九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

書評 池上彰「そうだったのかアメリカ」  文科系

2020年12月14日 12時03分42秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など

 池上彰が、オバマが大統領になった2009年に集英社文庫から出した本だが、この本で僕は、正直に言うが、彼を見直した。このブログで描いてきたアメリカ論とほとんど変わらない内容だったからちょっと驚いたのである。進化論を否定する宗教国家だとか、中南米や中東に対する「帝国主義国家」だとか、世界経済へのその武力支配の現状だとか、今も残るその人種差別の歴史的根深さとか・・・。終章を除いた全9章にはそれぞれ「この章のまとめ」がついているのだが、そのいくつかをご紹介してみよう。

 第1章 アメリカは宗教国家だ
『アメリカは、憲法で「政教分離」を定めているが、これは「国教」を定めないという意味であって、国民の多くがキリスト教徒であることを前提としている。(中略)
 国民の多くは神の存在を信じ、宗教保守派の影響力が増大している』

 第3章  「帝国主義」国家だ
『「理想」に燃えて建国されたアメリカは、次第に領土を広げ、海外に植民地を持つまでに、「帝国主義化」した。その過程で多くの戦争を経験した。
 その野望はやがて「世界支配」へと進み、世界規模で支配力を拡大した。
 しかし、イラク戦争により、アメリカ軍は泥沼にはまってしまった』

 第4章 「銃を持つ自由の国」だ
『アメリカでは銃を使った犯罪が後を絶たない。アメリカの憲法修正第2条が個人の武器を持つ権利を保障していることを理由に、銃の規制は進まない。アメリカは、個人が武装することで専制政治を阻止することができるという「理想」を掲げているためである』

 第7章 差別と戦ってきた
『アメリカという国は、そもそも奴隷制度を前提に成立した国だったが、やがて奴隷制度の扱いをめぐって南北が対立し、南北戦争に発展する。
 南北戦争中にリンカーン大統領による「奴隷解放宣言」が出されたが、黒人奴隷の実質的な解放に至るまでには、長い長い黒人自身による戦いが必要だった。
 現在では各界で黒人が活躍する姿を見るまでになったが、黒人差別の深刻な実態は依然として存在している』

 第8章 世界経済を支配してきた
『アメリカは、第二次世界大戦中から戦後の国際通貨制度の検討を始め、イギリスのポンドから「基軸通貨」の地位を奪うことに成功した。
 やがてブレトン・ウッズ体制は崩壊するが、ドルが「世界のお金」であるという地位は揺らいでいない』 
 
  第9章 メディアの大国だ
『アメリカの報道界には、新聞、放送のどちらにも、時の権力と戦い、報道の自由を守り抜いてきた歴史と伝統がある。
 その一方で、メディアの巨大化と共に、その伝統は危機にさらされようとしている』

 

 最後に、感想を少々。流石に元NHK記者32年というだけあって、それも事件記者という経歴もあった人らしく、色んなアメリカのニュース、興味深いエピソードに溢れかえった本であった。それで面白く、あっという間に読み進んでしまった。たとえば、オバマが出現した驚きも、ついで、この本が出て何年か経ってトランプが出てきたわけもなんとなく分かるような。もっとも、メイフラワー号到着が日本で言えば関ヶ原合戦の直後であったり、黒人奴隷を巡るあの南北戦争が起こったのが明治維新の頃と知ってみれば、近代(民主主義)政治育成の伝統でさえ極めて薄い国なのだと分かる。僕自身がボストンのホテルで体験した人種差別が、今でも根深く残っているその訳も少し分かったような・・・。一言で言えば、日本はアメリカを美化しすぎている。負の面を知らず、正の面しか見えないようになっていた? 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする