米中覇権闘争をアメリカが激しく仕掛け始めている中で、日本の政治進路はますます難しくなっている。ただでさえ、国民一人当たり購買力平価GDPがコロナ渦以前の19年度で台湾(世界20位)はもちろん30位韓国にも抜かれて33位へと落ちぶれ、結婚できぬ若者が溢れ、出生率、少子化記録を年々塗り換えて来た惨めな国なのだ。こういう諸困難を抱えた近年においても安倍・日本会議がこんな国家運営方向に励んできたわけだが、貧困化の解決方向をねじ曲げる右翼ポピュリズム流の全体主義イデオロギー(政治方向)の典型という以外にない。
『私たちは、皇室を中心に、同じ歴史、文化、伝統を共有しているという歴史認識こそが、「同じ日本人だ」という同胞感を育み、社会の安定を導き、ひいては国の力を大きくする原動力になると信じています』(日本会議のよびかけ文から)
こんな「同胞感」こそ、「社会の安定」を導く? 「国の力を大きくする原動力」? では是非訊ねたいのが、これ。購買力平価一人当たりGDP世界5位の国が、わずか25年で33位にまでに落ちぶれたのはどうしてか。そのきっかけとなった(日本)住宅バブルとその破裂は誰が起こしたのか。アジア通貨危機を燃え上がらせたのは米日金融だったが、リーマンショックで世界景気を長く奈落の底に引きずり落とし、99%の貧困化をさらに進めて、そんな世界的災厄を官製バブルによって粉飾し続けているのは誰なのか。これに対して、上記の「同胞感」がどんな力を生み、社会的安定をもたらしたか、これに答えてほしいものだ。
最近のアメリカ世界戦略には三つの時代区分があった。1990年ほどまでの冷戦時代、その後湾岸戦争を発端ににわかに起こってきた「テロとの戦争」、そして今は米中覇権闘争に血道をあげ始めている。そもそも、これらの「世界戦略」時代区分に共通して流れる本質はなんであったか。そんな答えも無しに米中トゥキディデスの罠という泥船に巻き込まれていくのは真っ平である。
何よりも今は、アメリカがなぜ保護貿易主義という乱暴狼藉に走ったのかを考えてみるが良いのだ。国家累積赤字がGDPの四倍というアメリカに同調し続けるのは、同じく二倍という日本の貧困化を招いただけだったのではないのか? 今日本と世界に最も必要なのは上記「同胞感」などではなくって、その正反対物、まともな職を作り増やす世界的計画・構想力だろう。短期金転がしに励む金融資本主義も、その正反対物である。