路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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《社説①・02.01》:続く物価高と春闘 中小の賃上げが不可欠だ

2025-02-03 02:03:50 | 【経済対策・物価対策、原油など資源価格の高騰・幅広い品目の値上げ、消費者物価】

《社説①・02.01》:続く物価高と春闘 中小の賃上げが不可欠だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・02.01》:続く物価高と春闘 中小の賃上げが不可欠だ 

 経営側と労働組合の代表が賃上げを話し合う「経団連労使フォーラム」が開かれ、2025年春闘が本格スタートした。

 物価高を克服できるような裾野の広い賃上げを実現できるか。景気の持続的な回復に向けた正念場となる。

 企業業績の回復や人手不足を背景に賃上げ機運は高まっており、24年春闘では大企業の賃上げ率が5・58%と、33年ぶりの高水準を記録した。ただ、物価上昇には、なお追いついていない。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/02/01/20250201ddm005070176000p/9.webp?1" type="image/webp" />今春闘の賃上げ交渉の本格スタートとなる「経団連労使フォーラム」であいさつする経団連の十倉雅和会長=東京都千代田区で2025年1月31日午前9時32分、塩田彩撮影</picture>
今春闘の賃上げ交渉の本格スタートとなる「経団連労使フォーラム」であいさつする経団連の十倉雅和会長=東京都千代田区で2025年1月31日午前9時32分、塩田彩撮影

 連合は、今春闘の賃上げ目標について、全体で5%以上、中小企業は6%以上を掲げている。中小の目標を高く設定したのは、大企業との格差是正を図るためだ。昨年の賃上げ率は4%台半ばにとどまり、働き手の待遇改善の遅れが鮮明になった。

今春闘の賃上げ交渉の本格スタートとなる「経団連労使フォーラム」であいさつする連合の芳野友子会長=東京都千代田区で2025年1月31日午後2時29分、塩田彩撮影

 芳野友子連合会長は「中小企業、地方経済の隅々まで(高水準の)賃上げが波及しなければならない」と訴えている。

 雇用の7割を占める中小の大幅な賃上げなしには、個人消費は盛り上がらず、日本経済の活性化も望めない。

 鍵を握るのは適正な価格転嫁だ。中小企業庁が全国約30万社を対象に実施した調査によると、原材料費や人件費などコスト全体の増加分を納入価格に転嫁できた割合は50%弱にとどまる。

 大企業経営者の多くは「中小の目標は高すぎる」と指摘しているが、人ごとでは済まされない。下請けの中小が賃上げ原資を確保できるよう、人件費も含めた価格転嫁に応じる責任がある。政府は大企業に対する監視の目を強めなければならない。

 中小が高い賃上げを実現するには、生産性の向上も欠かせない。デジタル技術の導入を後押しするなどの施策も重要だ。

 業績が堅調な大企業の賃上げ率は今年も高水準が見込まれる。人材確保の思惑もあり、サントリーホールディングスが月収ベースで7%程度の賃上げ方針を打ち出すなど、積極的な姿勢が目立つ。

 大企業などの利益の蓄積である内部留保は600兆円以上にのぼる。今年はその余力を下請けの中小にも振り向け、サプライチェーン(供給網)全体の賃金底上げにつなげるべきだ。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年02月01日  02:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【金口木舌・01.12】:物価高の余波

2025-01-14 04:00:30 | 【経済対策・物価対策、原油など資源価格の高騰・幅広い品目の値上げ、消費者物価】

【金口木舌・01.12】:物価高の余波

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌・01.12】:物価高の余波 

 新年早々、政治や経済のトップから賃上げを重視する発言が相次いでいる。賃上げは経済の先行きを左右するだけに、昨年以上に関心事のよう。それだけモノやサービスの値段が上がっているということだ

 ▼物価高の影響はこんなところまで。沖縄観光コンベンションビューローによると、コロナ禍を脱し、ようやく回復していた沖縄への修学旅行が2025年度は減少する見込みという。元々移動費が高かったのに加え、ホテル代や活動費の上昇が響いたとみられる

 ▼県外の子どもたちが沖縄を学ぶ機会を失うのは残念だ。日本修学旅行協会の23年度調査によると、旅行先で重点を置く活動の中で「平和学習」は前年度の3位から2位に上がった。紛争が相次ぐ世界情勢を受けてのことだろう

