九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

安倍さんはウソつきか? らくせき

2018年02月04日 10時18分00秒 | Weblog
こんなアンケートがあったら、どう答えます?

私は「はい」です。

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書評「アベノミクスによろしく」(1)政府統計数字で大嘘を暴いた本  文科系

2018年02月04日 09時55分50秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 今日本のベストセラーになっている本だが、2017年10月11日に第1刷発行で、18年1月23日第5刷発行とあったから、なるほど。ブラック企業被害者の弁護士を務められ、そういう現場から堪りかねて経済を勉強し直し、政府発表の統計数字だけを使ってこの本を書かれたのが、明石順平弁護士。東京都立大学と法政大学法科大学院を卒業された方だ。

 ちなみに、本日の中日新聞にもこの本の事が載っている。4面言論欄の連載コラム「中日新聞を読んで」で、コラム担当者の一人、シネマスコーレ支配人木俣純治さんがこう触れられている。
『アベノミクスは本当に成功しているのか。この疑問に応える好著がある。弁護士、明石順平氏の「アベノミクスによろしく」(集英社インターナショナル)は、統計データを活用して、極めてわかりやすくアベノミクスの本質を突いている。この本によれば、実質賃金指数は「アベノミクス開始以降の三年度を全部合計すると4・3%も落ちている」。さらに、増税と円安の影響は、一四年度の実質民間最終消費支出の歴史的下落につながっている、とあるからあぜんとする。賃上げはされたが、実質賃金が落ちているので、景気は上向いていない』

 さて、書評と言ってもいつも内容紹介になるのだが、今回は全八章とも各章末尾に著者による「まとめ」、要約がついているので、それを順番に紹介していきたい。ただし、第1回目だけは、この本の帯、裏面の文章を全文紹介することにした。

『豊富なデータにより、アベノミクスの本当の姿が今、あきらかに!
・異次元の金融緩和でもマネーストックの増加ペースは変わらず。
・実質賃金大幅下落で、国内消費が「リーマンショック時を越える下落率」を記録。
・3年間で比較すると実質GDP成長率は民主党時代の3分の1。
・新しいGDP算出基準への対応を隠れ蓑にし、GDPを異常にかさ上げ。
・雇用改善はアベノミクスと無関係。株価も日銀と年金でつり上げているだけ。
・金融緩和の副作用は、それをやめた時の国債、円、株価の暴落。』


(あと3回は、これを続けます)


 昨日まで一週間の累計アクセスが1541人、同じく閲覧数10,167になりました! 読んで下さった方々にご報告するとともに、深謝します。
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マスコミ報道の歪み(5)2日、朝日のフェイクニュース  文科系

2018年02月03日 08時45分00秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 2日の朝日新聞4面にこんな記事があったが、これも完全なフェイクニュース。

 扱った事項は、北朝鮮選手団の韓国オリンピック村到着完了というもの。それを、こんな見出しで書いていた。
「市民ら複雑、『北に振り回されている』」

 さてそれで、記事内容はというと、こういうもの。付近の若者10人に感想を聞いてみたが、「ほぼ全員がこの到着を肯定的に捉えていた」と書き、それらの感想はこう。
「同じ民族なんだから、良い事だ」
「これを機会に関係が改善される事を望む」

 そして10人の内ただ一人が「北に振り回されている」と語ったとあった。


 さて、どうだろう。嘘ではないが作為があって、偽見出しという意味で偽報道と言いたい。フェイクとは嘘ではなく、見せかけだけとか偽物という意味だから、こういうのをフェイクニュースというのだろう。1日のここに書いた中日新聞のシリア記事とか、その前の北朝鮮記事等と同じような、偏った立場から創った偽報道ということ。もっとも、朝鮮関連についてはどの新聞にも圧倒的にフェイクニュースが多いのだが。

