goo blog サービス終了のお知らせ 

路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【社説②・11.13】:デブリ取り出し 廃炉への長い道のりの一歩だ

2024-11-13 05:00:40 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【社説②・11.13】:デブリ取り出し 廃炉への長い道のりの一歩だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・11.13】:デブリ取り出し 廃炉への長い道のりの一歩だ

 福島第一原子力発電所の廃炉は、困難で長い道のりになる。政府と東京電力は、廃炉をやり遂げるという強い決意をもって、着実に作業を進めなければならない。 

 東電は、福島第一原発2号機から、溶け落ちた核燃料(デブリ)を採取した。デブリの回収は、原発事故から13年半を経て初めてとなる。この先数十年続く廃炉作業は、最難関とされる工程の入り口に差しかかったばかりだ。

 当初、東電は8月に作業を始める予定だった。しかし、取り出し装置を原子炉内に押し込むパイプの接続順が間違っていることが判明し、出だしからつまずいた。

 その後、東電は9月に作業を再開したが、今度は途中でカメラが映らなくなり、中断を余儀なくされた。高い放射線量の下で、電気回路に異常が生じたことが原因だと推定されている。

 廃炉の現場で安定して作業を進めることの難しさがあらわになったと言えよう。

 福島第一原発の廃炉は、世界でも例のない挑戦で、今後も未知の障害に見舞われることは避けられないだろう。廃炉作業には、東電のほか、関係メーカーや下請け企業などの協力も欠かせない。

 複雑なプロジェクトを統括するため、東電はこれまでの失敗から教訓をくみ取り、管理体制の見直しや技術開発などを進めていくことが求められる。

 1~3号機には現在、計880トンものデブリが残る。今回、採取に成功したデブリはほんのひとかけらで、重さは0・7グラムにすぎず、デブリ全体の特性を反映しているかどうか明らかではない。

 茨城県の研究機関に送られ、組成や硬さなどが分析される。結果は、デブリ取り出し工法の決定や収納容器の設計に生かされる。量や質が十分でない場合は、再度のサンプル採取も検討すべきだ。

 デブリの本格的な取り出しは、建屋全体を水没させる「冠水工法」、 充填 じゅうてん 材で固めたうえで掘削する「充填固化工法」など異なる工法が検討されている。いずれも今回の試験的採取よりはるかに大がかりとなり、難度も高い。

 政府は2051年の廃炉完了を目標としているが、既に当初計画より3年遅れている。いずれ計画を見直すことが避けられなくなるのではないか。その場合、必要となるコストや影響について、十分に説明することが不可欠だ。

 東電は、まずは最大限の努力を尽くし、本格的な取り出しに向けた準備を整える必要がある。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月13日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【社説・11.13】:原発デブリ回収 廃炉の現実を直視せよ

2024-11-13 04:01:30 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【社説・11.13】:原発デブリ回収 廃炉の現実を直視せよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.13】:原発デブリ回収 廃炉の現実を直視せよ

 東京電力が福島第1原発2号機で発生した溶融核燃料(デブリ)を試験的に回収した。 

 デブリは、原発事故によって核燃料が溶け落ち、原子炉内にあった構造物と混じり合って固まったもので、極めて強い放射線を出す。

 今回取り出したのは、5ミリ程度の小石状で重さは0・7グラム。東電は研究施設で成分や構造を分析し、今後の取り出し方法の検討に生かす。

 デブリの回収は、2011年3月の原発事故後初めてだ。

 ただ1~3号機にあるデブリは推計880トン。今回の回収は、先が見えない道のりのスタート地点に立ったに過ぎない。

 事故後、当時の民主党政権がまとめた廃炉工程表は10年以内のデブリ取り出し開始を掲げた。

 目標は自公政権も引き継いだが、前段となる原子炉格納容器の内部調査は難航した。デブリを取り出すための機器の開発も遅れ、3度の延期を繰り返してきた経緯がある。

 今回の回収作業も、当初は8月に始める予定だったが、取り出し装置の不備が分かり中断。その後、装置が故障するトラブルもあり、2度の中断を余儀なくされた。

 取り出し装置の不備は、東電や元請け企業が現場を下請け任せにし、自ら確認していなかったことが原因だった。

 廃炉作業の根幹に関わる初歩的なミスで、東電の姿勢が問われる。

              ■    ■

 東電は、廃炉に向けたデブリの取り出しについて(1)2号機で24年度末までに範囲を広げ微量を採取(2)20年代後半に規模を拡大(3)30年代初頭に大規模な作業ができる3号機で本格開始-するとし、事故から30~40年の41~51年には廃炉を完了するとしている。

 しかし、既にデブリの取り出し開始は3年遅れている。

 試験的に取り出したデブリの分析から何が得られるのかも現時点では未知数だ。肝心な回収の工法すら定まっていない中で、880トンものデブリを本当に全て取り出すことができるのか。

 取り出した後はどのように保管し、最終的にどう処分するのかも決まっていない。

 政府や東電は現状を直視し、今後の現実的な廃炉の道筋を示すべきだ。

             ■    ■

 国内の原発は事故後、安全確認のためいったん全ての運転が停止された。

 徐々に再稼働され、先月は被災地で初めて宮城県の女川原発が再稼働した。

 だが6日目には、トラブルを起こして再び停止を余儀なくされた。

 福島の事故の教訓は生かされているのか。

 岸田文雄政権は22年、事故後に歴代政権が維持してきた「原発の依存度低減」を転換し、最大限の活用を表明した。

 このまま原発に頼り続けていいのか。廃炉の現実に向き合い、エネルギー政策を根本から見直すことも求められる。

 元稿:沖縄タイムス社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月13日  04:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【社説・11.11】:福島第1デブリ回収 廃炉への一歩につなげよ

2024-11-12 04:00:30 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【社説・11.11】:福島第1デブリ回収 廃炉への一歩につなげよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.11】:福島第1デブリ回収 廃炉への一歩につなげよ