 ▼今年は「戦後80年」でもある。沖縄戦の証言を体験者から聞くことは難しくなってきた。子どもたちの関心にどう応えるか。深く考えるきっかけにしたい

 ▼政財界もいまや戦争を体験した世代はどれだけ残っているだろう。戦争を過去のものとせず、次世代への継承が求められている。気掛かりなのは景気ばかりではない。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】  2025年01月12日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・01.06】:暮らしと経済 賃金と消費の好循環なるか

2025-01-08 16:05:30 | 【経済対策・物価対策、原油など資源価格の高騰・幅広い品目の値上げ、消費者物価】

【社説①・01.06:暮らしと経済 賃金と消費の好循環なるか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.06】:暮らしと経済 賃金と消費の好循環なるか

 <展望2025>  

 年賀の気分も冷めかねない。暮らしを直撃する物価高の波が続く。

 年初からパン製品の一斉値上げをはじめ、缶ビールやチューハイの酒類、冷凍食品、もち製品など4月までの値上げ品目数は6100品を超える。通年で昨年を上回る見通しという。

 原材料高に加え、物流費や人件費の増加分の上乗せが、押し上げ要因となっている。政府は景気判断で、「緩やかに回復している」との見方を続けるが、どれほどの人が実感できているだろう。

 大きな鍵を握るのが、物価上昇を賄える賃上げを行き渡らせられるかだ。昨春闘の大企業中心の高い賃上げ水準で、実質賃金は一時プラス転換したが、夏以降はマイナスが続く。

 このため連合は今春闘の賃上げ目標方針で、24年に続き「5%以上」とし、格差縮小に向け中小企業の労働組合は「6%以上」と引き上げた。

 円安で業績好調な輸出大企業に対し、原材料高から賃上げ体力の乏しい中小企業との差は大きい。コスト上昇分の価格転嫁が確実に進むよう、実効性ある下請法改正と監督を進めたい。

 石破茂首相は「賃金が上昇し、消費と投資が拡大する成長型経済」を目標とする。最低賃金を20年代に全国平均1500円に引き上げることを掲げるが、思い切った後押しが欠かせない。

 一方、各分野では人手不足が深刻さを増す。

 「働き方改革」による昨春の時間外労働の規制強化では、運送業界の運転手不足が顕著化した。バス路線は廃止や縮小など、「地域の足」が揺らいでいる。共同輸送や省力化、効率化など対策に手を尽くしたい。

 年金制度改革では、給付水準の底上げなど懸案を先送りしている。団塊の世代が後期高齢者となる「2025年問題」もあり、社会保障費が膨らむ中、持続可能な制度となるのか。現役世代の将来不安は、消費控えにもつながっている。国民的な議論を政治が主導してほしい。

 昨年は、日銀のマイナス金利解除で「金利ある世界」が戻り、追加利上げも予想される。家計にとっては、住宅ローンの金利上昇が懸念される。

 豊かさの目安となる23年の名目国内総生産(GDP)で、日本は韓国などに抜かれ、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中、22位と過去最低だった。「成長」を口実とした場当たりな経済対策の結果として、政府は重く受け止めるべきだろう。

 米大統領に返り咲くトランプ氏は、「米国第一主義」を掲げ、同盟国を含め関税引き上げを公言する。1期目と同じく米中摩擦の激化が懸念される。経済情勢に不透明感が漂う中、日本への影響を最小限とする重層的な戦略が問われる。

 元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月06日  16:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【天風録・01.06】:仕事始め

2025-01-06 07:00:50 | 【経済対策・物価対策、原油など資源価格の高騰・幅広い品目の値上げ、消費者物価】

【天風録・01.06】:仕事始め

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録・01.06】:仕事始め

 身も心も少し重い。のそのそと今朝、布団を出た勤め人は多いのではないか。暦に従えばきのうまで9連休。5年ぶりの長さだった。寝正月でなまったわが心身も、仕事始めにあらがっている

 ▲物価高の折、豪勢に正月気分を味わえた人は一握りだろう。昨年末の調査会社のアンケートでは、おせちなどの食費を削る予定の人が5割超。3割がお年玉を減らすと答えた。初詣のさい銭はどうだったか。古い習わしが懐事情で細るのはさみしい

 ▲働く人の「手取り」が伸び悩む。増えた給料は物価高にかき消され、税の重さが身にしみる。〈はたらけど/はたらけど猶(なお)わが生活(くらし)楽にならざり/ぢっと手を見る〉。石川啄木の歌にちなみ、「ぢっと手を見る」という嘆きがSNSをにぎわす