 しかも、以下のような意味でこの偽物性はちょっと酷い。現在の北はアメリカとほぼ戦争状態。その北と韓国との仲をわざわざ大きく見せて引き裂くような報道は、日本人を戦争に持っていこうというような、それもアメリカよりの立場でそうしようというような、そういう悪質な役割さえ伺われると見たがどうだろうか。

 朝鮮半島の北と南は、元々いきなり人工的に分け隔てられたもの。ジジババ、親兄弟親類が2国に入り乱れて存在するはずで、そういう2国が戦争を起こしたくないなんて当たり前、ごく自然な人の情。そんな発言が多かったのに、そちらを無視してごく少数の「市民ら複雑」を強調するのは、同じ人として許せない気持になったものだ。
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よたよたランナーの手記」(216)キロ6分半!  文科系

2018年02月03日 08時34分20秒 | スポーツ
 前回215回目でも2年ぶり近い復調を示すジム記録が出たと書いたが、本日さらにまた、それを裏付ける一山を超えた。外走りの7キロちょっとの中で吹上公園5周5キロちょっとのタイムを取ったのだが、こんな数字を弾き出している。

1キロ平均6分27秒。ランニングウオッチでストライドの長さを測りだしてから過去最大の99センチ。それでいて心拍数は上がっていずに少なくて、148と出た。大きな歩幅で心臓を上げることなく、タイムを稼いだということだ。

『12月6日のここに「10キロ65分も行けそうか?」と書いたが、そんな目標が明日の現実と見えてきた感がある』と、これは1月6日の文章。その目標が達成されたに等しいのである。

 キロ6分27秒平均で10キロを走れば64分30秒になる。平均ストライドが過去最高から6センチ伸びたというのはとても大きな成果だが、脚の外側を鍛えて蹴り脚を強くする特別な筋トレ(そういう、マシンと、階段トレーニング時の注意)を重ねてきた結果だから、まだまだ記録は伸びると目論んでいる。こうして、病気とマシン走りとから衰えていた蹴り脚を回復して僕の元々のストライドが戻ってのピッチ(1分間の歩数)は160と、それが2年ぶりの好記録の正体である。一時は外走りがマシン走りよりもかなり遅いと感じていたものだが、今は両者が全く変わらないとも分かった。これも大きな喜びだ。

 人間、ここまで年とってもまだまだ鍛えられるって、幸せな驚きをまた味わった。今後がまた楽しみになった。ただ、「好事魔多し」が年寄りの冷や水の留意点。無理はすまい。
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マスコミ報道の歪み(4)戦前の、その一例   文科系

2018年02月02日 07時28分28秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など
 表題のような事で、旧稿を再掲します。日本を太平洋戦争に導いた戦犯・東條英機を、当時のマスコミがどれだけチヤホヤしたか。安倍のマスコミ工作が執拗なだけに、思い起こすべき時ではないでしょうか。伊藤詩織さん事件も安倍のマスコミ工作の一環と言われていますね。


【 ”東条英機首相への熱狂ぶりと、その源泉”  文科系 2010年11月24日

はじめに

 本日ネット虫さんが興味深い記事を載せて下さった。41年12月8日、この日を当時の子どもがどう覚えていたか。これを一気に読んで、すぐに表記の記事を書こうと、僕は思い立った。当時の子どもたちの心にさえ深く刻み込まれた「戦争への感動」、その象徴的存在であった東条首相への熱狂ぶりについて書いてみようと。僕の同人誌にも軍国少年、軍国少女がお一人ずついらっしゃる。お二人とも、その後の人生はなかなか優秀だったろうとお見受け出来る方々である。今は多分、その正反対の人生観をお持ちのはずだが。
東条英機は、A級戦犯の象徴的存在。41年12月8日開戦時の首相にして内相であって、陸軍大臣までを兼務した、現役の陸軍大将である。また、陸軍参謀総長も兼任していたから、大元帥・天皇の大本営の幕僚長でもあった。彼の前歴には、関東憲兵隊司令官というものもあった。満州国の治安の要に位置する機関であって、35年9月から37年2月のことである。娑婆、「地方」(軍隊は軍隊の外の世界をこう呼んだのでした)、世相にも、よく通じているのである。
 彼は、天皇の信任は篤く、水戸黄門まがいの「民衆査察」を行い、ラジオ、新聞を上手く使って民心を躍らせ、掌握した。ヒットラーにも劣らないその掌握術を、ご紹介したい。種本は例によって、岩波近現代史シリーズ10巻本の第6巻「アジア・太平洋戦争」。この巻の著者は吉田裕・一橋大学大学院社会学研究科教授である。【 】がほとんどであるが、ここからの抜粋を示している。 