 廃炉に向けた第一歩となるよう、東京電力と政府の今後の取り組みに注目したい。

 2011年3月の東日本大震災で大規模な事故が起きた福島第1原発の廃炉作業に向け、東京電力は2号機から溶融核燃料(デブリ)の試験的な取り出しを完了した。強い放射線を出すデブリの取り出しは廃炉工程で最難関とされる。事故後初めてとなる今回の回収を、廃炉作業に生かさねばならない。

 東日本大震災で、福島第1原発の1~3号機は原子炉が冷却できなくなり、炉心溶融(メルトダウン)を起こした。デブリは溶け落ちた核燃料と制御棒などの構造物が混ざったもので、高い放射線を出す上、性状もよく分かっていない。1号機に279トン、2号機に237トン、3号機に364トンと、合わせて880トンあると推計されている。

 今回回収されたのは、5ミリ程度の小石状で、重さは約0・7グラムだ。今後、日本原子力研究開発機構の施設で成分や結晶状態、放射線量などを分析し、本格的な取り出しに向けての工法や保管方法などの検討に活用するという。全体量からすればわずかだが、次につながる一歩であることは間違いない。

 しかし、ここに至るまでにも多くの課題があった。当初は21年開始の計画だったが、機材の開発などが難航し3度の延期を繰り返した。ことし8月22日、開始に向けた準備作業の段階でパイプの並び順を間違える初歩的なミスが発覚し中断。再開後の9月17日には採取装置のカメラの映像が遠隔操作室に映らなくなる不具合が発生した。

 パイプの並び順ミスは、下請け企業に任せ東電社員が一度も確認していないことが原因だ。カメラの不具合も高い放射線の影響とされるが、不具合発生は想定できたとの指摘もある。いずれも基本的なミスであり、東電の管理能力に問題はなかったのか。東電は一層の緊張感を持って作業に当たってほしい。

 政府と東電は2051年までに廃炉を完了させる計画だが、解決すべき課題は山積している。東電は20年代後半に段階的に取り出し規模を拡大させ、30年代初頭から3号機での本格的な取り出しを始める青写真を描く。

 しかしデブリは1~3号機で性状や分布状況が異なるとみられ、本格的な取り出しには複数の場所から採取する必要がある。また、取り出したデブリや廃炉に伴い生じる放射性廃棄物をどこで保存し、処分するかも不透明なままだ。膨大な量の取り出しには作業の難航も予想され、廃炉完了時期も危ぶまれる状況だ。政府や東電に加え学識経験者も含めた議論を加速させねばならない。

 原発事故から13年半。廃炉作業がいたずらに長引けば、被災者らの不信感を増大させる。東電と政府には常に真摯(しんし)かつ丁寧な説明が引き続き求められている。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月11日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【社説・11.05】:デブリ取り出し/廃炉の先行きは見えない

2024-11-05 06:00:20 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【社説・11.05】:デブリ取り出し/廃炉の先行きは見えない

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.05】:デブリ取り出し/廃炉の先行きは見えない 

 東京電力は、福島第1原発事故で生じた溶融核燃料(デブリ)を2号機から試験的に取り出す作業を、約40日ぶりに再開した。

 2011年3月の事故発生後、10年以内に取り出しを始める計画だったが、工法変更などで3回延期された。今年8月の準備作業開始後も初歩的ミスで一時中断し、9月10日にようやく着手した。ところが採取装置の先端にあるカメラの映像が見えなくなり、2台を交換した。

 国と東電による廃炉工程では、使用済み核燃料の取り出し開始までを第1期、その後を第2期としており、今回の着手によって最終盤の第3期に移った。しかし「最大の難関」とされるデブリの取り出しは、冒頭でつまずきを重ねた。今後の廃炉作業に不安を抱かざるを得ない。

 取り出し装置はパイプをつなげた伸縮式で、最長約22メートルになる。原子炉格納容器の貫通部から入れて、先端の爪形器具で少量のデブリをつかむまでには至った。

 デブリは冷却できなくなった核燃料が溶け落ち、固まったものだ。1~3号機を合わせると880トンあると推計される。試験的に採取するのは3グラム以下、耳かき一杯分程度で、全量のごく一部に過ぎない。作業全体の道のりはあまりにも遠い。

 東電は段階的に取り出しの規模を拡大し、2号機に続いて3号機、1号機の順に進める計画だ。しかし大規模な採取方法は検討中で、極めて高い放射線を出すデブリの処分先も決まっていない。技術的な問題だけではなく、社会的な合意も含めて廃炉の先行きは見通せない。

 8月に起きたのはパイプの並べ順のミスだった。背景には現場を下請け任せにしてきた管理体制があるとされる。協力企業の作業員らの準備に関し、東電や元請けの三菱重工業が一度も確認していなかった。

 カメラの問題に関し東電は「高い放射線量の影響で帯電し、異常な電流が流れた可能性が高い」とみる。当初、放射線による故障は考えにくいとしていた。今後も想定外のトラブルが起きないとは限らない。

 現時点で東電は事故から30~40年とする廃炉の完了目標を堅持している。作業でデブリを巡る知見が得られれば、目標変更を余儀なくされる不都合なデータであっても、速やかに国民に示す姿勢が求められる。

 作業員の被ばくも懸念される。格納容器外の装置周辺では毎時2~4ミリシーベルトの放射線量が検出されている。放射線業務従事者の年間被ばく線量限度は50ミリシーベルトとはいえ、一般の人の限度(1ミリシーベルト)を15~30分で超える量だ。過酷な現場である。東電は下請け任せにせず、安全を最優先にした進行管理を徹底してもらいたい。

 元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月05日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【社説②】:原発事故対策 避難計画は不要なのか

2024-04-15 07:12:40 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【社説②】:原発事故対策 避難計画は不要なのか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:原発事故対策 避難計画は不要なのか

 原発は、どれほど対策を講じても事故の可能性をゼロにはできない。万が一の際、周辺住民の安全確保を左右するのが避難計画だ。それを、まさか裁判所がこうも軽んじるとは驚きを禁じ得ない。