 ▲下を見てばかりもいられない。昔の歌舞伎役者は仕事始めを16日に定めていたと聞く。元日から指を折って数えた時、6日目で初めて小指が立つ。「一本立ち」につながる縁起を担いだ。まっすぐな願いが伝わる

 ▲働く意味を見つめ直す。それも長い休みの効用だろう。世知辛いご時世でも、自らの成長や誰かの笑顔を思い描けば力も湧く。新年、身も心も奮い立たせて良いお仕事を。 

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】  2025年01月06日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【小社会・12.25】:めりはり消費

2024-12-27 05:05:25 | 【経済対策・物価対策、原油など資源価格の高騰・幅広い品目の値上げ、消費者物価】

【小社会・12.25】:めりはり消費

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【小社会・12.25】:めりはり消費

  晩のスーパーは一年で最も華やかかもしれない。いつもより豪華な肉や魚介、総菜などが並ぶ。一昨日の夜に立ち寄った店もそうだった。

 最初は浮き浮きしながら店内を回ったが、値段を見て現実に引き戻された。先日もガソリンが値上がりしたばかりだ。止まらない物価上昇に収入増が追い付かなければ、買い物はやはり慎重になる。

 総務省が発表する家計調査報告にも消費者心理がよく表れている。2人以上の世帯の10月の実質消費支出は1年前の同じ月より1・3%減少。多くの世帯が家計をかなりやりくりしているのが分かる。

 内訳を見ると食料が0・8%減で、中でも肉類は4・6%下がった。照明やカーテンを含む室内装備・装飾品と教育娯楽の月謝類もそれぞれ40・9%と13・8%減少した。洋服の18・4%減は気温が高く、秋物を買わなかったのも大きいだろう。

 ニッセイ基礎研究所の上席研究員、久我尚子さんは「割高な商品については、その付加価値を厳密に判断する傾向が強まっている」のではと見る(国民生活センター発行「国民生活 №148」)。よりめりはりを利かせた消費になりつつあるようだ。

 皆さんはことし何の出費を削りましたか。「小遣い」との声も聞こえてきそうだが、家計調査報告では、なんと6・4%の増。いろいろな解釈ができる。が、きょうのところは小遣いも質が高まっているとしておきたい。クリスマスなので。

 元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【小社会】  2024年12月25日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《余録・12.27》:「飛べるかどうかを疑った瞬間に…

2024-12-27 02:03:30 | 【経済対策・物価対策、原油など資源価格の高騰・幅広い品目の値上げ、消費者物価】

《余録・12.27》:「飛べるかどうかを疑った瞬間に…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《余録・12.27》:「飛べるかどうかを疑った瞬間に…

 「飛べるかどうかを疑った瞬間に永遠に飛べなくなってしまう」。9年前の講演でピーターパンの名文句を引用したのは黒田東彦前日銀総裁。「大切なことは前向きな姿勢と確信」と異次元の金融緩和への疑念を払(ふっ)拭(しょく)しようとした

金融政策決定会合後に記者会見する日銀の植田和男総裁=東京都中央区で2024年12月19日、玉城達郎撮影

 ▲だが空を飛びネバーランドに行けるのは子どもだけ。著者の英劇作家、J・M・バリーは子どもへの影響を心配して戯曲に「妖精の粉を吹きかけてもらわなければ誰も飛ぶことはできません」と書き足した。引用自体に無理があった感がある

 ▲「トランプ2・0が日本のピーターパン的行為を終わらせる」。米経済誌フォーブス(電子版)の見出しだ。金利復活に動く植田和男現総裁も希望的観測に頼るのでは前任者と五十歩百歩と言いたいらしい

 ▲ガソリン代が上がり、野菜も高値が続く。年末年始も家で過ごす人が多いそうだ。一方で高関税を振りかざすトランプ次期米大統領が就任すれば、世界経済が混乱し、日本も打撃を受けるかもしれない

 
東京ディズニーランドのシンデレラ城に映し出されるピーターパン=千葉県浦安市で2024年9月、新宮巳美撮影

 ▲今日は「ピーターパンの日」。120年前の1904年12月27日に戯曲がロンドンで初演された。バリーは小児病院に人気作の著作権を譲った。世界的に権利が切れた後も英国では保護され病院経営を助けている。ディズニーアニメで世界的人気者になった「大人にならない少年」は多くの子どもたちの命を救うことにも貢献した

 ▲初演の2年後に始まった歳末助け合い運動がたけなわである。なお生活に苦しむ人たちは少なくない。多くの浄財が寄せられることを。 

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】  2024年12月27日  02:03:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【大弦小弦・12.24】:スーパーのコメ売り場で価格を見比べる時間が増えた。

