この文章は、ある本の内容紹介である。そして、標記の言葉は、読み終わったばかりのこれ「70歳が老化の分かれ道」(詩想社 精神科医・和田秀樹著)第2章の中の一節の表題である。ここには、「免許を返納してはいけない」だけでなく、老人社会を騒がせて来た「返納の理由」もなんの根拠もない偽物であると、そんな内容が書いてあった。そのことを以下、本文抜粋だけで示してみよう。
『(筑波大学などの研究チームが2019年に公表した調査結果で)愛知県の65歳以上の男女2800人を追跡調査しました。・・・2006~2007年時点で要介護認定を受けておらず、運転をしている人に10年8月の時点で運転を続けているかあらためて聞き、認知機能を含めた健康状態を調べ、さらに16年11月まで追跡して、運転継続と要介護認定との関係を分析したのです。・・・その結果、10年時点で運転をやめていた人は、運転を続けた人に比べて、16年には要介護となるリスクが2.09倍にもなったのです』
『そもそも、実際に高齢者が事故を起こす確率は高くないのです。・・・もし、交通事故を減らそうと考えるのなら、圧倒的に多く事故を起こしている若年ドライバーの運転になんらかの手を打つほうが効果的です』
『高齢者専門の精神科医の立場から言わせていただくと、認知症が原因で、ブレーキとアクセルを間違えるなどということは、ほぼあり得ません。・・・車の運転ができるような人であれば、軽度の認知症でも、ブレーキとアクセルの区別がつかなくなるということは確率的にゼロに近いはずです』
踏み間違いの原因はむしろ、『うっかりしたり、慌てたからなのです』。また『ほとんどが、薬による意識障害が原因ではないかと私は考えています』
こうして、結論。
『データをもとに合理的に考えるなら、高齢者から免許を取り上げるなどということに、正当性は全くありません。お上に従う気質が染み付いている日本社会では、このようなことを行政が推進しても騒ぎが起こりませんが、人権意識が確立されている欧米社会では、高齢者に対する差別と言われかねないでしょう』