1 人々の東条支持熱

 その人気は、一時の小泉旋風などという次元のものではない。戦争の英雄たちの、そのまた大元締、空前絶後の国民的大英雄なのである。そういう大英雄が、マスコミによって実に身近な存在に描かれるところがまた、お見事というほかはないのである。

【 東条首相は、各地で国民に熱烈に歓迎された。42年7月27日、大阪の中央公会堂で開催された「大東亜戦争完遂国民総力結集大講演会」の折には、講演を終えて退場する東条首相を熱狂した群衆がとりかこんだ。28日付の『朝日新開』は、その場の状況を、「熱狂した数千の聴衆は帽子、扇子を打ち振り打ち振り、〃万歳々々″と歓声をあげ、(中略)あつといふ間に東条さんを取り囲む。「しつかりやります、やりますとも」「米英撃滅だ、東条閣下お願ひします」「東条首相万歳」と群がる市民は熱狂して全く感激のるつぼだ」と報じている。これが誇張でないことは、同日の首相秘書官の記録に、「公会堂発」、「総理自動車会衆の圧倒的歓迎に取り囲まれ約十分、会衆の中を徐行す」とあることからもわかる(伊藤隆ほか編『東条内閣総理大臣機密秘録』東京大学出版社1990年)。

 さらに、東条に関するすぐれた評伝をまとめた作家の保阪正康も、この頃の東条について、「東京・四谷のある地区では、東条が毎朝、馬に乗って散歩するのが知れわたり、その姿を一目見ようと路地の間で待つ人がいた。東条の乗馬姿を見ると、その日は僥倖に恵まれるという〈神話〉が生まれた」と書いている。東条は、一般の国民にとって、「救国の英雄」だった(保阪『東条英機と天皇の時代(下)』) 】


 当時、東条報道を新聞がどう行ったかもなかなか興味深い。【例えば、42年8月18日付の『読売報知』は】として、こんなことが抜き出されていた。
【「忙中忙を求める東条さん」、「割引市電で街の視察 鋭い観察力と推理力の種は正確なメモ 拾った民情必ず”決済”」という見出しの記事を掲載し、「キビキビした政務の処理、そして電撃的な民情視察・・・国民は曾てこれほど”首相”を身近に感じたことはなかった。・・・とにかく、そこに新しい一つの”指導者の形”が打ち出されているのは確かだ」と論じている 】

2 民心操縦術

【 総力戦の時代は、多数の国民の積極的な戦争協力を必要不可欠なものとする。そうした時代にあっては、力強い言葉と行動で、直接国民に訴えかけるタイプの指導者が求められる。東条は、そのことをよく理解していた。43年9月23日、東条は側近に次のように語っている(伊藤隆ほか編『東条内閣総理大臣機密秘録』東京大学出版社1990年)
 国民の大多数は灰色である。一部少数の者が批判的言動を弄するものである。そこで国民を率いてゆく者としては、此の大多数の国民をしっかり摑んでぐんぐん引きずつてゆくことが大切である。大多数の灰色は指導者が白と云へば又右と云へばその通りに付いてくる。自然に白になる様に放つておけば百年河清を待つものである。
 東条の芝居がかったパフォーマンス、特にたびかさなる民情視察は、識者の反発と顰蹙をかった。特に、東条が住宅街のゴミ箱をチェックしてまだ食べられるものや再生可能なものが捨ててあると非難したことは多くの国民の失笑をかった。首相として他にやるべきことはないのかという批判である 】