2024-12-24 04:01:40 | 【経済対策・物価対策、原油など資源価格の高騰・幅広い品目の値上げ、消費者物価】

【大弦小弦・12.24】:スーパーのコメ売り場で価格を見比べる時間が増えた。

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【大弦小弦・12.24】:スーパーのコメ売り場で価格を見比べる時間が増えた。

 新米は品種によって5キロで3千円台後半の値が付く。

 食べる量を控えようかと3キロ袋に手が伸びる

 ▼キッチンカーでカレーを販売する店主は11月から、1皿100円値上げした。国産ブレンド米の仕入れ値が10月に5キロで1150円上がったためだ。

 ■有料この記事は有料会員限定です。会員登録すると、続きをお読み頂けます。 

 元稿:沖縄タイムス社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【大弦小弦】  2024年12月24日  03:57:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【金口木舌・12.24】:物価高騰 変わる子ども支援のかたち

2024-12-24 04:00:40 | 【経済対策・物価対策、原油など資源価格の高騰・幅広い品目の値上げ、消費者物価】

【金口木舌・12.24】:物価高騰 変わる子ども支援のかたち

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌・12.24】:物価高騰 変わる子ども支援のかたち 

 スーパーで食料品を買い、レシートを見る。肉、野菜、どれも以前より割高だ。特に米の価格上昇に驚く。店頭価格は5キロで3千円を超えた。思わずため息が漏れる

 ▼総務省発表の11月の消費者物価指数で、コメ類は前年同月比63・6%も上昇した。新米は生産コスト、輸送費の上昇分を価格転嫁しているという。育ち盛りの子がいる家庭にとって主食の値上がりは家計を直撃する

 ▼生活が苦しい家庭を支えるため、個人や企業が食料品を寄付する動きが広がる。温かい年末年始を迎えてほしいという願いを込めていよう。特に寄贈が目立つのは米だった。北部地域に食料を寄贈した家族は「一番必要なものを相談して送った」と話した

 ▼佐久本工機は事業所のある9市町村に12トンの米を贈った。名護市には19日に100万円分の米が届いた。子ども支援団体や市の支援員などを通じて、年内には必要な家庭に米が届けられる

 ▼物価高騰の折、支援には多くの経済的負担を要したはずだ。それでも例年と変わらず、県内各地で助け合いの輪が広がった。多くの子どもたちを助け、家庭を温かくしてくれていることだろう。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】  2024年12月24日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【金口木舌・12.22】:未来へ声を出し合う

2024-12-22 04:00:40 | 【経済対策・物価対策、原油など資源価格の高騰・幅広い品目の値上げ、消費者物価】

【金口木舌・12.22】:未来へ声を出し合う

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌・12.22】:未来へ声を出し合う 

 高値の影響か。スーパーの野菜売り場で山積みにされていたキャベツが最近、半分にカットされている。今年の漢字は「金」だった。値上げラッシュが生活を圧迫し続けた1年が暮れようとしている

 ▼自民党の「裏金問題」に続き、ニュースの中心に躍り出た「金」は「年収の壁」。保護者の税負担に影響する、大学生の年収制限が103万円から引き上げられる。当の学生たちは喜んでいるか

 ▼地方学生のバイト時給は平均1050円ほどという。教科書の外に広がる世界で学びを吸収する時期に、どれだけ学生を働かせる気なのか。どの業界も人手不足は深刻だが、安い労働力による安易な穴埋めは問題の先送りにすぎない

 ▼物価上昇、政治と金、少子高齢化…。山積する課題と向き合い、どのような社会を未来へ引き継ぐか考えたい。沖縄ではきょう、「安全な暮らし」を求めて県民大会が開かれる

 ▼キャベツに代わり陳列棚で存在感を増す大根を手に取る。この野菜、いろいろな具材と煮ることでうまみが増す。社会も同じ。いろんな人と手を取り、声を出し合うことで、温かな未来をつくっていけるはずだ。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】  2024年12月22日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・11.30】:巨額の経済対策/必要性と効果を説明せよ

2024-11-30 06:00:30 | 【経済対策・物価対策、原油など資源価格の高騰・幅広い品目の値上げ、消費者物価】

【社説・11.30】:巨額の経済対策/必要性と効果を説明せよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.30】:巨額の経済対策/必要性と効果を説明せよ 

