学校法人「森友学園」への国有地売却問題を明らかにするため、NPO法人「情報公開クリアリングハウス」が、財務省と近畿財務局が持つ電子データを証拠として保全するよう申し立てたが、東京地裁(古田孝夫裁判長)は2017年5月31日、「却下」決定した。
ちなみに財務省は2日までに当時使用していた情報システムを更新した。財務省は運営を委託しているNECに対して、7月31日までに消去するよう要請している。
ところで、問題視しなければならないのが、「却下」決定の理由である。東京地裁は「森友学園への国有地売却問題」の重要性を故意に無視しているとしか考えられない。なぜなら、その決定理由が、「無関係の文書やデータも含めて網羅的に検証しなければならない」「必要なデータが具体的に特定されていない」「検証の目的も特定されておらず、不適法だ」という内容だからである。
これは一言でいえば、「邪魔くさい事はできない」という事でしかない。そして、先のNPO法人が2月下旬~3月上旬に財務省や近畿財務局に対し、森友学園との交渉経過を記した行政文書などの公開を求めたのに対し、同省が「文書の保有が確認できない」という理由で請求を退け(拒否?)、国会の場においても「売買契約を結んだ後に文書データを廃棄した」と答弁した事態をまったく考慮していないだけでなく、国民に対して「事実を明らかにする使命」を自覚したものとは考えられない内容である。裁判官の職権を私物化するものであり、憲法の定め(第6章司法第76条3項「裁判官の独立」)に違反するものである。
さらに踏み込んで言えば、東京地裁の「却下決定」は「安倍政権による国有地不正売却」の証拠を隠蔽する事を意図して出されたものと見做す事ができる。財務省はこの東京地裁の「決定」を「お墨付き」とみなし「データ消去」を完了した場合、安倍政権による公務員ぐるみの「国有地不正売却」は「完全犯罪」となるのである。
この事が罪に問われずまかり通れば、政権を首謀者とする公務員は味を占めて今後形を変えて何度でも、また、別の部門でも行うであろう。そして、政権(行政)は情報公開法を無視し、知る権利も認めなくなるだろう。政権(行政)は国民主権をも奪うつもりなのである。国民は主権者として必ず真実を明らかにし、この国有財産の不正売却に関わった公務員や関係者を罪に服させなければならない。そして、裁判官に対しても、特別視する必要はなく、彼らも同じ「人間の子」であるという認識を新たにし、国民にとって望ましい裁判官を育てる事を忘れてはならない。
※ドイツの憲法裁判所長官のことばを大切にしたい。
「国家(政府・政権)の人権侵害から市民の権利を守る事が我々の任務である」