 住民が関西電力美浜原発3号機と同高浜原発1~4号機の運転差し止めを求めた仮処分申請。このうち美浜3号機と高浜1、2号機は営業運転開始から40年を超えて再稼働した「老朽原発」で、3、4号機も来年40年になるが、福井地裁は3月末、訴えを退けた。
 
 住民側は施設の老朽化に加え、基準地震動(耐震性の目安になる揺れの強さ)が低く見積もられているなど、安全性が確保されていないと主張。県の避難計画も実効性に欠けると訴えてきた。
 
 一層の不安をかきたてたのが能登半島地震だ。北陸電力志賀原発が立地する石川県志賀町で震度7を観測し、原発にさまざまなトラブルが発生した。
 
 現地で多数の建物倒壊や道路寸断が起きたことを受け、住民側は「地震による原発事故が起きた場合、屋内退避も避難もできず、被曝(ひばく)を強いられることになる」とあらためて書面を出して訴えた。
 
 これに対し、地裁は「原子力規制委員会において新規制基準への適合が認められ、その審査基準において不合理な点はない」と断じたが、そもそも規制委は、原子炉の状態が国の規制基準に適合しているかを審査するだけで「安全」を保証するものではない。
 
 しかも福井地裁は「避難が必要になるような事態が起きる危険性は立証されておらず、避難計画の不備については判断するまでもない」と住民の訴えを一蹴した。
 
 しかし「避難が必要になるような事態が起きない安全性が立証されている」という事実がない以上、判断を避ける理由にはなるまい。規制委の「適合」を根拠に、深刻な事故は起きないと決め付けているだけではないか。原告側が上訴したのも当然だ。
 
 国は原発から30キロ圏内の自治体に避難計画の策定を義務付けているが、規制委は避難計画を評価の対象外としており、避難計画に不備があるかを判断するのは、まさに司法の役割であろう。
 
 避難計画は事故の際、住民を放射能被曝から守る「命綱」とも言うべきものだ。それを軽んじるような司法の姿勢には、強い違和感を覚える。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年04月12日  08:23:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【中山知子の取材備忘録・09.24】:小泉進次郎氏が福島の海で語った言葉の原点は新人議員時代「平均寿命通りに生きれば…」とも

2023-10-30 07:30:10 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【中山知子の取材備忘録・09.24】:小泉進次郎氏が福島の海で語った言葉の原点は新人議員時代「平均寿命通りに生きれば…」とも

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【中山知子の取材備忘録・09.24】:小泉進次郎氏が福島の海で語った言葉の原点は新人議員時代「平均寿命通りに生きれば…」とも 

 政府が東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出に踏み切ってから24日、1カ月が経過した。これを受け、中国が日本産海産物の輸入禁止に踏み切り、輸出減少に伴う売り上げの減少や、価格の影響への懸念もくすぶる。そんな中国側の動きを念頭に「非科学的な攻撃みたいなもの」と言及したのは、自民党の小泉進次郎元環境相(42)だ。

南相馬市の北泉海岸近海でとれたヒラメの刺し身を賞味する小泉進次郎元環境相(2023年9月17日撮影)

 処理水海洋放出を受けた風評被害対策の一環で9月に入り、福島県南相馬市の海を2度訪れた。南相馬は日本有数のサーフ・スポットとして知られる。1度目は3日、子どもたちのサーフィン教室にプライベートに近い形で参加して波に乗り、処理水の安全性を示すために地元の海で自らサーフィンをする動画を、自身のインスタグラムなどに投稿した。2度目は17日、党サーフィン議連の幹事長として同僚議員らとサーフィンの国際大会が訪れた海岸を視察。視察後の取材に処理水放出やそれを受けた中国の対応などに対し、より踏み込む形で発信をした。

 日本政府や岸田文雄首相は機会を見つけては、中国側に禁輸の即時撤廃を申し入れているとされる。そんな中で、サーフィンという手段を用いて海に入り、中国側に反論する形を取った進次郎氏に対しては賛否があるが、普段は厳しい声が多いSNSでも評価する声が上がった。1度目の訪問でサーフィンをした際、自身のインスタグラムに「パフォーマンスといわれても構わない」と投稿し、目を向けてもらうことを優先したことをにじませていた。

 2009年の初当選時からしばらく、進次郎氏がその時々の話題やテーマについてぶら下がり取材で語るのが、恒例だった。党要職や大臣に就きその機会は少なくなり、環境相退任後は、自民党神奈川県連会長や国会対策副委員長という裏方の調整役となり、公の場で肉声を聞く機会はさらに減った。久しぶりにスポットライトが当たる形になった今回、福島や震災復興への今の思いを、久しぶりに耳にする機会になった。

 東日本大震災と原発事故が起きた時、進次郎氏は野党自民党の当選したばかりの新人議員だった。2009年の衆院選で自民党は旧民主党に惨敗。政権を失った当時の選挙で初当選したのは進次郎氏と伊東良孝氏、斎藤健氏、橘慶一郎氏の4人しかいない。新人議員の時から震災や原発事故からの復興に携わる、自民党の数少ない議員の1人だ。最初は野党議員として、2期目以降は与党議員として、国会議員生活の大半に「震災からの復興」が重なってきた。

 震災発生時に29歳だった進次郎氏は、自民党青年局長時代に「TEAM11」を立ち上げ、被災地訪問を続けた。当時からの交流、新たに生まれた交流は今も続くと聞く。個人的には、国会議員であろうがなかろうが、それぞれの立場でさまざまな関わり方があると感じているが、進次郎氏は当時から、若い自分だからこそ将来の復興を見届ける責任があるとたびたび口にしてきた。

 国や東京電力はこれまで、原発の廃炉には30~40年かかるとしている。処理水放出についても同様の年月が見込まれているが、予定通りに終わるのかどうか、誰も見通せない。今、政権の中枢を担う総理大臣や担当の大臣も、「完了」を見届けられる立場にある人はほとんどいないだろう。そういう中で、新人議員の時から震災と復興に向き合う時間を長く持てる立場にある進次郎氏にとって、どんな形であっても目を向けることが、自身の責任の1つだと思っているのではないかと感じる。それが今回は、学生時代から親しんできたサーフィンという形になったのではないかとも感じる。