 政府の総合経済対策が決まった。総額は約39兆円で、2024年度補正予算案の一般会計から13兆9千億円を支出する。新型コロナウイルス禍前を大きく上回る規模となる。

 景気を下支えし成長を促す目的というが、金額の大きさをアピールすることを優先させたようだ。従来の施策を寄せ集めた急ごしらえ感がぬぐえず、緊急性が低いものや効果があいまいな施策が目立つ。肝心の財源は約半分が国債頼みとなる。

 これでは、物価高騰に苦しむ国民の安心にはつながらない。政府は6月に決めた経済財政運営の指針「骨太方針」で、コロナ禍で膨らんだ歳出構造を「平時に戻す」と掲げた。それにも反している。

 なぜこれほど巨額の対策が要るのか。石破茂首相は、期待できる効果を含め、丁寧かつ具体的に説明せねばならない。

 経済対策の柱の一つは「物価高の克服」である。住民税が非課税となっている低所得世帯に3万円を支給し、そのうち子育て世帯には、子ども1人当たり2万円を上乗せする。困窮者への速やかな支援は必要だが、公平性に疑問符が付く。

 住民税非課税世帯は、7割超を65歳以上の世帯が占める。所得が少なくても、預金などの資産が多い高齢者にも恩恵が及ぶ。一方、住民税を納めながら低賃金で困窮する労働者は少なくない。中でも、ひとり親世帯の状況は厳しい。現役世代への目配りが不十分と言わざるを得ない。課税所得による線引きは、見直しが求められる。 

 今回も、光熱費を抑える補助制度が盛り込まれた。電気とガス料金への補助金を来年1~3月に再開する。年内で終了予定だったガソリンに対する補助についても、段階的に縮小しながら延長する。

 こうした一律の補助金は富裕層ほどメリットが大きく、「ばらまき」との批判が根強い。市場の価格形成をゆがめる上に、国際的な脱炭素の潮流にも逆行する。これ以上続けるのは望ましくない。

 対策にはほかに能登半島の道路復旧、避難所となる学校体育館へのエアコン設置、地方創生に取り組む自治体への交付金創設などが並ぶが、見逃せないのは30年度までに人工知能(AI)や半導体産業の公的支援に10兆円以上を投じる点だ。

 緊急対策を盛り込む補正予算案は査定や国会での議論が甘くなりがちだ。巨額を投じる以上は当初予算案に計上し、費用対効果についての議論を深めるべきではないか。

 臨時国会では、経済対策の実効性を厳しく見極めることはもちろん、財源の確保とセットになった責任ある議論を与野党に強く求める。

 元稿:神戸新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月30日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【社説・11.26】:政府の経済対策 規模でなく妥当性の議論を

2024-11-26 16:00:30 | 【経済対策・物価対策、原油など資源価格の高騰・幅広い品目の値上げ、消費者物価】

【社説・11.26:政府の経済対策 規模でなく妥当性の議論を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.26】:政府の経済対策 規模でなく妥当性の議論を 

 緊急性や政策効果が不確かなまま、「規模ありき」の大盤振る舞いを繰り返すのか。

 政府が経済対策をまとめた。裏付けとなる2024年度一般会計補正予算案は14兆円に迫り、23年度の13兆円を上回る。

 物価高に対応し、経済の底上げを図るというが、内容より最初から「昨年度を超える」前提で進んだように見える。財源は国債頼みとなる公算で、財政健全化の目標も遠ざかりかねない。

 経済対策の柱では、住民税が非課税の低所得世帯に3万円を給付し、うち子育て世帯には子ども1人当たり2万円を上乗せするという。

 生活費増にあえぐ困窮世帯への支援は必要だ。ただ非課税世帯の大半は高齢者で、一定の資産を持つ人も含む。一方、対象外でも低賃金で厳しい暮らしを送る非正規労働者らは多く、幅広い目配りが要る。

 電気・都市ガス代への補助を来年1~3月に再開し、年内で終了予定だったガソリン補助金も延長することにも違和感を禁じ得ない。

 これまで延長を繰り返し計11兆円の巨費を充てながら、効果検証は不十分だ。いずれも高所得者や大企業にも恩恵が及び、国際的な脱炭素の流れにも逆行する。

 補正予算の趣旨に合わない支出を含む点も見過ごせない。

 人工知能(AI)や半導体産業に複数年度で10兆円以上の公的支援をする枠組みを創設し、石破茂首相肝いりの地方創生事業では新たな交付金をつくる。中長期的な成長戦略としながら、補正規模の「かさ増し」に潜り込ませた印象が拭えない。

