《社説①・02.01》:続く物価高と春闘 中小の賃上げが不可欠だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・02.01》:続く物価高と春闘 中小の賃上げが不可欠だ
経営側と労働組合の代表が賃上げを話し合う「経団連労使フォーラム」が開かれ、2025年春闘が本格スタートした。
物価高を克服できるような裾野の広い賃上げを実現できるか。景気の持続的な回復に向けた正念場となる。
企業業績の回復や人手不足を背景に賃上げ機運は高まっており、24年春闘では大企業の賃上げ率が5・58%と、33年ぶりの高水準を記録した。ただ、物価上昇には、なお追いついていない。

連合は、今春闘の賃上げ目標について、全体で5%以上、中小企業は6%以上を掲げている。中小の目標を高く設定したのは、大企業との格差是正を図るためだ。昨年の賃上げ率は4%台半ばにとどまり、働き手の待遇改善の遅れが鮮明になった。

芳野友子連合会長は「中小企業、地方経済の隅々まで(高水準の)賃上げが波及しなければならない」と訴えている。
雇用の7割を占める中小の大幅な賃上げなしには、個人消費は盛り上がらず、日本経済の活性化も望めない。
鍵を握るのは適正な価格転嫁だ。中小企業庁が全国約30万社を対象に実施した調査によると、原材料費や人件費などコスト全体の増加分を納入価格に転嫁できた割合は50%弱にとどまる。
大企業経営者の多くは「中小の目標は高すぎる」と指摘しているが、人ごとでは済まされない。下請けの中小が賃上げ原資を確保できるよう、人件費も含めた価格転嫁に応じる責任がある。政府は大企業に対する監視の目を強めなければならない。
中小が高い賃上げを実現するには、生産性の向上も欠かせない。デジタル技術の導入を後押しするなどの施策も重要だ。
業績が堅調な大企業の賃上げ率は今年も高水準が見込まれる。人材確保の思惑もあり、サントリーホールディングスが月収ベースで7%程度の賃上げ方針を打ち出すなど、積極的な姿勢が目立つ。
大企業などの利益の蓄積である内部留保は600兆円以上にのぼる。今年はその余力を下請けの中小にも振り向け、サプライチェーン(供給網)全体の賃金底上げにつなげるべきだ。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年02月01日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。