朝日新聞の2019年10月5日社説は「香港緊急法」と題する内容であった。これを読んで感じた事は、この社説は国民にどんな影響効果を与える事を目的として書かれたのかという事であった。
素直に読めば、記事にも見えるが、香港市民のデモに対する香港政府行政長官の強硬姿勢に対するものであり、それは香港の自治を崩壊させかねないとする厳しい批判である。
例えばそれは、「4カ月以上に及ぶ市民デモの本質を、長官はいまだに理解していないのではないか。市民の怒りは、こうした強権による自由の制限に向けられており、反発を増幅する可能性が強い」とか、「緊張を高めているのはむしろ香港政府側の強硬姿勢である」とか、「対話の場を設けることだ」などの言葉である。
しかし、この批判の言葉はそのまま納得する事はできない。なぜならまず、この言葉は、「朝日新聞自身や現在自分たち国民を統治する安倍自公政権の政治姿勢が、主権者国民にとって何の問題もない理想的な民主的政権である」かのように思わせる効果を生むからである。多分それが目的であろう。そうだとすれば主権者国民はそれにより安倍自公政権の暴政下にありながらその事へ向ける目を反らされ、暴政を自覚できないという弊害を生じるからである。また、一方的野次馬的に内政干渉し、香港政府を、また中国共産党政府を劣った者自己が指導すべき者として位置づけ、見下し批判する意識を感じさせるからである。また、軽率に市民デモを支援し、対応する香港政府を嘲笑し、混乱を煽っている効果しか生んでいないと思えるからである。つまり、無責任極まりない行為でしかないからである。
この姿勢は、自己の「傲慢さ」を表しているのである。自己を棚に上げ正しく評価せず「自分や安倍自公政府は優秀で自分こそ正しく、自分が指導してやるべきで、他人他国政府他民族は自分たちの考え方や指導に従うべきである」とする姿勢だからである。そして、この姿勢の源は、神聖天皇主権大日本帝国政府が培養し増長させたものであり、大東亜共栄圏構想の下に内政干渉を正当化し侵略し支配下に置いたアジアの諸国諸民族に対する評価や振る舞いの基となった「優秀な大和民族」なる自己中心的な偏狭な思い込み意識優越意識と同種同根のものである。
日本のメディアは、このような香港報道に紙面を費やすのはほどほどにし、また、社説の姿勢も改めて、主権者国民に対し、安倍自公政権の、民主主義や憲法を無視否定する暴政に対し糾弾し責任を執拗に問い続ける事を呼びかけるべきであろう。ネタは盛りだくさんに存在しているではないか。国民も現在、安倍自公政権によって、香港人と同様に、民主主義を否定され憲法を無視否定した独裁的支配にさらされていることを自覚し、「お人好し」な姿勢のままで「手遅れになって気付」くのではなく、香港人ほどでなくとも、実力行使をしなければならない時期にきているのではないか。
主権者国民は、メディアの記事を鵜呑みにすると、騙され、自分の首を絞める事につながる事を忘れてはならない。主権者国民は権利を守るためには、メディア・リテラシーを身につけ磨く事に努力しなければならない。幸せは努力なしでは得られないという事だ。野党任せ人任せでなく、主権者という当事者意識をもって自己の「権利を守る不断の闘い」が必要だ。
(2019年12月10日投稿)