 補正予算は本来、当初予算成立後に起きた景気の急速な悪化や災害への対応が目的で、財政法は「特に緊要となった経費」などに限り支出を認めている。

 かつて1兆~3兆円で推移していた補正予算は、新型コロナウイルス禍で急増した。政府は経済財政運営の「骨太方針」で、膨らんだ歳出構造を「平時に戻す」と昨年から明記し、財政健全化の指標である基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標も掲げる。それなのに惰性で大型補正を組むのでは政策の整合性が問われる。

 さらに、多額の補正予算が未執行のまま繰り越されていると会計検査院が度々指摘していることも、事業の吟味が不十分な実態を浮き彫りにしている。

 経済対策には「手取りを増やす」という国民民主党の訴えに沿い、所得税控除を現行103万円から引き上げることやガソリン減税の検討も明記した。

 国と地方の税収の大幅減など課題も多く、社会保障改革とも絡むため、丁寧な検討が要る。

 補正予算案は28日に始まる臨時国会に提出される。与野党は政治的な思惑を超えた責任ある審議を尽くし、問題点を正さなければならない。

 元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月26日  16:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説①・11.25》:政府の経済対策 規模ありきは容認できぬ

2024-11-26 09:31:35 | 【経済対策・物価対策、原油など資源価格の高騰・幅広い品目の値上げ、消費者物価】

《社説①・11.25》:政府の経済対策 規模ありきは容認できぬ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・11.25》:政府の経済対策 規模ありきは容認できぬ 

 物価高対応などを盛り込んだ経済対策を政府が閣議決定した。

 必要な経費として13兆9千億円を計上した2024年度一般会計補正予算案を、28日からの臨時国会に提出する。

 低所得世帯への給付金やガソリン料金の補助継続といった生活支援に加え、半導体産業の振興、「闇バイト」対策といった幅広い事業がメニューに並ぶ。

 自治体や民間の支出分を合わせた全体の事業規模は、39兆円程度になると推計している。

 並んだ対策それぞれに、一定の意義はあろう。ただ、厳しい財政状況を押してでもいま本当に必要な事業かどうか、真剣に検討した上での決定とは思えない。

 石破茂首相が「昨年を上回る大きな補正予算を成立させたい」と言い始めたのは、衆院選が公示された10月15日。少数の政権幹部で決定し、財務省に通告があったのは前日深夜だったという。

 中身より先に規模が決まっていたことになる。有権者に大盤振る舞いをアピールし、選挙を有利に運ぼうとしたのではないか。

 23年度の補正予算は13兆1992億円で、事業規模は37兆4千億円。なぞったように上回る金額が打ち出された形となった。

 財政規律を顧みない「規模ありき」の編成と言わざるを得ない。国会で徹底的に精査し、必要性を見極めていかねばならない。

 補正予算はそもそも、災害などで当初予算では足りなくなった場合に緊急に編成するものだ。物価高に苦しむ人を支えるなら対象を十分に絞るべきだろう。

 中長期的に考えるべき産業政策をわざわざ含めたのも理解しがたい。予算規模を満たす狙いがあったのではないか。

 ここ数年、補正予算は新型コロナ対策などで膨張が続いた。コロナ前の19年度に3兆2千億円だったのが、20~22年度は31兆6千億~73兆円で推移した。

 こうした状況を踏まえ、政府は今年6月に決定した経済財政運営の指針「骨太方針」で、「歳出構造を平時に戻す」と掲げていたはずだ。大きな方針を安易に覆したとの批判は免れない。

 国の財政は長年、政策に必要な経費を税収などで賄うことができず、借金、つまり国債の発行に頼る状態が続いている。1990年度末に166兆円だった国債の発行残高は増加を続け、現在は1000兆円を超えている。

 目先の人気取りのため財政負担を安直に先送りすることなど、到底容認できない。

 元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月25日  09:31:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・11.25】:経済対策 生活向上へ真摯な論戦を

2024-11-25 04:00:20 | 【経済対策・物価対策、原油など資源価格の高騰・幅広い品目の値上げ、消費者物価】

【社説・11.25】:経済対策 生活向上へ真摯な論戦を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.25】:経済対策 生活向上へ真摯な論戦を 