 進次郎氏はかつて「平均寿命(男性は81・05歳=2022年)どおり生きれば、私は原発の廃炉まで見届けることができる立場」と述べ、被災地への取り組みは「ライフワーク」と話していた。16日の視察後の取材にも「処理水の放出はこれから何十年と続く。今はこうやって注目してもらっているけれど、間違いなくこれから注目度は下がる。それでも継続して地域の皆さんの声を聞いて、廃炉と、復興の最後まで取り組み続けることがいちばん大事」と話した。

 「TEAM11」の活動時に掲げられたテーマは「継続は力なり」だった。言葉の持つ責任の重さは、これからもずっと問われ続けていくのだと思う。【中山知子】(ニッカンスポーツ・コム/社会コラム「取材備忘録」)

 

中山知子の取材備忘録

 ■中山知子の取材備忘録

 ◆中山知子(なかやま・ともこ) 日本新党が結成され、自民党政権→非自民の細川連立政権へ最初の政権交代が起きたころから、永田町を中心に取材を始める。1人で各党や政治家を回り「ひとり政治部」とも。現在、日刊スポーツNEWSデジタル編集部デスク。福岡県出身。青学大卒。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・コラム・「中山知子の取材備忘録」】  2023年09月24日  11:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【大谷昭宏のフラッシュアップ・09.25】:「ホタテ養殖の仲間は持ちこたえられるか」みちのく漁場に処理水の陰

2023-10-16 08:01:20 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【大谷昭宏のフラッシュアップ・09.25】:「ホタテ養殖の仲間は持ちこたえられるか」みちのく漁場に処理水の陰

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【大谷昭宏のフラッシュアップ・09.25】:「ホタテ養殖の仲間は持ちこたえられるか」みちのく漁場に処理水の陰 

 東日本大震災の取材でお世話になって以来、毎年秋、妻の実家から届くスダチをお贈りしている宮城県南三陸町の漁師さんからさっそくお礼の電話をいただいた。「今年はもう少しましな大きさのものを送れると思うんだあ」。話はすぐに昨年、折り返し届いたサンマのことに。たしかに去年、高い燃料費、赤字覚悟で遠くまで漁に出て取ってきたというサンマは、失礼ながら悲しいほど小ぶりだった。

 それが今年はウクライナ問題でここ2年中止になっていたロシアが主張するEEZ(排他的経済水域)内の漁が解禁になり、60隻が漁に出ていて大きめのサンマが期待できるのではないかという。だが、話はすぐに処理水の海洋放出問題に。

 「おらとこはカキとワカメだからいいけど、ホタテ養殖の仲間は持ちこたえられるかどうか」という。中国の日本からの水産物全面禁輸が伝わるや値崩れが起き、廃業を考える業者も出ているという。国の漁業補償はあるが、そうしたものより、中国がこれで大儲(もう)けしている乾燥ホタテ加工用の恒久的な施設は造れないものか。だが、そういった声はなかなか届かない。

 深刻な問題はまだある。秋口、三陸沖にやってくる大群を追うカツオの一本釣り。欠かせないのは漁場にまく生きたイワシだ。これがないとカツオの群れは寄ってこない。だが、海面水温はいまも異状な高さで、浜のいけすで泳がせているイワシが次々と死んでしまって、出漁時、確保できないのではないかという。

 サンマにカキ、ワカメ、ホタテにカツオ、そしてイワシ。浜風がいささかいつもと違う、みちのくの秋の漁場の様子を運んできてくれるようだった。

大谷昭宏のフラッシュアップ

 ◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)

 ジャーナリスト。TBS系「ひるおび!」東海テレビ「NEWS ONE」などに出演中。

 ■大谷昭宏のフラッシュアップ

 元読売新聞記者で、87年に退社後、ジャーナリストとして活動する大谷昭宏氏は、鋭くも柔らかみ、温かみのある切り口、目線で取材を重ねている。日刊スポーツ紙面には、00年10月6日から「NIKKAN熱血サイト」メンバーとして初登場。02年11月6日~03年9月24日まで「大谷昭宏ニッポン社会学」としてコラムを執筆。現在、連載中の本コラムは03年10月7日にスタート。悲惨な事件から、体制への憤りも率直につづり、読者の心をとらえ続けている。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・連載・「大谷昭宏のフラッシュアップ」】  2023年09月25日  08:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【深層探訪】:処理水への理解に濃淡 中国のIAEA批判は裏目―放出1カ月で各国反応

2023-10-08 00:06:30 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【深層探訪】:処理水への理解に濃淡 中国のIAEA批判は裏目―放出1カ月で各国反応

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【深層探訪】:処理水への理解に濃淡 中国のIAEA批判は裏目―放出1カ月で各国反応

 ウィーンで開かれている国際原子力機関(IAEA、加盟177カ国)総会は27日、各国代表による一般討論演説が終了した。東京電力福島第1原発からのトリチウムを含む処理水の海洋放出が始まって1カ月余り。3日間の演説で登壇した133カ国のうち、明確に反対を表明したのは中国だけだった。ただ、演説で示された理解や容認は中国のIAEA批判に対する反発の側面もあり、各国の姿勢には濃淡がある。

国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長(右)と面会する高市早苗科学技術担当相=25日、ウィーン

国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長(右)と面会する高市早苗科学技術担当相=25日、ウィーン

 ■政府、ロシアの禁輸同調警戒 日本産水産物、風評拡大を懸念

 ◇権威守る

 演説で処理水放出への反応を示した国の大半は、IAEAによる独立した立場からの監視や日本の取り組みを支持した。ドイツやイタリアなど欧州勢が目立ち、「日本の協力姿勢と透明性を評価する」(ブルガリア)との声もあった。