3 政治的力の源泉、宮中工作など

 マスコミ総動員で作ったこういった東条の「表の顔」の他に、政治家としての裏の顔があるのもまた当然。
【 政治資金の面でも、東条首相は有利な立場にあった。陸相として陸軍省の機密費を自由に使うことができたからである。この点については、いくつかの証言がある。例えば、元陸軍省軍務局軍事課予算班長の加登川幸太郎は、「何に使ったかわからんけど、東条さんが総理大臣になった時、(中略)三百万円という機密費三口を内閣書記官長に渡せ、と来るんだね。(中略)あの頃二百万円あったら飛行機の工場が一つ建ったんだから」と回想している(若松会編『陸軍経理部よもやま話』)。 (文科系による中略)
 なお、臨時軍事費中の機密費の支出済額をみてみると、42年段階で、陸軍省=4655万円、海軍省=2560万円、44年段階で、陸軍省=1億2549万円、海軍省=1865万円であり、陸軍省が機密費を潤沢に使用していたことがわかる。
 東条首相の政治資金の潤沢さについては、44年10月15日に、反東条運動の中心となっていた政党政治家の鳩山一郎が、近衛文麿と吉田茂(戦後の首相)との会談の中で語っている内容が参考になる。同席していた細川護貞は、その内容を次のように記録している(『細川日記』)。
 一体に宮内省奥向に東条礼賛者あるは、附け届けが極めて巧妙なりし為なりとの話〔鳩山より〕出で、例えば秩父、高松両殿下に自動車を秘かに献上し、枢密顧問官には会毎に食物、衣服等の御土産あり、中に各顧問官それぞれのイニシアル入りの万年筆等も交りありたりと。又牧野〔伸顕元内大臣〕の所には、常に今も尚贈り物ある由。
 この後、鳩山は、「東条の持てる金は16億円なり」と語り、近衛は東条の資金源は、中国でのアヘンの密売からあがる収益だと指摘している。アヘン密売との関係については確証がないが、46年7月の国際検察局による尋問の中で、近衛の側近の富田健治が、東条はアヘン売買の収益金10億円を鈴木貞一陸軍中将(興亜院政務部長)から受けとったという噂があると指摘している。興亜院は、アヘンの生産と流通に深くかかわった官庁である。皇族への「附け届け」については、史料的に確認することができる。42年12月月30日付の「東久邇宮稔彦日記」に、「この度、陸軍大臣より各皇族に自動車をさし上げる事となれり」とあり、この日、東久邇宮のところには、陸軍省関係者から、アメリカ製の自動車が届けられているからである 】
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マスコミ報道の歪み(3)シリア内乱工作の視点ゼロ   文科系  

2018年02月01日 13時25分16秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 この題名でしばらく連載を続けたい。「マスコミ報道の歪み」という意味内容で。

 本日中日新聞4面左下にこんな見出しの記事がある。
「シリア新憲法 実現性に疑問符」
「設立合意で『国民対話会議』閉幕」
 内容もこの見出しの通りだが、この見出し自身が歪んだ内容、視点だとずっと愚考してきた。その歪みの焦点はここ。
「ただ、主要な反体制派は、アサド政権を支えるロシアが主導する和平協議に反発し欠席。合意の実現性を疑問視する向きもある」
「会議ではアサド大統領の処遇には触れられなかった」

 主要な反体制派とは、サウジ、アメリカなどが工作し続けてやっと生き延びてきた存在とは、誰でも知っている事実だ。破壊的兵器を与えるだけではなく、アメリカなどの顧問団までつけた軍事訓練までを施してきたと広言してきたのである。
 他方、アサド大統領は国連も認めた独立国。この独立国の要請で政権支援をするとすれば(イラン、ロシアがこれをやっている)、これは言わば集団安保支援と同様である。だからこそ国連は、「反体制派」が出ようが出まいが、この会議を国連仲介のジュネーブ和平会議の一環と認めて、特使を派遣しているのだ。