 政府は、低所得世帯への給付金などを柱とした経済対策を閣議決定した。必要な経費として2024年度の一般会計補正予算案に13兆9千億円程度を計上する。

 予算規模は23年度の約13兆2千億円を上回る。無駄を省き、物価高騰に苦しむ国民の暮らしを真に支える施策となるよう、与野党には真摯(しんし)な国会論戦を求めたい。

 経済対策には、年収103万円を超えると所得税が発生する「年収の壁」の引き上げが明記された。今後はその引き上げ幅や財源が議論の焦点になる。

 「年収の壁」引き上げでは、先の衆院選で躍進した国民民主が最低賃金の上昇率に基づき、178万円への引き上げを要求しているが、税収減を懸念する与党は慎重姿勢だ。政府与党内では一定所得以上の富裕層への適用を制限する案や、地方税の個人住民税を国税の所得税と分離して議論し、非課税枠を引き上げる場合は所得税より幅を小さくする案も浮上している。

 地方自治体には税収減への懸念も根強いが、衆院選で手取り増を公約にした国民民主は議席を大幅に伸ばした。共同通信社の世論調査でも「年収の壁」見直しには69・9%が賛成している。

 8、9月の実質賃金は前年同月比で減少している。経済対策には最低賃金全国平均1500円への引き上げ目標や賃上げ促進などを盛り込んだが、高止まりする物価に追い付いていない現状が続く。

 減収分の補塡(ほてん)は検討すべきだが、政府は国民が求める施策に向き合うべきだ。一定条件で社会保険の加入が必要になる「106万円の壁」なども合わせて議論し、多くの国民が手取り増を実感することで消費喚起につながり、景気回復に伴う税収増につながる可能性もある。

 経済対策では、住民税が非課税となっている低所得世帯を対象に3万円を支給することや、ガソリン代を抑える補助金の継続、電気・都市ガス代の補助も再開する。地方創生では交付金を倍増する方針を掲げた。

 物価高の影響が大きい低所得世帯への手厚い支援は評価できよう。しかし電気・都市ガスの補助金は終了と再開を繰り返している。ガソリン代補助も年内を期限としていた。地方創生では、14年のスタート以降も地方からの人口流出、東京一極集中には歯止めがかからない。補助金の効果やこれまでの地方創生の取り組みの効果を検証し、次の施策につなげなければ、ばらまきとの批判は免れない。

 ガソリン減税については「自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し、結論を得る」とした。ガソリン税には、暫定税率廃止に伴い創設された特例税率が含まれているほか、消費税も課せられており「二重課税」の指摘もある。「年収の壁」とも合わせ、税の在り方について議論すべき時期に来ていると言えよう。

 元稿:琉球新報社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月25日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・11.24】:政府の経済対策 「規模ありき」でいいのか

2024-11-24 07:00:30 | 【経済対策・物価対策、原油など資源価格の高騰・幅広い品目の値上げ、消費者物価】

【社説・11.24】:政府の経済対策 「規模ありき」でいいのか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.24】:政府の経済対策 「規模ありき」でいいのか 

 「規模ありき」でかき集めた政策が、物価高にあえぐ国民の暮らしを本当に改善できるのか。甚だ疑問だ。

 政府が新たな経済対策を閣議決定した。民間支出などを含めた総額は39兆円に上る。裏付けとなる2024年度補正予算案の一般会計から13兆9千億円の支出を見込む。昨年度の補正予算を7千億円上回る規模だ。

 中には当初予算に入れるべき政策や中長期的な事業も散見される。補正予算は財政法に従い、緊急に必要となった経費に限るのが筋だ。

 そもそも政府の経済財政運営の指針「骨太方針」では、新型コロナウイルス対策で膨らんだ歳出構造を「平時に戻す」と掲げている。23年度に続き巨額の補正予算案を組んでいては財政健全化の本気度を疑われても仕方あるまい。

 政府は今夏、25年度の国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)が34年ぶりに黒字化するとの試算を公表した。これまで通り補正予算の財源を国債に頼るなら、黒字化が見通せなくなるのは確実だ。軸足の定まらない対応と言わざるを得ない。

 補正予算案が膨れ上がった責任は石破政権にある。石破茂首相は衆院選公示日の第一声で「昨年を上回る大きな補正予算を成立させたい」と宣言していた。自民、公明両党の苦戦が予想された選挙対策だったのは明らかだろう。

 象徴的なのは電気・ガス料金の補助金を来年13月に再開することだ。使用量が増える冬に家計を支える狙いは分かるが、そもそもはロシアのウクライナ侵攻で燃料価格が一時的に高騰したことへの時限措置だったはずだ。燃料価格は落ち着き、大手電力会社の多くが過去最高益を上げた。今の料金体系が適切かを検証する方が先ではないか。