国際原子力機関(IAEA)総会で演説するニュージーランドの代表=27日、ウィーン

国際原子力機関(IAEA)総会で演説するニュージーランドの代表=27日、ウィーン

 

 「IAEAの権威を守ることは、われわれの利益になる」。欧州のある外交官は7分間の演説で、国益に直接結び付かないようにも見える処理水放出への支持を打ち出した理由について、こう語った。

 中国はIAEAの関与について「独立性に欠ける」「(データが)真実か分からない」などと主張。これが裏目に出て「IAEAの権威に対する挑戦」(日本政府関係者)と受け止められた。核不拡散ににらみを利かせるIAEAの威光が弱まれば、核施設の査察や監視業務に悪影響を及ぼしかねないという危機感が、欧州の放出計画支持の動きにつながった。

 ◇同調広がらず

 一方、中国への同調は広がりを欠いた。シリアは「非常に憂慮すべきこと」と懸念を示したものの反対はせず、これまで中国と歩調を合わせてきたベネズエラやロシアは沈黙。国連総会で批判を展開したソロモン諸島は、IAEA非加盟のため発言機会がなかった。

 同じ太平洋諸国では、ニュージーランドとオーストラリアが明確な支持を表明。ただ、ニュージーランドは、太平洋地域が抱える核実験の傷に触れ「重大な関心事だ」とも訴えた。容認の構えを見せた韓国は「汚染水」という表現も用い、IAEAに監視を緩めないよう注文を付けた。

 ◇「最後の一滴まで」

 IAEAを抱き込む形で理解獲得を進めてきた放出計画は、ひとまず軌道に乗ったと言える。各国代表によるおおむね前向きな言及に、日本の外交官の一人は「勇気づけられた」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 放出は数十年に及ぶとされる。IAEAのグロッシ事務局長は「最後の一滴まで」監視を続けると強調。日本政府代表として登壇した高市早苗科学技術担当相も「最後の一滴まで」安全を確保すると口をそろえた。

 日本政府とIAEAは原発の推進で利害が一致しているだけに、そうした両者の近さへの不信感は国内外でくすぶる。中国が発動した日本産水産物の輸入禁止措置には、ロシアも追随する動きがある。国際社会に広がりつつある日本の放出計画への支持が確かなものになるかは、今後の取り組み次第だ。 

 ◇IAEA総会での処理水放出に関する主な発言(発言順)

 【中国】原発事故による核汚染水の放出は前例がない。放射性物質の蓄積がもたらす海洋への影響には大きな不確実性があり、日本から信頼できる説明はない。
 【韓国】汚染水放出計画の安全性を慎重に審査したグロッシ事務局長の指導力に感謝。効果的な監視が続くことを切に期待。
 【ブラジル】(ウクライナ南部)ザポロジエ原発での支援構築や(東京電力)福島第1原発の現場常駐など、非常に困難な状況でのグロッシ事務局長の指導力に敬意。
 【ドイツ】IAEAの専門性と中立性を全面的に信頼。
 【イタリア】IAEAの包括報告書と監視を歓迎。
 【シリア】非常に憂慮すべきだ。解決に向け、地域の全ての国が協力して取り組むよう求める。
 【マレーシア】IAEAの科学的で技術的な判定を大いに評価。
 【ニュージーランド】核(実験)の遺物がトラウマのように残っており、重要な関心事。対話と情報共有への継続的な取り組みを歓迎。
 【オーストラリア】IAEAの独立した科学に基づく助言を全面的に信頼。日本の透明性や国際的な関与を歓迎。
 【エクアドル】安全性を確保するという日本の姿勢を認識。水産業と敏感な生態系を抱えており、更新される情報を注視。(ウィーン時事)

 元稿:時事通信社 JIJI.com 社説・解説・論説・コラム・連載 【深層探訪】  2023年09月28日  17:14:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【大谷昭宏のフラッシュアップ・08.28】:時間かかっても原発ゼロにするしかない

2023-10-02 08:01:00 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【大谷昭宏のフラッシュアップ・08.28】:時間かかっても原発ゼロにするしかない

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【大谷昭宏のフラッシュアップ・08.28】:時間かかっても原発ゼロにするしかない 

 「決して賛成ではないけれど、反対はしない」。私はテレビなどでこのようにコメントしている。福島第1原発処理水の海洋放出が、ついに24日から始まった。

 「安全性への理解は深まった」としながらも、「科学的安全と社会的安心は違う」とする全漁連会長の言葉に、震災から10年、このコラムに福島の道の駅で見かけたミニトマトについて書いたことを思い出した。

 他県産と同じ値をつけたまっ赤なトマトに、町の職員は「やっとここまできた」と顔をほころばせた。大気や海洋、土壌汚染、子どもの甲状腺…。それらが報じられるたびに農産物は買いたたかれ、嫌というほど思い知らされた風評被害。

 そしてこのたびも、そんな風評被害で福島を苦しめるなと政党や市民団体の人々が東電や福島県庁前に立つ。だが手にしたボードには「処理水」ではなく、決まって「汚染水」と大書きされている。それを目ざとく報じる中国など一部の国々。福島の生産者や、あの日、道の駅でミニトマトを前にした町の職員はこの光景をどんな思いで見ていることか。

 問題の本質は、そこにないはずだ。2度とこんな事態を引き起こさないことではないのか。そのためには脱原発。新規建設はもちろん、再稼働もとんでもない。時間がかかろうとも、原発ゼロの国にするしかない。

 この時期、多くの人々の胸に去来する、詠み人知らずの句がある。

 〈八月は六日 九日 十五日〉

 そこにそこに「過ちは 繰返しませぬから」の思いを込めて、「二十四日」をつけ加えたらどうだろう。海洋放出が続く向こう30年間、せめてこの日を忘れずにいたい。

大谷昭宏のフラッシュアップ

 ◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)

 ジャーナリスト。TBS系「ひるおび!」東海テレビ「NEWS ONE」などに出演中。

 ■大谷昭宏のフラッシュアップ

 元読売新聞記者で、87年に退社後、ジャーナリストとして活動する大谷昭宏氏は、鋭くも柔らかみ、温かみのある切り口、目線で取材を重ねている。日刊スポーツ紙面には、00年10月6日から「NIKKAN熱血サイト」メンバーとして初登場。02年11月6日~03年9月24日まで「大谷昭宏ニッポン社会学」としてコラムを執筆。現在、連載中の本コラムは03年10月7日にスタート。悲惨な事件から、体制への憤りも率直につづり、読者の心をとらえ続けている。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・連載・「大谷昭宏のフラッシュアップ」】  2023年08月28日  08:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【中山知子の取材備忘録・08.27】:岸田首相あるある「スピード感のなさ」処理水放出めぐる中国側対応に「外交の岸田」をいつ発揮?

