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随筆紹介 「ときめいて」   文科系

2013年12月10日 11時32分49秒 | 文芸作品
 ときめいて    Y.Sさんの作品

 私の住まいは市内有数の高齢者地域で、どの町内も年金生活の世帯が多い。うちもそのうちの一人であるのだが、時折、この国の年金機構は破綻しないだろうか? 大丈夫だろうか? と不安になる。
 一人暮らしの高齢者も多い。うちの二軒隣もお連れ合いを亡くしたお爺さんの独り住まいである。今までに二回、ガスの火を付けっぱなしで外出したり、昼寝をしたりで鍋を焦がし、台所の窓から煙がモクモクなんてことがあった。この辺りは下町の古い住宅密集地なので出火したらと考えただけで身震いする。うちを含む近辺の人々は気が気ではない。
 今のガス器具は危険を感知して自動消火のはずなのに、お爺さんは古いものを大切にして新型に換える気はなさそうだ。
 ところが異変が起きた。数カ月前からお爺さん宅に女性が出入りしている。親戚の人かな? ヘルパーさんでもなさそうだし、なんて思っていたら、なんと恋人だという。遠目にはイヤリングをゆらしてなかなかお洒落な女性で、服装も明るいオレンジ色や赤が多い。お爺さんは表情が豊かになって動作もきびきびとしてきた.元ダンス講師だった彼は以前にも増して姿勢がよくなってきた。女性は夕方来て、翌朝帰って行く。時にいたわりあって並んで歩く姿は灼けるほどに素敵だ。お爺さん九六歳、女性は八八歳だとか。デイサービスで知り合ったと聞いた。以来、鍋を焦がすことがなくなったのがなにより。
コメント
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