 こうしてつまり、この中日新聞記事はサウジ・アメリカ寄りに過ぎると言いたい。極言すれば、反乱支援記事とも言える。反乱支援の立場をずっと正当化してきた「国際問題」、アサド政権の化学兵器使用問題一つ採っても、あいまいな点が多すぎて何の実証もないだけでなく、これでもって内戦組織をするのでは完全な国際法違反になる。丁度、アメリカが言う「ならず者国家」がなぜそうなのかという理由もあいまいなままにこれを潰してよいとしてきたのを支援するも同様の記事と言える。日本の新聞がこぞって、イラク戦争を支持したような。

 国連は内政干渉を禁じている。アメリカも国連に従うべきだ。アメリカがそうでないからこそ、今の世界が荒れているのだから。アフガン戦争、イラク戦争、シリア内乱、そして今北朝鮮。北朝鮮政府の評価は国民が決める事であって、アメリカがこれを決めて「だから、潰して良い」と戦争を仕掛けるのは言語道断である。同じく、国連制裁決議以上の事をしてよいとするのは、先制攻撃つまり戦争を仕掛けるのと同じことだと考える。

 新聞は、国際問題でアメリカよりに過ぎる。もっと国連寄りの視点で書くべきだろう。トランプがこんなことを広言し出した現在、緊急のマスコミ歪み是正課題である。
『弱さは紛争に繋がる。比類なき力こそが確実な防衛手段になる』
『常に米国の利益に沿い、米国の友人だけを支援する』
 アメリカのこういう力が、イラク戦争のように国連を制止を振り切って成されたという意味で国連を無視しつつ行使されるとすれば、これは世界が認めないものというべきだ。
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天皇が太平洋戦争を決定した場面   文科系

2018年02月01日 10時25分18秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など
 表記のことについて、右翼の方々はこのブログでも常にこのように語られてきた。天皇の統治権は形式的なものであって、戦争政策においても実際に何かを決めたということはない、と。このことについて、ある本(岩波新書日本近現代史シリーズ10巻のうち、その6「アジア・太平洋戦争」、著者は、吉田裕・一橋大学大学院社会学研究科教授)が反論を実証した開戦決意の瞬間と、その前後の論証とをまとめてみたい。

1 軍事法制上の天皇の位置 「統帥権の独立」

『統帥権とは軍隊に対する指揮・命令の権限のことをいうが、戦前の日本社会では、大日本帝国憲法(明治憲法)第11条の「天皇は陸海軍を統帥す」という規定を根拠に、この統帥権は天皇が直接掌握する独自の大権であり、内閣や議会の関与を許さないものと理解されていた。
 明治憲法上は、立法権、行政権、外交権などの天皇大権は、国務大臣の輔弼(補佐)に基づいて行使されることになっており、統帥権だけが国務大臣の輔弼責任外にあるという明文上の規定は存在しない。それにもかかわらず、天皇親率の軍隊という思想の確立にともない、制度面でも統帥権の独立が実現されてゆく。1878(明治11)年の参謀本部の陸軍省からの独立、1893(明治26)年の軍令部の海軍省からの独立、1900(明治33)年の陸海軍省官制の改正などがそれである』
『一方、参謀本部と軍令部(統帥部と総称)は、国防計画・作戦計画や実際の兵力使用に関する事項などを掌握し、そのトップである参謀総長と軍令部総長は、陸海軍の最高司令官である「大元帥」としての天皇をそれぞれ補佐する幕僚長である。この場合の補佐は、国務大臣の輔弼と区別して輔翼とよばれる。国務大臣は、憲法に規定のある輔弼責任者だが、参謀総長・軍令部総長は、憲法に明文の規定がない存在だからである。
 軍事行政と統帥の二つにまたがる「統帥・軍政混成事項」については陸海軍大臣が管掌したが、国務大臣としての陸海軍大臣も統帥事項には関与できないのが原則であり、参謀本部・軍令部は、陸軍省・海軍省から完全に分立していた。以上が統帥権の独立の実態である

