随筆 料理の社会化に敗北した話 K・Kさんの作品です
娘夫婦は共働き。帰宅は七時頃になり、連れ合いはもっともっと遅い。共働家庭でも妻の家事負担が多い上に、食育だ、手作りだ、と家庭料理に対する圧が、諸外国に比べて強い日本。企業や政治家の、料理は母親がするものだという思い込みに、うんざりさせられることもまだまだ多い。料理を好きとか楽しいより義務感の方が大きいのではないだろうか?
お腹が空いて待ちきれない孫達のために、近くに住む私が毎日手伝いに行っている。なるべく旬や栄養や味について考えて、手作りを心掛けてきた。肉巻きロール、ハンバーグ、酢豚など。
だが、どれだけ考えて料理しても、食べないときは食べない。給食でお代わりしたというメニューを再現しても、食べないときはもう絶対に食べない。もうヤダ!と、しんどさに料理は作らない。総菜を買ってくるか、冷凍食品にした。
ところがこれが好評だった。スーパーの総菜コーナーから選ぶ、チーズの入った二重ミンチかつ、海老カツ。冷凍の小籠包は胡麻油の香りで肉汁たっぷり。餃子は油も水も要らない。凍ったまま焼くだけ。パリパリに仕上がる。かなわない。今までの手作りは私の一人相撲だった。でも、これが料理と言えるのか? そんなことより簡単で美味しい。家庭は平和だ。
別格は、夫が作っているカボチャの煮物。ダイエット中の中学二年の孫は、食後のデザートと毎日楽しんでいる。ちょっと悔しいけれど、良しとしよう。