の生活を保証される社会のどこが悪いのか。
低賃金で人が嫌う仕事をもくもくとしてくれる移民を無尽蔵に受け入れる余裕もなく、資源を持つ国を侵略して利権を奪い取れる国力もない小さな島国には、できることとできないことがある。
それならば、今できていることを伸ばしてもっと住みよい国にすることの方がリアリティあると思うんだけど。
どうでしょう。

音楽の日曜日

2007年04月29日 | movie
『ダフト・パンク エレクトロマ』
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ぐりは音楽にはチョー疎い人ですが、ダフト・パンクはけっこー好きっす。PVも好き。おもしろいから。
この短編もおもしろかったです。音楽はダフト・パンクじゃなかったのが意外でしたが。
台詞がいっさいなくて、登場する人物は全部ロボなので表情もない。台詞のない文楽みたいな。けど不思議と感情とか物語ってしっかり伝わってくるんだよね。人間て目や耳で情報を受取ってるだけじゃないんだなあと思って感心しましたです。当り前だけどね。
短編だけど静かな作品なので、周りの観客思いっきり寝まくり。はあ。

音楽の日曜日

2007年04月29日 | movie
『恋愛睡眠のすすめ』
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超ロマンチックなロマンチック・コメディ。
話としては『運転手の恋』に似てます。オタクで変わり者の恋に恋する純情?ツ年が、天使のように美しい女性に憧れて、傍目には奇行としかみえないような猪突猛進なアタックを繰り返す。『運転手〜』の方はタ?Nシー=クルマオタクだったけど、『恋愛〜』の方は夢オタク。夢=妄想と現実の境目が自分でもわかってないからもっとタチ悪いです?B
でもこれがかわいいかわいいガエル・ガルシア・ベルナルくんが演じてると全然罪がない。むちゃくちゃおかしいことばっかりやらかしてるのに、「かわいいなあ」で笑って済ませられてしまう。すっごい特異なキャラです。
夢パートの映像がめちゃめちゃ楽しい。監督のミシェル・ゴンドリーはフランス出身の映像作家で、映画よりミュージックビデオ─ビョーク、カイリー・ミノーグ、ケミカル・ブラザーズ、ダフト・パンク、ホワイト・ストライプスなど─で有名なヒトですね。ぐりも大好きです。いつ見ても「こんなんどーやって思いつくんやろ??」とゆー奇妙奇天烈かつ新鮮で魅力的な映像をつくっている。

監督はこのガエル演じるステファンは自分自身がモデルで、憧れの女性ステファニー(シャルロット・ゲンズブール)は元カノがモデルといってたけど、確かにキャラクターに対する深い愛情が画面に満ちあふれている。
ゴンドリーの作品はどれもひどく個性的だけど、みていてまったくイヤミがないところが大きな魅力になっている。決して狙って気を衒ったようではなく、ただ単に楽しい妄想の世界をみる人と共有したい、そんな素直さがこちら側の心まで自然と開かせてくれるからかもしれない。以前インタビューで「(自分のアイデアが)なかなか他人に理解されない」とさみしそうに発言してたけど、理解されないものをわざとつくってるんじゃなくて、理解されたいからこそつくろうとしているのだろう。
そんなところが「かわいいなあ」と思わせる。
この映画もとにかくかわいいです。ガエルもかわいいしシャルロットもかわいいし、映像も音楽も物語もみんなかわいい。部屋に飾って、ときどき手にとってめくりたいお気に入りの絵本、そんなカンジの映画でしたです。

渋谷で映画まつり

2007年04月28日 | movie
『イノセントワールド 天下無賊』
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馮小剛(フォン・シャオガン)作品て初めてかな?ぐりは?
おもしろかったよ。うん。楽しめました。お金も手間もかかってる、豪華なエンターテインメント・アクションコメディって感じで。
がー。
中国映画の田舎くささを払拭するためなのか、余計な小細工がやたらくどい。
ハリウッド映画のマネなのか、妙なエフェクトやトリッキーな編集技法をごてごて使い過ぎ。大袈裟な音楽もうるさい。騒々しいだけじゃなくて、まったく音楽いらないとこにまで音楽いれてる。やりゃあいいってもんじゃないでしょうが。
そういう後付け的な装飾がやかましくて、みてて気が散ってしょうがなかったです。
そんなことに手をかけるくらいなら、最初からちゃんとフィルムで撮りなはれ(この作品はHD収録)。オオカミがシベリアンハスキーってそりゃないぜ。電車のセットが静止してるのもいただけない。後処理でいうと合成も浮いてる。
物語そのものは悪くないのに、頑張る方向を間違えたばっかりに却って安っぽくなってしまってます。残念。
しかし李冰冰(リー・ビンビン)はやっぱいいですねえ。ぐりチョー好みやわ。かわいいし色っぽいし。女くさーい!ってカンジがたまらーん(おっさんか<自分)。
ところであのオチもさっぱりいただけないですよねえ。犯罪者がハッピーエンドになっちゃいけない中国映画といえども、コメディでアレはないよ〜すっげーとってつけた感まるだしで。やっぱ劉徳華(アンディ・ラウ)には流血は不可欠なのか?

渋谷で映画まつり

2007年04月28日 | movie
『フランドル』
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すんげえ台詞少ない。音楽もほとんどナシ。登場人物も少ないし、蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)の映画にすごく似てます。
ただしテーマは全然違う。これ反戦映画だから。
“フランドル”といえばぐり的にはフランドル絵画─ファン・エイク、ヒエロニムス・ボス、ブリューゲル、ルーベンスなど─なんだけど、映画に出てくる風景もまさしく「絵のような」美しさ。晩秋、青々と緑の茂る田園地帯に雪が降ってたり、夏は乾燥した黄色い草地と緑の草地がまだらになってたり。空はあくまでくっきりと青く、風はやさしく、あたたかそうな陽光がたっぷりと大地を照らしている。
こんなに何もかもが美しいのに、若者たちは戦争に行ってしまう。戦場が具体的にどこなのか説明はない。砂漠地帯で、敵がキリスト教徒でない、欧米人ではないことくらいしかわからない。けどたぶんそこがどこであれ、フランドルのように美しくはない。そこには家族も恋人もいない。あるのは死と暴力だけ。
そんなところに、なぜ男たちはわざわざでかけていくのだろう。家にいて、毎日きちんと働いて、愛する人を大切にすること以上に大事な何かが、そんな戦場のどこに存在するのだろう。一体なんのために、なにをしに、言葉も通じない、何の知識もない土地へ凶器をもっておしかけなくてはならないのか。そんなことをして何か得るものがあろうとは到底ぐりには思えない。
戦争って結局そういうことだよね。それだけじゃないよというヒトもいるだろうけど、一般庶民にとってはそういうことだ。
バカバカしいったらありゃしません。
そういう映画でした。
にしても白い画面に白字幕はマジきつかったっす・・・。