2 「能動的君主」としての天皇

 9月6日決定の「帝国国策遂行要領」

『統帥に関しては、「能動的君主」としての性格は、いっそう明確である。天皇は、参謀総長・軍令部総長が上奏する統帥命令を裁可し、天皇自身の判断で作戦計画の変更を求めることも少なくなかった。また、両総長の行う作戦上奏、戦況上奏などを通じて、重要な軍事情報を入手し、全体の戦局を常に把握していた(山田朗『大元帥 昭和天皇』)。通常、統帥権の独立を盾にして、統帥部は首相や国務大臣に対して、重要な軍事情報を開示しない。陸海軍もまたお互いに対して情報を秘匿する傾向があった。こうしたなかにあって、天皇の下には最高度の軍事情報が集中されていたのである

 そういう天皇であるから、重大な局面ではきちんと決断、命令をしているのである。本書に上げられたその実例は、9月6日御前会議に向けて、その前日に関係者とその原案を話し合った会話の内容である。まず、6日の御前会議ではどんなことが決まったのか。
『その天皇は、いつ開戦を決意したのか。すでに述べたように、日本が実質的な開戦決定をしたのは、11月5日の御前会議である。しかし、入江昭『太平洋戦争の起源』のように、9月6日説も存在する。この9月6日の御前会議で決定された「帝国国策遂行要領」では、「帝国は自存自衛を全うする為、対米(英欄)戦争を辞せざる決意の下に、概ね10月下旬を目途とし戦争準備を完整す」ること(第1項)、「右に並行して米、英に対し外交の手段を尽くして帝国の要求貫徹に努」めること(第2項)、そして(中略)、が決められていた』
 さて、この会議の前日に、こういうやりとりがあったと語られていく。

 前日9月5日、両総長とのやりとりなど

『よく知られているように、昭和天皇は、御前会議の前日、杉山元参謀総長と水野修身軍令部総長を招致して、対米英戦の勝算について厳しく問い質している。
 また、9月6日の御前会議では、明治天皇の御製(和歌)、「四方の海みな同胞と思ふ世になど波風の立ちさわぐらむ」を朗読して、過早な開戦決意を戒めている。
 ただし、天皇は断固として開戦に反対していたわけではない。海軍の資料によれば、9月5日の両総長による内奏の際、「若し徒に時日を遷延して足腰立たざるに及びて戦を強ひらるるも最早如何ともなすこと能はざるなり」という永野軍令部総長の説明のすぐ後に、次のようなやりとりがあった(伊藤隆ほか編『高木惣吉 日記と情報(下)』)。

 御上[天皇] よし解つた(御気色和げり)。
 近衛総理 明日の議題を変更致しますか。如何取計ませうか。
 御上 変更に及ばず。


 永野自身の敗戦直後の回想にも、細部は多少異なるものの、「[永野の説明により]御気色和らぎたり。ここに於いて、永野は「原案の一項と二項との順序を変更いたし申すべきや、否や」を奏聞せしが、御上は「それでは原案の順序でよし」とおおせられたり」とある(新名丈夫編『海軍戦争検討会議議事録』)。ここでいう「原案」とは、翌日の御前会議でそのまま決定された「帝国国策遂行要領」の原案のことだが、その第一項は戦争準備の完整を、第二項は外交交渉による問題の解決を規定していた。永野の回想に従えば、その順番を入れ替えて、外交交渉優先の姿勢を明確にするという提案を天皇自身が退けていることになる

 こうして前記9月6日の「帝国国策遂行要領」は、決定された。つまり、対米交渉よりも戦争準備完整が優先されるようになったのである。続いて10月18日には、それまで対米交渉決裂を避けようと努力してきた近衛内閣が退陣して東条内閣が成立し、11月5日御前会議での開戦決定ということになっていく。
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