2023-10-02 00:10:00 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【中山知子の取材備忘録・08.27】:岸田首相あるある「スピード感のなさ」処理水放出めぐる中国側対応に「外交の岸田」をいつ発揮?

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【中山知子の取材備忘録・08.27】:岸田首相あるある「スピード感のなさ」処理水放出めぐる中国側対応に「外交の岸田」をいつ発揮? 

 「先送りできない困難な課題に、1つ1つ答えを出していくことに尽きる」。岸田文雄首相が国会答弁や記者会見で、何度も繰り返している言葉だ。この言葉は、だから「衆院解散しない」など、政局的な話題を否定するため使われることも多かったが、答えを出したところで政局どころではなくなってしまったのが、今回、政府が踏み切った東京電力福島第1原発の処理水海洋放出ではないだろうか。中国側が、日本産水産物の輸入全面停止の措置に踏み込んだことで、さまざまなところで大きな影響が出始めている。

岸田文雄首相(2023年8月2日撮影)
岸田文雄首相(2023年8月2日撮影)

 政府は処理水については、国際原子力機関(IAEA)による安全性の科学的根拠が示されていることを強調している。ただ、岸田首相が中国側の「いいがかり」(政府関係者)のような対応に毅然(きぜん)と反論した姿は、見えない。首相は中国側の方針が明らかになった8月24日、中国側に、措置の「即時撤廃」を求める申し入れを行ったとし「海洋放出の影響について科学的根拠に基づき、専門家同士がしっかり議論を行っていくよう中国政府に強く働き掛けていきたい」と述べた。IAEAが示した科学的根拠に触れながら、風評被害対策にも動く考えを示した。

 ただ、この時の言葉は記者会見ではなくぶら下がり取材の対応で、時間も10分弱。コメントを述べたという感じだった。しかも、これが「言いっぱなし」になっているように感じる。国としては手順どおりに進めてきたことで、他国にとやかく言われる筋合いはないという立場なのだろう。しかし、最も影響を受けるのは漁業者や水産事業者という現場だ。言葉だけではなく行動ですぐに向き合わなければならないと感じる。

 ただ、中国側の対応に伴う事態の深刻さがどんどん明らかになってきた翌25日も、首相が積極的に発信した形跡は見えない。この日は、沖縄市で開幕したバスケットボール男子W杯の日本-ドイツ戦観戦などで沖縄を訪れ、試合前のセレモニーにも出席した。日本代表の初陣ですでに決められた日程でもあり、それ自体は批判されることではないかもしれない。ただ、結果的にタイミングは悪かったのではないかと感じる。

 取材した永田町関係者からは「応援する相手が違うのではないか」との声も聞いた。沖縄入りが悪いのではなく、要は、中国側の対応にスピード感を持って対応していない、ということだった。岸田首相に対しては今夏、全国で相次いだ豪雨災害被災地の訪問についても「遅い」との指摘があった。国の少子化対策やマイナ保険証の問題などでも同様だ。スピード感のなさは、もはや岸田首相「あるある」なのだが、今回の問題は、これまでとは少し異なる。岸田首相の「得意分野」で起きている問題だからだ。

 岸田首相は外相経験が長く、第2次安倍政権で1682日を務めた。連続、専任日数では最長だ。今年5月の広島サミットではホスト国として議長を務めたが、立場が人をつくるということなのか、各国首脳とのコミュニケーションなども慣れた様子で、首相自身も「外交の岸田」を自負してきたといわれる。

 一方で、外交の舞台というのは本来、事務方同士の水面下の交渉がベースとなっており、表舞台で展開される「首脳外交」というのは、そんな地道な地ならし上に成り立つと、かつて外交に当たった関係者に聞いたことがある。しかも、水面下の交渉すべてがうまくいくとは限らない。今回の中国側の強硬な態度も、「何を言ってもまったく聞く耳を持たない」(関係者)状態が解消されなかったことが一因とされる、野村哲郎農相が25日の会見で「(全面停止は)大変驚いた。全く想定していなかった」とぶっちゃけ発言したことにも疑問や批判の声が出ているが、ここにも政府内の混乱がにじむ。

 先日の共同通信社の世論調査によると、処理水放出前の岸田首相の説明が不十分だという指摘は、81・9%にのぼったという。首相は、放出方針を表明した22日の関係閣僚会議で「数十年の長期にわたろうとも、処理水の処分が完了するまで政府として責任を持って取り組む」と述べたが、岸田政権以降、いくつもの政権に引き継がれるだろう責任の「決意表明」としては、少し弱い内容だと感じた。加えて、放出後の説明も同様だ。そんな中で公明党の山口那津男代表の中国訪問も延期されるなど、外交にも影響が出てきた。

 新たな「チャイナリスク」を背負う形になった岸田首相。長年培った「外交の岸田」の判断力、発信力を使うのはまさに今でしょ!というタイミングに、岸田首相は今、立たされているのではないかと感じている。【中山知子】

中山知子の取材備忘録

 ■中山知子の取材備忘録

 ◆中山知子(なかやま・ともこ) 日本新党が結成され、自民党政権→非自民の細川連立政権へ最初の政権交代が起きたころから、永田町を中心に取材を始める。1人で各党や政治家を回り「ひとり政治部」とも。現在、日刊スポーツNEWSデジタル編集部デスク。福岡県出身。青学大卒。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・コラム・「中山知子の取材備忘録」】  2023年08月27日  11:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【政界地獄耳・09.09】:水産物輸入禁止の表現「一時的」欠落に見る日中外交ゲームの失敗

