東京地検特捜部がパー券裏金事件で、安倍派幹部7人を不起訴の方向で考えている事について、江戸時代末期の洋学者であった渡辺崋山のことばを思い浮かべた。
渡辺崋山(1793~1841)は、田原藩士で、江戸詰めの年寄役末席となり、海防係を兼任し、開明的な政策を行い、高野長英らと「尚歯会」を結成し、洋学や海外事情の知識を求めた。1839年には幕府の保守的な海防方針に飽き足らず「慎機論」を著し、「蛮社の獄」に連座し、国許に蟄居を命じられ自殺した。渡辺崋山の『凶荒心得書』から彼のことばを抜粋し以下に紹介しよう。
「御領中に罷りあり候数万人の内、たとえいかに賤しき小民たりとも、一人にても餓死流亡に及び候わば、人君の大罪にて候。さりとて人君自ら御手を下し候事は成されがたく、すべて役人に御任せなされ候ゆえ、万一行届かざる事ありとも、しいて人君の罪とは思召されず。下よりもまた左は存じ奉らざるより、家老は奉行の過ちとし、奉行は下役人の過ちとし、誰が罪とも定かならず……表面ばかりの取計らいにて事をすまし候。……家老、年寄の不行届きとは申すものの、実は人君の治政に御心これなきよりかく相成候。」
(2024年1月16日投稿)