「残業代ゼロ」提案へ 年収1000万円超に試験導入 (13.12.11 朝日新聞)
法律で定められた労働時間の規制を適用除外とする働き方の提言が10日、政府の産業競争力会議の分科会に示された。まずは、年収1千万円超の労働者に限り、来春以降、一部の地域や企業で試験導入を目指す構想だ。来秋をめどに結果を検証し、全国展開を進めたい考えだ。
第1次安倍内閣で導入が検討され、「残業代ゼロの働き方」と批判された「ホワイトカラー・エグゼンプション」と同じような仕組みだ。
同会議の雇用・人材分科会の長谷川閑史主査(武田薬品工業社長)が「日本型新裁量労働制」として提案。月内に産業競争力会議として考えをまとめ、政府に導入を促す。
提言は、労働者の中には、成果が時間で測れず、規制になじまない個人がいる、と指摘。労働時間と賃金を切り離す。企業側にとっては、労働者が深夜や休日に働いても労働基準法が義務づける割増賃金を払わなくてもいい。対象は、自分で働く時間を決められる専門職を想定。働きすぎを防ぐため、一定の休日取得なども義務づける。
提言では、国家戦略特区法や産業競争力強化法の枠組みを使って「先進的優良企業」で残業代ゼロの働き方を試験的に導入するという。生産性が高まり、創造的な仕事がしやすくなるかどうかを来秋までに検証する考えだ。
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なんとも企業本位の考え方ですね。労働者が働く時間を自分で決められるようになるといいますが、「家で企画を考えていた」というようなことを経営者は認めるのでしょうか。むしろ狙いは「残業代を払わなくて済むようにする」ことにあるようです。当面は年収1千万以上の人にと
言っていますが、そのうちに適用範囲が広がっていくことも予想されます。
この考え方の基礎にあるのは記事でも触れているように欧米の資本主義国で一部実施されているホワイトカラー・エグゼンプションという労働時間規制適用免除制度です。日本でも2006年に経団連が提起し、第1次安倍内閣で導入を検討しましたが、「かえって長時間労働をさせられる過労死法だ」と連合など労働団体の反対が広がり、政府が法案提出をあきらめました。
産業競争力会議というのは、アベノミクスの第3の矢として設けられたもので、規制緩和を進めることによって産業、企業の競争力を伸ばす方策を考えることを目的としています。
構成員は安倍首相が議長となり、経済関係の閣僚のほか11人の有識者委員からなっています。その内訳は、長谷川閑史経済同友会代表幹事(武田薬品工業社長)や板根正弘経団連副会長(コマツ会長)など財界人が9人を占め、他は東大教授が一人、学者の分類に入るのかどうか元小泉内閣の経済財政担当大臣を務め、積極的な規制緩和政策を推進した竹中平蔵慶応大学教授です。
安倍内閣では審議会や諮問委員会の委員に「有識者」として自分と同じ考えの人や財界人を起用することが多く、安保法制懇のように結論が予想されるようなケースが多いのですが、この会議も財界寄りの提言が出てくることが予想されていました。
大西 五郎
法律で定められた労働時間の規制を適用除外とする働き方の提言が10日、政府の産業競争力会議の分科会に示された。まずは、年収1千万円超の労働者に限り、来春以降、一部の地域や企業で試験導入を目指す構想だ。来秋をめどに結果を検証し、全国展開を進めたい考えだ。
第1次安倍内閣で導入が検討され、「残業代ゼロの働き方」と批判された「ホワイトカラー・エグゼンプション」と同じような仕組みだ。
同会議の雇用・人材分科会の長谷川閑史主査(武田薬品工業社長)が「日本型新裁量労働制」として提案。月内に産業競争力会議として考えをまとめ、政府に導入を促す。
提言は、労働者の中には、成果が時間で測れず、規制になじまない個人がいる、と指摘。労働時間と賃金を切り離す。企業側にとっては、労働者が深夜や休日に働いても労働基準法が義務づける割増賃金を払わなくてもいい。対象は、自分で働く時間を決められる専門職を想定。働きすぎを防ぐため、一定の休日取得なども義務づける。
提言では、国家戦略特区法や産業競争力強化法の枠組みを使って「先進的優良企業」で残業代ゼロの働き方を試験的に導入するという。生産性が高まり、創造的な仕事がしやすくなるかどうかを来秋までに検証する考えだ。
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なんとも企業本位の考え方ですね。労働者が働く時間を自分で決められるようになるといいますが、「家で企画を考えていた」というようなことを経営者は認めるのでしょうか。むしろ狙いは「残業代を払わなくて済むようにする」ことにあるようです。当面は年収1千万以上の人にと
言っていますが、そのうちに適用範囲が広がっていくことも予想されます。
この考え方の基礎にあるのは記事でも触れているように欧米の資本主義国で一部実施されているホワイトカラー・エグゼンプションという労働時間規制適用免除制度です。日本でも2006年に経団連が提起し、第1次安倍内閣で導入を検討しましたが、「かえって長時間労働をさせられる過労死法だ」と連合など労働団体の反対が広がり、政府が法案提出をあきらめました。
産業競争力会議というのは、アベノミクスの第3の矢として設けられたもので、規制緩和を進めることによって産業、企業の競争力を伸ばす方策を考えることを目的としています。
構成員は安倍首相が議長となり、経済関係の閣僚のほか11人の有識者委員からなっています。その内訳は、長谷川閑史経済同友会代表幹事(武田薬品工業社長)や板根正弘経団連副会長(コマツ会長)など財界人が9人を占め、他は東大教授が一人、学者の分類に入るのかどうか元小泉内閣の経済財政担当大臣を務め、積極的な規制緩和政策を推進した竹中平蔵慶応大学教授です。
安倍内閣では審議会や諮問委員会の委員に「有識者」として自分と同じ考えの人や財界人を起用することが多く、安保法制懇のように結論が予想されるようなケースが多いのですが、この会議も財界寄りの提言が出てくることが予想されていました。
大西 五郎