2023-09-19 07:40:00 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【政界地獄耳・09.09】:水産物輸入禁止の表現「一時的」欠落に見る日中外交ゲームの失敗

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政界地獄耳・09.09】:水産物輸入禁止の表現「一時的」欠落に見る日中外交ゲームの失敗 

 ★インドネシア・ジャカルタの6日昼、ASEANプラス3(日中韓)首脳会議の直前、控室に中国の李強首相が入ると同時に、待ち構えていた首相・岸田文雄は歩み寄り、2人は通訳を交えいささか長い約15分間の立ち話外交を繰り広げた。「建設的かつ安定的な日中関係の構築は重要だ」が首相の最初の言葉だそうだが、7日の会見で官房長官・松野博一は「立ち話を行ったことは、建設的かつ安定的な日中関係の構築に向け極めて重要であったと考えている」ともろ手を挙げ評価した。

 ★ただ、それが中国サイドにどう伝わったかは計り知れない。首相も「待合の場で出会い、あいさつをするなかで会話が始まった」と自然な形での会話を演出するが、いささか情緒的な各紙の両首脳の立ち話原稿ではなかなかその実態はつかめない。一方、外務省は官邸ホームページに「李強・中国国務院総理との立ち話についての会見」と仰々しく立ち話の後の首相の説明を載せているが「中国・李強首相と立ち話を行いました。その中でのやり取りについて質問がありましたが、外交のやり取りでありますので、具体的に、先方の反応等について、私から申し上げることは控えなければならないと思っています」とあっさりしたものだ。

 ★この問題をもう一度おさらいしておこう。8月24日、処理水の海洋放出開始。中国は当初、10都県の食品輸入禁止を訴えていたが、実際には同日、中国税関総署は「日本産の水産物輸入を同日から全面的に停止する」と発表した。政界関係者が耳打ちする。政治キャンペーンや経済制裁なのはわかっているが、日本政府はこの発表を意図的に改ざんした。中国税関は「一時的に」という一言をつけて発表したが、なぜかそこが抜け落ちていて、反中感情をあおった節がある。別の政界関係者は「自公の親中派も寄せ付けないので、年内は軟化の兆しはない」。両国にとって政治・外交ゲームの失敗とみるべきだろう。(K)※敬称略

 ◆政界地獄耳

 政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・政界地獄耳】  2023年09月09日  07:15:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【政界地獄耳・09.01】:「処理水」政治キャンペーンで既に負けている日本

2023-09-08 07:40:00 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【政界地獄耳・09.01】:「処理水」政治キャンペーンで既に負けている日本

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政界地獄耳・09.01】:「処理水」政治キャンペーンで既に負けている日本 

 ★8月30日、中国外務省次官補・報道官・華春瑩(ホア・チュンイン)はX(旧ツイッター)に英語で4連続投稿をし、「なぜ日本はトリチウムの希釈ばかりを強調するのか。福島の放射能汚染水には60種類以上の放射性核種が含まれているが、残りの放射性核種の処理はどうなるのか」「もしその水が本当に無害であるなら、なぜ日本は700億円を費やして宣伝キャンペーンを始めようとしているのか。なぜ日本は関係者による福島の放射能汚染水と海水のサンプル収集を拒んだのか」「この水が無害ではないと判明した場合、近隣諸国や他の多くの国が海洋放出しないよう勧告する中で、日本は海洋放出を続けられるのか。これが誠実で責任ある国の振る舞いなのか」「中国と日本には『覆水盆に返らず』ということわざがある。『こぼれた水は二度と元の盆に戻らない』という意味だ。受けたダメージは元に戻せない。日本は手遅れになる前にやめるべきだ」と畳みかけた。

 ★21年4月、政府は処理水の海洋放出を決めたが、科学的根拠を国際原子力機関(IAEA)に求めたのは7月になってから。それが「科学的」と言われる根拠だ。だが中国のこの政治的キャンペーンの背景には米国のいうことは無条件に受け入れるのに中国の声は聞き入れないというメッセージがある。加えて福島第1原発事故以降、今日までの東京電力と日本政府の原発処理は日本国民と世界に誠実だったかを問うている。

 ★福島の事故以降、欧州は原発推進機運がうせ、世界最大の原子力産業会社「アレバ」も今では「オラノ」に変わった。その縮小された部分を中国がこの10年担ってきた。米・ウェスティングハウスの原発をベースに中国が独自開発した第3世代原発に中国は自信を持つ。中国製第3世代原発は海外輸出も進み、今では中国は世界第2位の原発大国だ。その国に向かって「科学」を説いた日本政府の国内外への説明戦略と外交戦略が正しいと思うだろうか。既に日本は政治キャンペーンで敗北しているのだ。(K)※敬称略

 ◆政界地獄耳

 政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・政界地獄耳】  2023年09月01日  07:44:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【政界地獄耳・08.29】:福島処理水放出じわじわ国際問題化 外交の岸田はどこに

2023-09-05 07:40:00 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【政界地獄耳・08.29】:福島処理水放出じわじわ国際問題化 外交の岸田はどこに

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政界地獄耳・08.29】:福島処理水放出じわじわ国際問題化 外交の岸田はどこに 

 ★処理水放出がじわじわと国際問題として拡大している。北京訪問直前に中国サイドから「当面の日中関係の状況に鑑み、適切なタイミングではない」と延期を告げられた公明党代表・山口那津男について28日の会見で官房長官・松野博一は「政府として山口代表の訪中にも期待していた。今後、再調整されると承知しており、後押しをしていきたい」と残念がった。今後の日中首脳会談の可能性が低い中、山口訪中は政府の期待も大きかったはずだが、山口はこれで政府の一員とみなされ、長年の公明党と中国の関係も変化したとみるべきだろう。

関係閣僚会議で発言する岸田文雄首相(中央) =22日、官邸(矢島康弘撮影)

 ★また、松野は処理水の放出を受けた中国側の日本産水産物の輸入停止措置をはじめ、放出に関しての嫌がらせや反発について「極めて遺憾であり憂慮している。中国側には国民に冷静な行動を呼びかける等、適切な対応を行うとともに、処理水について正確な情報を発信することを強く求めてきており、引き続き強く求めていく」とした。政府の理屈は「科学的根拠に基づかない発信で人々の不安をいたずらに高めるべきではない」というものだが、政府はこの嫌がらせに過剰に反応しており、28日、外務事務次官・岡野正敬は中国の駐日大使・呉江浩を外務省に呼び、「極めて遺憾だ。憂慮している」とした。北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞に至っては「核テロ」などと非難しているが、この政治的キャンペーンに落としどころはあるのか。

 ★在米映画評論家・町山智浩は「『処理水は科学的に安全なのに日本の水産物を買わない中国が悪い』『中国も原発の処理水を排水しているのに』といくら言っても、買う買わないは客の自由だから。『あんたの店のBGMが嫌いだから買わない』と理不尽なことを言われたとして、『なんて客だ』と客を責めたら、かえって店には帰ってこないよ」。とX(旧ツイッター)に書き込んだ。外交の岸田はどこにいるのか。(K)※敬称略

 ◆政界地獄耳

 政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・政界地獄耳】  2023年08月29日  07:02:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【日本維新の会】:「汚染水」と発信する野党打倒を宣言

2023-08-30 15:55:30 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【日本維新の会】:「汚染水」と発信する野党打倒を宣言

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【日本維新の会】:「汚染水」と発信する野党打倒を宣言 

 東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出を巡り、日本維新の会は30日、政府与党と足並みをそろえて風評被害の解消に努めていく方針を確認した。また、処理水を「汚染水」と発信する立憲民主党の一部や共産党への対決姿勢も鮮明にした。

日本維新の会の馬場伸幸代表(矢島康弘撮影)

 馬場伸幸代表は同日の党会合で、科学的に問題がないと指摘した上で、「われわれも堂々と処理水放出については応援をしていく」と述べた。また、独自の風評被害対策として、東北の食材を使ったイベントの検討を指示したと明らかにした。

 立民の泉健太代表は「処理水」が党の公式見解だと主張しているが、一部の議員は共産党と同様に「汚染水」と発信している。

 維新の藤田文武幹事長は党会合後の記者会見で、「民間の方が(汚染水と)言う分には自由だが、責任ある政治にかかわる、特に議員については非科学的な、フェアじゃない態度で不安をあおるようなことがあってはならない」と強調した。「風評被害につながるような発信をかなりやっている。こういうところが立民の限界というか問題だ」とも断じた。

 藤田氏はさらに、「自民党と維新は正面から対立する与党と野党だが、科学に基づいて粛々と国民の安心を担保していくべき課題については、政府をサポートすべきことがあってもいい」と指摘。立民や共産を念頭に「政治的に足を引っ張ってやろうみたいな思惑の中でやっているのだとしたら、こんな情けないことはない。次の衆院選では無責任な勢力に権力を持たせない。維新が新しい政治構図を作るために頑張りたい」とも語った。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【政界地獄耳・08.23】:処理水「責任を持つ」と約束したけれど…その時にはもう責任者などいない

2023-08-30 07:42:10 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【政界地獄耳・08.23】:処理水「責任を持つ」と約束したけれど…その時にはもう責任者などいない

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政界地獄耳・08.23】:処理水「責任を持つ」と約束したけれど…その時にはもう責任者などいない 

 ★国と東京電力は14年には原子炉建屋に流れ込む前の地下水を、15年には原子炉建屋周辺からくみ上げて浄化した地下水を県漁連の了解を得て海に放出した。この時漁連は「漁業者、国民の理解を得られない処理水の海洋放出は絶対に行わないこと」を要望。東京電力は「関係者理解なしにはいかなる処分も行わない」と約束した。この夏前から自らを将来の首相候補と名乗る経産相・西村康稔が頻繁に福島の各漁連を回るが、補償金をちらつかせる説得になった。だが実際はここでの漁業をあきらめるか否かの選択を迫られ、未来を失う話だったはずだ。6月30日、相馬市の相馬双葉漁協でも同漁協組合長・今野智光は「安全安心とでは全然違う」とはねつけた。

福島第一原子力発電所事故
左から4号機→3号機→2号機→1号機
(2011年3月16日撮影)

 ★首相は21日、日本の漁業者団体・全漁連(全国漁業協同組合連合会)会長・坂本雅信を官邸に呼びつけ会談。「漁業者の皆様が安心してなりわいを継続できるように、必要な対策を取り続けることを、たとえ今後、数十年の長期にわたろうとも、全責任を持って対応することをお約束いたします」と言うも、その時にはもういない首相や大臣、担当する官僚に“責任者”はいない。約束など空手形だということは福島の人たちだけでなく、国民は知っている。坂本は「漁業者・国民の理解を得られない、ALPS処理水の海洋放出に反対であるということは、いささかも変わりはありません。科学的な安全と社会的な安心は異なるものであって、科学的に安全だからといって風評被害がなくなるわけではない」と毅然と応じた。西村の“無能さ”はとがめられず、見切り発車の放水閣議決定となった。

 ★首相は、処理水を保管するタンクが林立し、廃炉を着実に進めるために必要なスペースがなくなっているとして「廃炉の前提となる処理水の処分は避けて通ることはできない」と言うが、彼らの生活の糧と未来が奪われる話だ。冒頭のように県漁連が言質を取り、国と東電に先手を打つもほごにされた。坂本は会談後、この約束について「破られてはいないが果たされてもいない」とした。やり口として、後味悪い結果残したツケは大きい。(K)※敬称略

 ◆政界地獄耳

 政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・政界地獄耳】  2023年08月23日  07:52:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする