また旧稿で恐縮だが、希望者が多い用語解説なので、何度も。
折りしも、ヨーロッパチャンピオンズリーグ本年度決勝戦が6月1日土曜日28時から行われ、この戦術の創出者ユルゲン・クロップが監督をしているリバプールがCL初優勝を遂げそうな雲行きでもあるということから・・・。
【 ザックジャパン(145) 改めて、ゲーゲンプレス 文科系 2014年02月26日 | 小説・随筆・詩歌など
ドイツはドルトムントのゲーゲンプレッシング自身について解説したい。この言葉が現在このブログで、検索に最も多く引っかかる言葉だと編集部に間接的に教えられたから、これを書こうと思いたった。
① まず、クロップ監督自身の言葉を、最初の解説要点としたい。
「相手が、相手ゴールに攻め込んだこっちのボールを奪って攻撃に転じた瞬間こそ、相手ボールを奪う絶好機というべきだ。敵の陣型が防御という意味では最も乱れている時だから、こちらの組織次第でボールを奪いやすい時でもあるし、その時にボールを奪えればゲーム中最大の得点チャンスにもなる」
この言葉にゲーゲンプレスの全てが入っている。ゲーゲンプレスの意味自身とこのクロップの言葉とを結んでみると、意味がよく分かる。英語に言い換えた字義はカウンタープレスということであって、ボクシングのカウンターパンチが相手が出した拳にこちらの拳を合わせて威力を倍増させるというのとおなじ意味である。敵がボールを奪って前がかりになった瞬間こそ、味方が前へと組織的プレスに出てボールを奪い、そのまま得点しようという得点戦術なのである。
② ①の大切さを理解する必要不可欠な現代フットボール予備知識も挙げておく。現代最新型の守備とは、まずゴールを守る事(と考えるの)ではなくて、そのもっと前の段階で敵ボールを奪うことである。身方から見て高い位置で常に敵ボールを奪ってしまえば、敵がシュートまで行けないという理屈だ。サッキ監督のACミランやバルサ以来世界がボールポゼションに拘ってきたのも同じ理屈である。敵から良くボールを奪い、パスが上手いから敵にボールを渡さないなら、ボールを持てない敵はシュートを打つ確率が極めて下がる、と。
高いプレスとかコンパクトプレスとかの用語も、この事に関係している。前者は、高い位置で組織的圧倒的に敵ボールに襲いかかって奪う事。後者は、身方陣型を、DFは前に上げFWも守備に下がって前後を縦に詰め、コンパクト(コンパクトカーのコンパクトと同じ「小さいけれど中身が詰まった」という意味)陣型にして、その密集の中では敵ボールを絡め取りやすいという意味である。その際、DFを前に上げるのでカウンターを食わないように、一糸乱れぬオフサイドトラップ(オフサイドの罠)が極めて重要になる。ちなみに一例としてだが、ザックジャパンはこれがまだ下手だ。前のプレスが甘いとき、良いロングパスを通されてカウンターを食ってしまうのである。オフサイドトラップを多用するコンパクト陣型には前の協力も不可欠だというのは、このことを指している。
ところで、以上との関係でゲーゲンプレスを述べればこうなる。まず、必ずコンパクトプレスになるということ。高いコンパクトも、CLリーグなどでは低いコンパクトもよく使うが。特に、高位のコンパクトプレスからのボール奪取、得点が上手いということだ。コンパクトプレスが、ゲーゲンプレスの代名詞、必須条件になっている。
③ ゲーゲンプレッシングのやり方自身はこうである。
A ボールを奪った相手に最も近い味方は、すぐに敵ボール保持者からボールを奪いに行く。形だけではなく、猛然と本気で奪いに行くのである。
B 近くに敵の他の選手がいるその他の味方は、敵ボール保持者からその選手へのパスコースを塞ぐ。
C パスコースを塞げる敵がいない味方は、後ろからでもパスの受け手になりそうな敵を妨げに走る。後からボールを奪ってやろうとか。
