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書評  古賀茂明著「官邸の暴走」  文科系

2021年08月22日 14時48分15秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など

「コロナ渦中でも五輪強行へ」という過程の真っ最中、この6月に出たこの本は、さらけ出されて来た政府の無能を余すところなく解明してくれているようだ。それもそのはずで、著者は総理官邸内部に通じられたこんな経歴のお人なのだ。今の経済産業省官僚から08年自民党内閣の行革・公務員制度改革の中心に座り、そのまま民主党政権にも関わって、民主政権最後の野田内閣になった11年9月に経産省退職という。原発の否定、「I'm not Abe」などで有名なお方だが、安倍・管総理官邸官僚には元経産省官僚が多く、こういう元同僚からの直接間接の情報も多いのだろうなと、この本を読めばよく分かるのである。つまり、今、この人にしか書けなかった、安倍・管政治の実態本! 

 全8章のこの著作の主たる内容を著者はまず、「安倍・管・官邸官僚三人四脚で築いた四つの負のレガシー」と述べている。「官僚(を)支配」(1~3章)、「マスコミ(を)支配」(4章)、「地に堕ちた倫理観」(5~6章など)、「戦争のできる国づくり」(2章)の四つである。加えて最後の7~8章は、「のっぴきならないほど落ちている日本の国力」「真の先進国になるための改革」となっている。以下今回は、「地に堕ちた倫理観」の焦点(中の焦点)に絞って内容紹介してみたい。この焦点こそまた、「(五輪開催に執念を燃やしながら)コロナワクチンが何故これだけ遅れたのか」につながる所だからである。第5章「力不足で思考停止の管内閣」の第1節「哲学なき政権には倫理もない」の触り部分の要約と言って良い。なお、以下の『 』内文章はすべて、本文抜粋であることを示す。

『管政権発足直後から「ポスト今井(文科系注 安倍官邸官僚第一の人物)」として注目を浴びた人物がいる。内閣総理大臣補佐官の和泉洋人氏だ』
『安倍政権の頃から、アジア各国へのインフラ輸出を手掛けてきた総理補佐官の和泉氏は、海外出張に部下だった大坪寛子氏(現厚労相大臣官房審議官)を同伴していた。和泉氏が内閣官房健康・医療戦略室の室長で既婚、大坪氏はシングルという関係だった。ところが二人の出張の際、総理補佐官室の担当者が外務省担当者に、二人のホテルの部屋を内部でつながった「コネクティングルーム」で予約するようにとメールで指示していたことが発覚。ミャンマー、インド、中国、フィリピンと、18年の四度の海外出張が公私混同の「不倫出張」だったという疑惑は、国会で何度も追及された。不倫自体、許されないことだが、明らかに怪しまれる「コネクティングルーム」でのホテル予約を部下に命じたのは、公私混同の最たるもの。』


『この和泉・大坪カップルは、19年8月にも京都大学ips細胞研究所へ二人で出張し、ノーベル生理学医学賞受賞者の山中伸弥教授に対して驚くような発言をしている。大坪氏が「ips細胞への補助金なんて、私の一存でどうにでもなる」と言い放ち、再生医療の実用化に向けた研究予算を打ち切る方針を告げたと報じられたのだ。
 国費の予算配分とは、行政内部でオープンな手続きを踏んで決めていくものであり、「私の一存で」という発言は非常識極まりない暴言である。しかも、この恫喝の約3時間後に、京都でデートを楽しむ二人の写真が週刊文春に掲載された』

『さらにこのカップルは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の運営にも不当に介入していた。AMEDは、医療分野の研究開発とその環境整備を担う機関だ。・・・・しかし内閣官房に設置されていた健康・医療戦略室の次長が18年7月に医療技官の大坪氏となった頃から、(AMED)理事長らに「各省の予算のマネジメントなどは全部、健康・医療戦略室を通すように」、「担当大臣など政治家の方々とコンタクトを取るな」などの干渉が始まったという。
 また令和元年度後半の調整費80億円が、大坪氏が推進する「全ゲノム解析計画」に使われるということが、健康・医療戦略室による不透明なプロセスで決まったという。反発する理事、執行役および経営企画部長は、和泉氏の執務室に呼びつけられ、「大坪氏の言うことを聞いてうまくやらなければ、人事を動かす」と恫喝されたとの事実も明らかになっている』
 そして事実、末松誠理事長(元慶大医学部長)が20年4月のコロナ流行・学校閉鎖という緊急時に、任期満了をそのまま適用してAMEDから追い出されてしまった。このことについてiPS細胞の山中伸弥氏が事前にあげていたこんな不安の声も無視されてのことだったと、古賀氏はこう書いている。
『「しばらく前からAMEDでは、末松誠理事長が思う存分リーダーシップを発揮できない状況にあり・・・20年4月に末松理事長は就任から5年を迎えるが、感染拡大の深刻さを考えれば、理事長の任期を1年でも延長して、困難に立ち向かうべきではと思っている」(日経バイオテクオンライン2020年3月27日)』

『今私たちは、日本が世界のワクチン開発競争で決定的敗北を喫したのを目の当たりにしている。20年春に山中教授が危惧した通りの展開ではないか。本書が出版される21年6月頃には、・・・・日本では高齢者へのワクチンの接種さえ終わらないという事態に、国民は苛立ち、どうして日本国内ではワクチンや治療薬の開発ができないのか? と疑問が呈されているだろう。その時、不倫カップルが、ワクチンや治療薬の開発に迅速に回せるはずだった予算の大半を大坪氏のプロジェクトに使ってしまったのだということを国民が知ったら、おそらく二人は霞が関にいられなくなると思うのだが。それでも、管氏の威光で官邸に居座り続けるのだろうか。』

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