 継続が決まったガソリン料金への補助金も、石油元売り会社に給付する今のやり方で十分に家計を支援できているのか疑念が残る。恩恵は車を持っている人に限られ、脱炭素化にも逆行する措置である。少なくとも廃止時期を明確にする必要がある。

 住民税の非課税世帯に3万円を給付する政策は、資産があって裕福な高齢者も対象となる。低賃金で働く人を含め、物価高で困窮する層に絞った支援策を探るべきだ。貴重な財源は、真に支援が必要な人たちや地域に重点的に振り向けてもらいたい。

 経済対策全体を見ても急ごしらえの印象だ。地方創生の交付金は25年度予算での倍増を掲げただけで中身は曖昧なまま。過去10年の効果や事例を検証し、自主的で特色ある取り組みにつなげてほしい。

 安倍政権以降の自民1強体制下で歳出のたがが緩み過ぎた。少数与党となった今こそ、与野党一体で財政規律を取り戻さなければならない。

 補正予算案を審議する28日召集の臨時国会で、政府・与党は政策協議を進める国民民主党だけでなく、他の野党の意見も真摯(しんし)に受け止めて議論を深める必要がある。その過程で新たなばらまきが生まれるようでは本末転倒だ。各党に自覚と責任を求めたい。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月24日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・11.23】:【国の経済対策】:必要性や効果の精査を

2024-11-24 05:05:40 | 【経済対策・物価対策、原油など資源価格の高騰・幅広い品目の値上げ、消費者物価】

【社説・11.23】:【国の経済対策】:必要性や効果の精査を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.23】:【国の経済対策】:必要性や効果の精査を

 物価高に苦しむ国民の生活を支える施策は必要だが、財政悪化や財源不足の懸念は放置できない。必要性や費用対効果の精査が必要だ。
 政府は、事業規模で約39兆円に上る経済対策を決定した。その裏付けとなる費用約13兆9千億円を計上した2024年度一般会計補正予算案を臨時国会に提出する。事業、予算ともに23年度を上回る規模で、石破茂首相は「賃金や所得を増やすよう全力を尽くす」と強調した。
 ただ、今回の経済対策は、9月の自民党総裁選や10月の衆院選に際して支持獲得のために浮上した経緯がある。補正予算の財源の多くは国債頼みになる公算が大きい。基礎的財政収支(プライマリーバランス)の25年度黒字化を目標に掲げる政府の方針とは逆行する部分がある。
 黒字化には、新型コロナウイルス禍で最大73兆円(20年度)にまで膨らんだ補正予算を、1兆~3兆円台だったコロナ前に戻す必要があった。また、年度途中の緊急の財政需要に対応するのが補正予算の本来の趣旨であることを踏まえれば、規模の膨張には疑問符もつく。
 少数与党になった自民、公明両党と、国民民主党の協議で、国民民主が求めてきた「年収の壁」引き上げなどの項目も明記された。細部は今後に委ねられたが、それも含めれば対策の実質規模はさらに膨らむ。
 「年収の壁」の見直しなどは税収減に直結する。総じて財政面、財源面の懸念は後回しにされているのが実情だ。将来に責任を持った議論が求められる。
 経済対策は「日本・地方経済の成長」「物価高の克服」「国民の安心・安全の確保」を柱とした。このうち物価高対策は、低所得者向け給付金や電気・ガス代の支援再開、ガソリン代補助の継続を盛り込んだ。
 低所得者ほど物価高の負担感が大きく、むしろ対応が求められる局面だ。一方で、エネルギー料金の支援は、富裕層や好業績企業にも恩恵が及ぶ。脱炭素化にも逆行する。ばらまきの要素が強くないか、必要性を吟味すべきだ。
 経済成長では、半導体・人工知能(AI)産業に対する10兆円以上の公的支援に向けた枠組みをつくるほか、地方創生関連の交付金、賃上げ目的の中小企業支援策などを盛り込んだ。ただ、多くは継続的に取り組んでいるものだ。補正対応の必要性があるのか。「総額ありき」だったのでないか。説明が求められる。
 「年収の壁」見直しなど税制改正の方向性を、経済対策で担保したのは異例と言えるだろう。今回の3党協議は、少数与党の石破政権が国民民主と連携する初の事例であり、ひな型になる可能性を考えれば政治的な意味も小さくない。
 一方で、国民民主の要求が強く反映された結果、税収減による財源面の不安も膨らんでいる。協議のヤマ場はこれからで、予断を許さない。これまで自公のみで決まっていた政策をどう決めていくか。他の野党も含めて、国会、国政の転換点にあるとの意識で臨む必要がある。

 元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月23日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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