D BCがあってこそ初めて、Aが成功する確率が高くなる。Aの身方がたとえボールを取れなくとも、あらぬ方向にボールを流させてこれを身方が掠め取ることも含めて。
④ 最後に、以上の為にドルトムントは常日頃どんな練習をしているか。木崎伸也の見てきたところをまとめてみよう。彼は、ドルトムントの秘密練習までこっそりと覗くなどと、大変な努力を積んできた。
A 以上の為の走りにつき、常日頃死に物狂いのような練習を積んでいる。ハインケス監督時代の最後にドルトムント・ゲーゲンプレスをそっくり真似してCL杯を取ったバイエルンとともに、ドルトムントは現在の世界でダントツに走るチームと言えるだろう。それも、ダッシュが多いという意味だ。
B 例えば低く構えてコンパクト陣型を作る場合でも、DFラインはおおむねペナルティーラインの2m前まで出ようとして、そのためにDFがこんな練習をしている。DFライン4人が敵ボール位置に合わせて猛烈な勢いで左右に動きつつ、1人は敵ボールにアタックに出る、と。その時必要な攻撃に出たセンターバックをMFがカバーする練習も非常に多い。よって、このチームのMF全員がDFの練習も積んでいる。
C ドルトのパスを繋ぐ攻撃は、バルサよりも縦に速いのが特徴と言える。攻撃の特徴、練習は、敵の間に顔を出し身方パスを引き出すこと。そのためのパス&ムーブの徹底、そしてワンタッチパスの多さなどがある。合宿などでは、ハーフコートの5対5ゲームをワンタッチ限定でやり尽くすということだった。この攻撃の全てに対する防御練習が存在するという事になり、ここにもゲーゲンプレス練習の大事なポイントがあると言える。
最後になったが、ザックのチームコンセプトはドルトムントに非常によく似ていると思う。ザックもドルトムントと同じで、攻撃はバルセロナ、守備はアリゴ・サッキのミランを理想としてきたのだから、当然の事なのだ。組織規律を良く守り、よく走りもする日本人にはこの戦術が非常によく合っていると言える。】
折りしも、ヨーロッパチャンピオンズリーグ本年度決勝戦が6月1日土曜日28時から行われ、この戦術の創出者ユルゲン・クロップが監督をしているリバプールがCL初優勝を遂げそうな雲行きでもあるということから・・・。
【 ザックジャパン(145) 改めて、ゲーゲンプレス 文科系 2014年02月26日 | 小説・随筆・詩歌など
ドイツはドルトムントのゲーゲンプレッシング自身について解説したい。この言葉が現在このブログで、検索に最も多く引っかかる言葉だと編集部に間接的に教えられたから、これを書こうと思いたった。
① まず、クロップ監督自身の言葉を、最初の解説要点としたい。
「相手が、相手ゴールに攻め込んだこっちのボールを奪って攻撃に転じた瞬間こそ、相手ボールを奪う絶好機というべきだ。敵の陣型が防御という意味では最も乱れている時だから、こちらの組織次第でボールを奪いやすい時でもあるし、その時にボールを奪えればゲーム中最大の得点チャンスにもなる」
この言葉にゲーゲンプレスの全てが入っている。ゲーゲンプレスの意味自身とこのクロップの言葉とを結んでみると、意味がよく分かる。英語に言い換えた字義はカウンタープレスということであって、ボクシングのカウンターパンチが相手が出した拳にこちらの拳を合わせて威力を倍増させるというのとおなじ意味である。敵がボールを奪って前がかりになった瞬間こそ、味方が前へと組織的プレスに出てボールを奪い、そのまま得点しようという得点戦術なのである。
② ①の大切さを理解する必要不可欠な現代フットボール予備知識も挙げておく。現代最新型の守備とは、まずゴールを守る事(と考えるの)ではなくて、そのもっと前の段階で敵ボールを奪うことである。身方から見て高い位置で常に敵ボールを奪ってしまえば、敵がシュートまで行けないという理屈だ。サッキ監督のACミランやバルサ以来世界がボールポゼションに拘ってきたのも同じ理屈である。敵から良くボールを奪い、パスが上手いから敵にボールを渡さないなら、ボールを持てない敵はシュートを打つ確率が極めて下がる、と。
高いプレスとかコンパクトプレスとかの用語も、この事に関係している。前者は、高い位置で組織的圧倒的に敵ボールに襲いかかって奪う事。後者は、身方陣型を、DFは前に上げFWも守備に下がって前後を縦に詰め、コンパクト(コンパクトカーのコンパクトと同じ「小さいけれど中身が詰まった」という意味)陣型にして、その密集の中では敵ボールを絡め取りやすいという意味である。その際、DFを前に上げるのでカウンターを食わないように、一糸乱れぬオフサイドトラップ(オフサイドの罠)が極めて重要になる。ちなみに一例としてだが、ザックジャパンはこれがまだ下手だ。前のプレスが甘いとき、良いロングパスを通されてカウンターを食ってしまうのである。オフサイドトラップを多用するコンパクト陣型には前の協力も不可欠だというのは、このことを指している。
ところで、以上との関係でゲーゲンプレスを述べればこうなる。まず、必ずコンパクトプレスになるということ。高いコンパクトも、CLリーグなどでは低いコンパクトもよく使うが。特に、高位のコンパクトプレスからのボール奪取、得点が上手いということだ。コンパクトプレスが、ゲーゲンプレスの代名詞、必須条件になっている。
③ ゲーゲンプレッシングのやり方自身はこうである。
A ボールを奪った相手に最も近い味方は、すぐに敵ボール保持者からボールを奪いに行く。形だけではなく、猛然と本気で奪いに行くのである。
B 近くに敵の他の選手がいるその他の味方は、敵ボール保持者からその選手へのパスコースを塞ぐ。
C パスコースを塞げる敵がいない味方は、後ろからでもパスの受け手になりそうな敵を妨げに走る。後からボールを奪ってやろうとか。
D BCがあってこそ初めて、Aが成功する確率が高くなる。Aの身方がたとえボールを取れなくとも、あらぬ方向にボールを流させてこれを身方が掠め取ることも含めて。
④ 最後に、以上の為にドルトムントは常日頃どんな練習をしているか。木崎伸也の見てきたところをまとめてみよう。彼は、ドルトムントの秘密練習までこっそりと覗くなどと、大変な努力を積んできた。
A 以上の為の走りにつき、常日頃死に物狂いのような練習を積んでいる。ハインケス監督時代の最後にドルトムント・ゲーゲンプレスをそっくり真似してCL杯を取ったバイエルンとともに、ドルトムントは現在の世界でダントツに走るチームと言えるだろう。それも、ダッシュが多いという意味だ。
B 例えば低く構えてコンパクト陣型を作る場合でも、DFラインはおおむねペナルティーラインの2m前まで出ようとして、そのためにDFがこんな練習をしている。DFライン4人が敵ボール位置に合わせて猛烈な勢いで左右に動きつつ、1人は敵ボールにアタックに出る、と。その時必要な攻撃に出たセンターバックをMFがカバーする練習も非常に多い。よって、このチームのMF全員がDFの練習も積んでいる。
C ドルトのパスを繋ぐ攻撃は、バルサよりも縦に速いのが特徴と言える。攻撃の特徴、練習は、敵の間に顔を出し身方パスを引き出すこと。そのためのパス&ムーブの徹底、そしてワンタッチパスの多さなどがある。合宿などでは、ハーフコートの5対5ゲームをワンタッチ限定でやり尽くすということだった。この攻撃の全てに対する防御練習が存在するという事になり、ここにもゲーゲンプレス練習の大事なポイントがあると言える。
最後になったが、ザックのチームコンセプトはドルトムントに非常によく似ていると思う。ザックもドルトムントと同じで、攻撃はバルセロナ、守備はアリゴ・サッキのミランを理想としてきたのだから、当然の事なのだ。組織規律を良く守り、よく走りもする日本人にはこの戦術が非常によく合っていると言える。】